住宅医コラム 意見交換2018-76
住宅医コラム 2018年1月号
建物の耐震性について
山辺豊彦(山辺構造設計事務所)
明けましておめでとうございます。
新しい年を迎え、全国の住宅医協会会員ならびに協力関係者の皆様に、謹んでご挨拶を申し上げます。
昨年末に発表された太平洋岸における巨大地震の発生確率のニュースは、
我が国が地震国である、ということを改めて考えさせられるものでした。
過去の多くの地震被害から、建築基準法は度々改正されてきました。
このうち耐震設計法の変遷から分類すると、
1971年以前は「旧耐震設計法」
1971年以後1981年までを「移行期の設計法」
1981年以降を「新耐震設計法」
と呼んでいます。
現行基準における耐震設計の基本理念は以下のようになっています。
表1 耐震設計の基本理念
いわゆる「新耐震の建物」とは、1981年以降の新耐震設計法によって設計された建物のことを意味します。
一般的に1981年以降であれば、概ね耐震性に問題はない、と言われています。
問題はない、というのは、震度6強の地震に対して建物が倒壊・崩壊しない、
つまり、下表の損傷ランクⅤは最低限防ぐ、ということです。
表2 大地震時における木造建物の損傷イメージ
新耐震以降も各地で大きな地震はありましたが、構造設計者である私が特に大きな衝撃を受けたのは、
1995年の阪神・淡路大震災です。都市部での大地震で、木造だけでなく鉄筋コンクリート造(RC造)や
鉄骨造(S造)の建築物・土木構造物も大被害を受け、建築物の倒壊により多くの犠牲者が出たことは残念でなりません。
写真1 1階が倒壊した木造住宅
写真2 層崩壊した鉄筋コンクリート造の建物
このような被害の反省から、2000年に法改正が行われ、また旧基準で設計された古い建物の耐震診断・耐震補強を早急に行う必要性がある、
ということで、公共建築物の耐震化が進められてきました。東京都では緊急輸送道路に面する建築物の耐震診断・耐震補強を進めています。
しかし阪神・淡路大震災から23年経った今でも、耐震化率は思うように上がっていないのが現状です。
木造においては壁量規定の変更はなかったものの、耐力壁に関連する規定がいくつか加わりました。
そのため、1981年以降に建築された”新耐震”であっても、2000年以降でなければ現行基準を満足しているとはいえません。
表3 年代別にみる木造建築物の構造的特徴
また木造住宅の耐震診断・補強は地域差が大きく、特に都市部の木造住宅密集地における耐震化の遅れが問題になっています。
耐震化を進めるには、行政・設計・施工の3者の協力体制づくりが重要であることは言うまでもありません。
住宅医協会は今年も住宅医スクールを各地で開講します。建築に関わる会員ならびにスクール生のみなさんには、
講義だけではなく実測調査や検定会などにも参加され、技術の研鑽を積んで信頼される住宅医として活躍してほしいと思います。