住宅医コラム 意見交換2017-79

「トイレコラム」
トイレの設備 ~ 設備屋さんから話を聞く
三澤文子(Ms建築設計事務所)
 
住宅医スクールの講義に「設備の劣化診断と対策」があります。設備に関する講義は他にないので、大変貴重だと評判が良いのですが、それは、給排水衛生工事の実務者である講師の清水基之さんの、わかりやすい説明が、人気の秘密なのではないかと思っています。
そこで今回、「トイレ」に絞って、設備屋さんからの「思うところ。」をうかがってみました。
これから先は、対話形式で続けます。
 
清水さん「トイレに関して、ですね。わかりました。最近の便器は節水トイレが多くなりました。
そのため排水のつまりでメンテナンスに出動することが増えてきています。
配管の勾配・管径は、トイレの水量が13リットル程度流れることを想定して設計されています。
近年各メーカーがこぞって節水便器をつくり始め、管径と水量のバランスが取り難くなり、<つまり>が多く発生しているというわけです。
水量が少ないため管内に汚物が滞留することもあります。
節水便器ですが、用をたしたら一度流し、使用後にもう一度流すと効果的です。
ちなみに、女性は<小>でも紙を使用するため、<大>洗浄扱いです。」
 
三澤ふ 「2回流すことになると節水とはいいにくくなりそうですね。」
 
清水さん 「そうですよね。それと、設計士さんへのアドバイスですが、節水トイレの場合は、設計の際に最上流に浴槽がくるような設計が大変好ましいのです。節水タイプでも、詰まりにくくなりますね。」
 
三澤ふ 「そんなこと考えていなかったな~。」
 
清水さん 「それと、ネオレストなどタンクレスや一体型便器は、外見はとてもシンプルでスマートですが、故障した場合通常10年間部品供給はしていますが、それから先はない場合がでてきます。
ことによると、タンクレスなど大変高価なものを10年足らずで取り替える可能性があるので、本来のようにタンク・便器・便座の三点セットでトイレ構成すると、故障は便座だけとなり経済的だと思うのですが。」
 
三澤ふ  「確かに、タンクレスはスッキリしていて、今や、便器はタンクレスが当り前になった感はありますね。
コスト比較と、機能について、住まい手さんに整理して説明できるようにした方が良いですね。」
 

タンクレストイレ:TOTO/CES9897【定価】379000円
          【某社見積もり額】272880円
 

タンク、便器、便座の3点セット。便座を木製のものにしたいという希望があり、この形になった。
清水さん 「それと、設計士さんにお願いしたいことがあるんですが。」
 
三澤ふ 「えっ、なんでも言ってください。」
 
清水さん 「設計士さんに、トイレ内の配管をした後で、追加工事で、トイレ内に手洗器設置を依頼されることがよくあります。
施工が簡単そうに見えますが、床下でトイレ配管より狭い場所での切り回し、なおかつ、トイレを排水すると手洗器の封水を引っ張り、破れる可能性が高くなるんです。
手洗器が必要な場合は土間逃げ配管前に決定をしていただきたいですね。」
 
三澤ふ 「わかりました。気をつけます。というか、私はいつもトイレには手洗器がある設計なので、後から設計変更はあり得ないので・・・」
 
清水さん 「それとトイレの掃除のことですが・・・・」
 
三澤ふ  「あ。トイレの掃除については、次号のテーマなので、今回はここまでということで。」
 
◆次回は、トイレの掃除がテーマです。設備屋さんの「掃除についてのご意見」を聞いてみます。