住宅医コラム 意見交換2016-70

古く素敵な建物が、簡単に壊されることを阻止するためには、どうしたらいいのでしょうか? まずは、壊されずに残り、愛されて使われている建物を大いに褒めて、古い建物を壊さず大切に使うことが「褒められること。」と多くの人に認識してもらうことなのではないか。と考えました。
今月の、褒めコラム「改修建物を訪ねて」は、東京都中野にある店舗「モノ・モノ」です。
 
「改修建物を訪ねて~その9」
マンションの中で木の香る~モノと人が集まる木の空間
三澤文子(MSD)
 
 
 
31年前、三澤邸完成時に購入した椅子2脚。トヨさんの椅子と男の椅子です。
 

三澤邸にあるトヨさんの椅子

三澤邸にあるトヨさんの椅子


 
この椅子が私たちの設計を支えてくれたと言っても過言ではありません。茶の間で育った私には、リビングって・・・?という疑問がありました。私の実家にもソファーというものはありましたが、応接室という家族は通常使わない部屋にありましたので、ソファーがあるリビングがピンときません。そこで「リビングダイニング」をつくり、茶の間にも食堂にも、そして応接室にも多用途に使われるように、低く大きなテーブルと、座高の低いこの椅子を住まい手にお勧めし続けてきました。そう、私たちの設計に必要不可欠な椅子なのです。
この椅子の販売元の モノ・モノさんとは、そんなことで長いお付き合い。
このモノ・モノは、語れば長くなる歴史を持っていますので、是非 モノ・モノのHPを訪ねて頂きたいと思います。

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さて、モノ・モノの代表者が変わるというタイミングで、1969年に開設したモノ・モノ内部の改修を依頼されたのが、Ms建築設計事務所の三澤康彦氏。
モノ・モノのあるマンションは、中野駅から歩いて5分程度のとても便利な立地。マンションも古いとはいえ、良く管理がされていて古くてもモダンな雰囲気です。
改修前の内部は、マンション然としていてフツウに玄関があって。というつくりでした。
 

改修前

改修前


 
改修後

改修後


 
改修後は、同じく玄関で靴を脱ぐスタイルのショップですが、間仕切りを全て取り除いたことで、一新。木の香る「モノ・モノ」のコンセプトにあった空間になりました。
 
そもそもが、工業デザイナーの故・秋岡芳夫氏が、ものづくりにかかわる人たちの議論の場として開設されたとか。その精神を受け継いで、新モノ・モノも、ショップということより、思いを同じくする人たちが集まる場、という目的があるそうです。そのために、大きな空間に、センターテーブル、というシンプルな構成になったようです。
 
改修前

改修前


 
改修後

改修後


 
勉強会の様子

勉強会の様子


 
床材は東北産のクリフローリング、地域の優れたつくり手の作品が並ぶ展示台は岐阜産の杉パネル、ポイントの漆塗りの柱は名栗加工がされています。
洗練されたモノに囲まれた空間は、空気も清々しく、木でつくられたモノたちも、人と同じように、気持ちを一つにして、ここに集まっているように感じます。
 
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木の味わいにあたたかく包まれる空間。ここではモノや人が主役。そんなさりげないシンプルなデザインが良いですね。