住宅医コラム 意見交換2015-51
妻にとっての定年リフォーム
宝塚Iさんの場合 ~ その2 リフォームをお願いする「住宅医」との出会い
三澤文子(MSD)
私とIさんとの出会いは、これこそ「縁があった。」というべきものだった。2013年9月10日のお昼過ぎ。私は健康診断に行こうとMOKSOHO(私の事務所MSDがある)を出ようとしていたが、念のために歩きながら携帯電話で、午後の開始時間を問い合わせたところ、「午後の検診はない。」との返事にビックリ。午前の予約をすっかり午後と勘違いしていたのだった。がっくりしてMOKSOHOに引き返すと、SOHOのデッキで、佐治さん(MSDスタッフ)と、品の良い年配の女性とが、熱っぽく話をしていた。
その女性がIさん。「古家をリフォームしたいのですが、うまく進まず8年間も悩み続けています。もはや今、諦めかけているところなのですが、通りかかった福島区の路地に、雰囲気の良い木造の家があるので、思い切ってインターフォンのボタンを押して、その家の方に設計はどなたですか?と聞いたところ、隣にある建物(MOKSOHO)を指さされて、ここを教えて頂きました。」
MOKSOHOのデッキ 大阪市福島区の雰囲気のよい家.この家の設計は三澤康彦氏です.
さっそく、SOHOの中に入って頂いて、さらに詳しくお話を聞くと、Iさんご夫妻は60台後半。Iさんの家は 平屋の木造住宅で築50年くらい、その家をとても気に入っているが、隙間風がありとても寒く、寒がりのご主人は灯油のファンヒーターなど、ガンガンにつけて生活。特にお風呂が寒い。また台所も古いが、いずれリフォームするからと、そのまま使い続けている。とのこと。
「築50年ですと、コンクリート基礎があっても、無筋の基礎と思われます。出来れば基礎を造り変えて耐震性も高めたいですね。」と、まず基礎の話題から入った。Iさんのお話から、30坪以内の広さで1500万円ほどの予算を見ていること、屋根は阪神大震災後に葺き替えているということを伺った後なので、基礎の補強については当然、説明すべきことですが、「今まで、何人もの設計士さんにリフォームの相談をしましたが、基礎の話を、まず最初にしてくれた方は、いませんでした。」と言われた。おそらく予算なども同じ条件であったろうに、基礎についての話題無しに、リフォーム設計をしようとするような設計者は、「住宅医スクール」で学ぶ私の周りにはいないのだが、ごく一般的設計者はそうなのか… と一瞬驚きで受け止めたのだった。
1時間ほどのお話の中で、「既存建物の詳細調査」についてお勧めをした。「木の家リフォームを勉強する本(通称リフォーム本)」を使ってご説明し、調査料はおそらく25万円程度かと思われることをご説明すると、
「わかりました。お願いする方向で。本日、主人と相談し、改めてお返事します。」とのこと。
帰り際、説明に使った リフォーム本 を差し上げようとすると、
「その本は買いました。それだけ、リフォームのことを勉強しているんですよ。」と微笑まれた。
翌日、Iさんからお電話があり
「詳細調査お願いしたい。」とのお返事。さっそく 翌週の 9月17日、詳細調査のための事前調査に、私と日野君(MSDスタッフ)とでうかがうことになった。
(つづく)