各地の住宅医の日々№57 能登に こころをよせて

北村 陽子 住宅医/北村陽子けんちくアトリエ/石川県 

 昨年の能登半島地震から1年と9か月、そして能登半島豪雨から1年が経過しました。
よくある住宅の改修でしたらとっくに工事を終え、新しい暮らしをスタートしていてもおかしくない時間が流れましたが、能登の現場はなかなか順調には進まずもどかしい日々を送っております。

発災から現在まで、住宅を中心に十数件の建物の相談を受けました。いちばん多い相談は、「罹災証明書が出たが、使い続けても問題ないか。公費解体で負担なく壊せるのであれば期限までに申し込みたい。」というもので、その次に「補助金を利用して耐震診断・改修をしたい!」というものが多く、北は能登の輪島市から南は金沢市まで様々な被害が広範囲に渡っていることを実感しています。

能登の案件がなぜ進まないのか、いろいろな要因があると思いますが、まずは現地に行ける人が少ないという点です。道路事情についていえば、昨年の春には応急復旧が済み、車で金沢から輪島まで2.5時間程で行けるようになりました。しかし道路にアップダウンがあったり工事渋滞があったりして、通うのはとても大変です。次に、能登の方々のお住まいの特徴として、建物を複数所有していることが多く、全部を見て、さてどれを直そうか、どれを壊そうかと判断するのに時間がかかる点です。また、親世帯は輪島で暮らし、子世帯は金沢で暮らしている場合など、双方で解体か? 改修か? そもそも能登にとどまるかどうか? の意見が食い違うことも多々あり、建物の改修の話をするというよりかは、今後の暮らしかた、生きかたの話になっていることも多く、なかなか結論が出ません。
最後に、能登現場が進まない要因第1位は、「工事できる人がいない」ということに尽きます。というよりかは、工事に関わることすべてが今までの考え方では通用しなくなってきており、設計の方法もそれに合わせて工種を絞ったり簡略化したりが必要となってきているのを感じます。
この夏に工事見積をとったのですが、材料費の高騰以上に人件費が今までみたことのない額になっており、減額の打合せをしても他はもっと高いという話ばかりで、八方塞がりなことも多いです。そんな中でもアイデアを出しながら金額のOKをいただき、これから2軒着工予定です。といっても、着工時期未定や年明けなどという、ざっくりした予定しか出ていませんが、一筋の希望の光が見えてきたのでホッとしています。

ただ、時間が経ってしまったのは悪いことばかりでもなく、耐震改修工事の補助金額が上乗せされ続けています。七尾市では発災直後は160万円でしたが、現在(令和7年9月時点)では280万円まで増額されました。役所のHPが更新されておらず、補助金申請を出しに行ったときに増額を知ることもあったので、能登はいまもいろいろなところが混乱しているともいえますが、現地の情報をアップデートしながら臨機応変に対応していくことが大事だなと思い、よく顔を合わす同業の方たちと情報交換をするようにしています。

長くなりましたが、これまで住宅医協会の方々にたくさんこころをよせていただき、とても感謝しております。ありがとうございます。能登の案件は本当に一進一退で、わたしからお見せできるようなものはいまのところなにもなくて残念ですが、また一段落つきましたら報告させてください。
そして、能登・石川県に気軽に遊びに来ていただけるとうれしいです。写真はわたしがよく訪問する、能登のおすすめスポットです。能登にお越しの際は、是非お立ち寄りくださいね。


ハフハフ美味しい「喫茶翁」のドリア(輪島市)

パン屋さん「月とピエロ」(中能登町)

 写真・文章 : 北村 陽子
©Yoko Kitamura , jutakui


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