これは[archive.php]

今年も補助事業が始まりました!

住宅医協会も参画している国の施策事業から、誰でも使える一般的な補助事業まで、住宅リフォームに活かせる代表的なものまとめました。性能の要件や実施期間の制約などありますが、補助情報を見落とすと後にクレームにつながる場合もありますので、リフォーム計画の前に一度は調べておきましょう。

<1.国の施策事業>

地域型住宅リノベーション協議会(試行事業)
住宅医協会とNPO木の家だいすきの会が主導し構築した「住宅ストック維持向上促進事業(国交省)」採択事業、「人生100年時代の住まいのトータルサポートシステム」について、今年度は試行事業の予算(上限100万円/件)を頂いています。

・地域型住宅リノベーション推進協議会構成員の宅建事業者による中古住宅の売買
・ローンを使用する場合は、飯能信用金庫の融資を利用
・住宅医等によるインスペクションと性能評価
・最低、安心R住宅相当の性能向上リフォーム(瑕疵保険、耐震)
・メンテナンスサービスの利用
・今年度中に完成
・・・と、かなり条件が厳しいですが、該当するかもしれないという案件がありましたら、ご連絡下さい。
※「人生100年時代の住まいのトータルサポートシステム」の概要は、コラム4月号に掲載しています。
https://sapj.or.jp/2019/04/

また、同協議会で別途応募した新規事業も今年度新たに採択されました。主に埼玉県西部の中山間地の空家や空家予備軍を対象として、一つは、移住希望者が最初は賃貸として居住を試し、地域に慣れた所で売買契約を行うという仕組みを作り売却や移住のハードルを下げ、それに応じて、売主と買主が段階的に改修できるよう、戸建て住宅版のスケルトン・インフィルの改修手法を検討します。もう一つは、上記「人生100年時代の住まいのトータルサポートシステム」で提案した住まい手の自主点検を、ICT技術によってサポートする仕組みを検討します。具体的には、住まい手が劣化箇所をスマホで撮影したデータを投稿すると、各地の住宅医等が閲覧でき、適切なアドバイスを回答するといったシステムで、医療機関で導入が進められている、新人医師の診断について遠隔でベテラン医師がスマホで検査画像を見ながらアドバイスする、といったようなシステムの住宅点検版をイメージしています。
これら、新規事業についても、情報やアドバイス等がありましたら、合わせてお寄せください。

地域型リノベーション推進協議会関係の連絡はこちら 滝口メール takiguchi@taki-studio.net

長期優良住宅化リフォーム推進事業
昨年同様、今年度も募集が始まっています。タイプ(レベル)別に3つの補助額が用意されています。

詳しくは、建築研究所ホームページ https://www.kenken.go.jp/chouki_r/index.html

住宅の省エネ・断熱リノベーション支援事業
戸建て・集合住宅を対象に、事前に登録された高性能建材の使用や15%以上の省エネ効果を条件に補助されます。

詳しくは、環境共創イニシアチブホームページ https://sii.or.jp/moe_material31/

既存建築物省エネ化推進事業
大規模用ですが、300㎡以上の既存住宅・建築物における省エネ性能の診断・表示に関する費用や、オフィスビル等の建築物の躯体(外皮)の省エネ改修費用を支援しています。
詳しくは、既存建築物省エネ化推進事業評価事務局ホームページ http://hyoka-jimu.jp/kaishu/

※主な省庁の補助事業一覧ページはこちらから
(国土交通省:平成31年度公募一覧) 
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_mn_000002.html
(環境省:H31年度補助・委託事業) 
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/biz_local.html
(経済産業省(資源エネルギー庁)平成31年度公募一覧) 
http://www.enecho.meti.go.jp/appli/public_offer/
(林野庁:逆引き事典) 
https://www.gyakubiki.maff.go.jp/appmaff/input?domain=R

<2.自治体の助成事業>
自治体によってメニューや助成額にバラつきがありますが、耐震診断、耐震補強、断熱改修、省エネ設備導入、介護改修、高齢者対応、防火改修、地域材利用、防音対策など、様々な助成事業が行われています。
まずは、対象となる「都道府県・市区町村名」と「上記の各キーワード」で、検索してみましょう。
介護保険の住宅改修・福祉機器レンタルについては、全国一率の助成がありますが、介護認定やケアマネージャーの許可等が必要になるため、該当する場合は担当のケアマネに相談してみましょう。

<3.消費税増税対策>
10月の消費税率引上げに備え、住宅ローン減税、すまい給付金、次世代住宅ポイント(リフォーム最大30万円相当)、贈与税非課税措置などが用意されています。

次世代住宅ポイント事務局ホームページ https://www.jisedai-points.jp/

住宅取得にかかる対応一覧についてはこちら (国土交通省ホームページ) 
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr4_000036.html

<4.減税措置・保険割引>
耐震、断熱、バリアフリー等の性能向上リフォームを行うと、減税や保険割引なども受けることができます。手続きが煩雑で少額なメリットかもしれませんが、こちらも忘れずにチェックしておきましょう。

リフォーム減税制度の詳細はこちら  (リフォーム推進協議会HP) http://www.j-reform.com/zeisei/

火災保険(地震保険)は、建築年割引や耐震等級割引だけでなく、耐震診断割引もあります。詳しくは利用している保険のホームページを調べてみましょう。

以上、主要なものをご紹介しましたが、その他、利用できる制度や事業もあるかと思います。毎年変わる国の施策助成事業や地域によって様々な自治体の助成事業は、物件毎に、その都度最新情報を調べる必要がありますが、これらの情報提供や活用も、より良いリフォームを実現するための住宅医の仕事の一つです。面倒な仕事ですが、頑張りましょう!

住宅医の改修事例報告 90例目


愛知県「古材梁を眺めて暮らす家」改修工事
報告者:株式会社戸田工務店 鵜飼顕路/住宅医

改修概要
設計者:株式会社戸田工務店 鵜飼顕路/前田佐夜子
施工会社:株式会社戸田工務店 原田孝一
主要用途:一戸建ての住宅
規模:木造平屋建て(基準法上は木造2階建て)
建築面積:149.00㎡
延床面積:194.27㎡
工期:2016年5月~2017年3月

建築地の気候風土
省エネ地域区分は6地域(温暖)で、年間日射地域係数はA4区分で日射量が多い地域です。

改修に至った経緯
ご家族構成:60歳代ご夫婦の2人家族。敷地内のすぐ隣に息子さんご家族が住まわれている。
お食事のときにしか利用していない住まいになっていたが、2代前が建てられたお家で、終の棲家として残せないか考えられて計画が始まりました。

既存建物
築年数は100数年で、この地域によくある農家住宅になります。
過去に玄関から東側の土間だったところを改装して住まわれていました。
玄関より西側、小屋裏は建築当時のままになります。


1F平面図 (改修前)
2F平面図(改修前)

既存建物調査


改修建物

1F平面図(改修後)
2F平面図(改修後)

矩計図(改修後)

ご要望
ご要望は特別な要望はなく、提案した中で細かなご要望が生まれ打合せが進みました。
大きなご要望としては、下記2点があげられました。
・どう活用したらいいかわからない。
・今後の暮らしを愉しめる住まいにしたい。
⇒利用されていない部屋が多いので活用しやすいように、LDKを住まいの中心にさせて頂き、和室も日頃から利用したり、上を見上げると吹抜けから光を感じたり、これまでの生活では見ることなかった梁を眺めることができるようになり、暮らしを愉しめるようにしました。
また、インテリアとして、おしゃれな古建具を購入し、LDKまわりに配置しアクセントとしました。
また、水回りの動線は、寝室からも行きやすく、また奥まった位置に配置し、プライバシーの確保を配慮しました。

工事写真(基礎部)

解体後、曳家を入れ建物を持ち上げている様子。その後基礎工事になり、柱下部、立上りを施工後、建物を下して底盤を仕上げ基礎が完成。足固めを入れ直し、床組を施工していきました。

耐震改修

1F平面図(改修後)

2F平面図(改修後)

評点は、0.33⇒1.00

断熱改修
天井断熱:アクリアネクストt-105×2
一部下屋根:フェノバボードt-60
外壁:荒壁パネル+フェノバボードt-30 ※荒壁パネル 土壁として計算
一部外壁:アクリアネクストt-85+フェノバボードt-30
床:フェノバボードt-45
※既設
屋根・床:断熱無
壁:土壁
サッシ:アルミサッシ

※Q値はC値を測定していないため正しい値ではありません。

性能診断結果概要

完成写真

外観(改修後)


ダイニング天井
ダイニングキッチン
リビング
フリースペース (2F)
玄関                       面格子

     

総括
既存建物の形状は変えずに、ご要望としてあった、暮らしが愉しく感じられるすまいを提案することを第一に、古民家の風情が感じられる範囲での性能向上に努めました。
耐震性能は、合板を極力避け、荒壁パネルを採用して剛性をもたせながら粘りのある耐震計画として、評点で1.2程度を目指していました。ただ、面積の大きい建物であったのと、内部の基礎が、玉石固定の基礎(基礎Ⅲ)としているため、思ったほど上げることができませんでした。
断熱改修は、荒壁パネルを採用したため、外張りでしか断熱材をいれられていませんが、元々の土壁だけ、シングルガラスに比べると生活環境は改善されたのではないかと思います。
今後の課題として、内部もベタ基礎を新設し、耐力壁の効果が発揮できるようにしていきたいと考えています。(評点を1.5以上) 断熱改修の課題として、昨今の断熱性能レベルが飛躍的に増しているのでもう少し性能向上をさせていきたいです。また、耐震、断熱以外の性能向上も配慮して計画していきたいです。

住宅医リレーコラム2019年7月

既存外壁を残したまま、新たに断熱付加をする場合の防露診断と治療について

令和元年の住宅医スクールが東京と大阪で開講しました。私が担当したのは初回3講義目の「木造建築病理学の実践」という講義です。講義では、断熱改修を行った物件の紹介と、その診断治療方法について紹介したわけですが、今回はじめて非定常の防露診断手法を紹介しました。

 

結露の計算とは?

非定常というと瞬間的に理解するのは難しいと思いますが、ようは、外壁(屋根)の外部と室内の温湿度を3年間変化させてシミュレーションしたものと解釈してください。

定常計算と呼ばれる結露の計算は、一定の温湿度(地域によって設定値は変わる)で計算をするのですが、雨水侵入や壁内換気(通気)など既存の状況を考慮できません。そのため、非定常計算でそれらを考慮して、かつ、季節による温湿度の変化を加味して、診断と治療を行うほうがよいと最近は感じています。

今回のコラムでは、非定常計算を行い防露診断した結果、わかったことをいくつか紹介したいと思います。


(図1、非定常計算の結果画面)

 

1、外壁から雨水が侵入した場合、どのくらいの量で壁の中の相対湿度が変化するのか?

改修版・自立循環型住宅への設計ガイドラインでは、「外部からの雨水侵入をまずは防ぐ必要がある」と書かれており、「もし、漏水がある場合は、気流止や充填断熱の可否について慎重に判断すべき」とあります。

自立循環型住宅のホームページはこちら。

改修版・自立循環型住宅への設計ガイドライン

一方で、壁内通気があると断熱材が有効に働かず、まずは通気止を行うべきという認識が実務者の中にあるため、診断・治療の段階で壁の構成を決定することに迷いが生じることがあります。現地を詳細に調査することが重要なのは当然であり、かつ、外壁も新築同様に治してあげるのが最善ですが、住まい手の予算にも影響してきます。そこで、診断時の勘を養うため、どのくらいの雨水侵入で壁の中の相対湿度があがるのか診断してみることにしました。


(写真1、昭和49年新築の外壁、解体中)

診断条件と外壁仕様

下図は、一般的な外壁構成です。
左から、
リシン吹付3mm
モルタル20mm
アスファルトフェルト0.7mm
バラ板12mm
グラスウール120mm
防湿層1mm
石膏ボード12.5mm
です。

外気温湿度は、京都市のものを使いました。室内は、温度は20度とし上下振り幅を7度。相対湿度70%一定としました。基本は、「計算の結果のよる温熱環境に関するガイドライン 一社)住宅性能評価・表示協会 平成27年2月27日修正」の規定に沿って設定しました

その他、バラ板部分に雨水全量の1%、5%、10%の3種の雨水侵入があると想定しました。

(図2、バラ板は針葉樹材としました。バラ板間の隙間はない状態です。)

 

診断結果。雨水侵入1%と5%と10%の比較。

下図の左から1%(左図)、5%(中央図)、10%(右図)になります。

黄緑に塗られた相対湿度の変化を見ると、雨水が10%侵入した場合(右図)、壁の中の相対湿度があがり、壁の中は相対湿度が100%に達する期間がでてきます。1%の左図は、夏場に壁内の防湿層面で相対湿度があがるものの、100%には達することはなく、バラ板付近も思ったより上昇していません。5%の中央図は、その中間の値といったところですが、壁の中の相対湿度は上昇し、かつ、防湿層(壁体内側)で相対湿度が100%に達しています。

これらの診断を見ると、目視で腐れが確認できた場合は、雨水浸入は10%以上に達し、木部に染みができている場合が、1~5%程度と仮定はできそうです。

(図3、1%(左図)、5%(中央図)、10%(右図)。青い線は、含水率です。)

 

2、地域による寒暖の差は、どのくらい壁の中に影響があるのか?

先程と同じ構成で、診断をしてみました。雨水の侵入は1%で統一しています。地域は、京都(6地域)に加え、福知山(5地域)、白浜(7地域)です。

定常計算でも地域による設定がありますが、これは冬の場合のみです。春と秋ではどういった変化になるのか知るためには、非定常計算が有効と考えています。

福知山(5地域)、京都(6地域)、白浜(7地域)の比較

下図は、左から福知山(5地域)、京都(6地域)、白浜(7地域)としました。

結果、既存外壁(バラ板より外部側)を残したまま、グラスウールを充填し、防湿フィルムを張れば、相対湿度が100%に達する地域はありませんでした。通気層がなくてもなんとかセーフといったところです。ただ、寒い地域になればなるほど、夏場の壁の中の相対湿度は高くなるので、通常より寒い地域の建物を診断・治療する場合は、注意が必要そうです。

(図4、左から福知山(5地域)、京都(6地域)、白浜(7地域)、含水率も福知山が少し高い)

 

3、もし、防湿フィルムが破れた場合、また、隙間があった場合は?

前述の2と同条件で、防湿フィルムを取り止めてみました。

すると、福知山(5地域)と京都(6地域)では、バラ板表面で相対湿度が100%達する判定となりました。白浜(7地域)は、この2つの地域よりも温暖なので、相対湿度が95%程度で止まっています。

前述の2と同様に、寒い地域に行くほど内部結露のリスクが高まるようです。

(図5、左から福知山(5地域)、京都(6地域)、白浜(7地域)、防湿層がないとバラ板面での含水率上昇が顕著。ただし、バラ板に隙間があると考えると、アスファルトフェルト面で相対湿度が上昇すると思われる。)

 

4、まとめ

既存建物を断熱改修する場合は、現場を知った上で、診断・治療を行う知識と経験が今後は必要になってきます。既存外壁を残す場合は、新築と違い通気層がないため、防露の診断は必ず行った方がよさそうです。

今回紹介した事例は、ある一定の条件の元、診断を行っているのでその条件が変われば結果も変わってきます。例えば、今回紹介した2の「地域による寒暖の差」では、寒い地域の方が、夏場に防湿層表面(壁内部側)の相対湿度があがるという結果が出ましたが、通気層を設けた場合は、暑い地域の方が夏場の防湿層表面(壁内部側)の相対湿度があがるという結果となりました。

改修の場合は、あらゆるケースが存在してくるため、その都度、シミュレーションをする必要がありますが、ある一定の診断の傾向は掴めます。改修版・自立循環型住宅への設計ガイドラインを参考にしつつ、現場を詳細に調査することがいますべきことでしょう。

文:豊田保之

  • 2019年10月
  • 2019年9月
  • 2019年8月
  • 2019年7月
  • 2019年6月
  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月
  • 2018年11月