各地の住宅医の日々№4〜土佐の国 ウッドショックと二ホンカワウソ

萩野 裕一(住宅医 / CROSS建築設計事務所 / 高知県)

東京から高知にUターンして25年経ち、設計事務所として15年が経ちました。
すっかり土佐弁しか出てこなくなり、純潔の田舎者になったのかと思いきや、コロナ禍でZOOM会議や講習会に手軽に参加できるようになり、世界との距離感がより近くなった気がします。
先日も、4月15日にシネジック㈱さんのオンラインセミナーでポラテック㈱さんから、木材供給不足が深刻化し「ウッドショック」が起きていることを聞き、早速地元高知や愛媛の材木屋さんに問い合わせると、3日で合板の値段が1.6倍になったと悲鳴が聞こえてきました。
世界がネットワークでつながっていくと、支流の末端にも深刻な影響を受けるので、その対応策を地方であっても考えていかねばなりません。
高知西部には「四万十川」と水質日本一にもなった仁淀ブルーで有名な「仁淀川」があります。
その2つの川の間に「新庄川」という二級河川の地味な川が流れてます。
川沿いの国道から見える風景がなんともいえず美しいのです。
ここは日本で最後に二ホンカワウソが確認された川として有名です。
この川の上流「津野町」で最近仕事をさせていただいてます。

(上)須崎市から北上してすぐにある沈下橋
(下)新庄川 以前は日本中の川がこんな風景だったのでしょうが

津野町の東津野地区は温暖な高知でも5地域で積雪が20〜30cm程度あります。
2年前、森林組合の事務所を地元産のすぎ・ひのきを使って、CLT構造で設計させていただきました。
そのご縁で、地元の建設会社、木材加工会社の若手経営者さんたちと一緒に定住促進住宅のPFI事業に取り組んでいます。戦後植林した杉が70年経ちましたが、大径木は加工する機械がなく50年のものより安い買取価格だそうです。森林組合さんに聞いたところ、普段ならこの時期は虫が入り値段も落ちるので丸太の伐採量を減らすそうですが、今年は需要が落ちないで値段も上がっているそうです。ただ一気に増産とはいかないようです。国産材の使用比率を上げるいいタイミングですが、供給体制を作るのが大変です。有史以来、日本の山に最も沢山木がある時代に、ウッドショックが起きている。
二ホンカワウソは絶滅しましたが、山が生き残っていけるように、皆で力を合わせていかねばと考えさせられます。

写真は2019年竣工の津野町森林組合 事務所です。CTLパネル工法 2階建て 235㎡国土交通省サステナブル建築物先導事業 補助事業を活用してます。
地元産ラミナを用いて四国内で生産加工されたCLTを歩留りがよくなるよう計画をしました。
住宅用の構造金物、既製品サイズの樹脂サッシを使用しています。
7mの無柱空間、深い軒先空間を長さ12m厚さ150㎜のCLT床パネルとトラスを組み合わせて実現しました。
耐力壁を兼ねたCLT壁パネルを南北に配置し、日射遮蔽効果も狙ってます。
外張り断熱仕様とし、UA値は0.61、内部はCLTを現して蓄熱・蓄湿効果を狙いました。
住宅で勉強した技術を、非住宅にも生かすことができました。