基礎から考える改修設計 ~コラム2025年10月
鈴木 竜子(住宅医スクール講師 / 山辺構造設計事務所 / 東京都)
新築でも改修でも、コストに最も影響するのは基礎工事です。新築のときは、プランを考えてから上部構造を設計し、それに合わせて基礎計画を行うのが一般的です。2000年以降の木造住宅では、鉄筋コンクリートのベタ基礎が主流で、建物の外周と1階の柱および耐力壁の下に立上りを設けます。
■その際、耐力壁や柱のある「通り」が少しずつずれていると、基礎のコストアップにつながります。
コストを抑えるキーポイントは?
■構造的に見たコストを抑えるキーポイントは、「構面計画」です。1,2階ともに柱が揃っている通りを構面(こうめん)と呼び、その中でも特に重要なものを主構面(しゅこうめん)といいます。小屋梁や床梁は、主構面にまず大梁を通して、その上に小梁を掛けるように考えます。そうすると、荷重のほとんどは主構面の柱に流れるため、基礎梁も主構面に通せばよい、ということになります。さらに耐力壁も主構面内に配置すれば、基礎梁(立上り)の位置を集約することができます。
■木材の定尺長さが4mであることと、木造住宅の基礎は一般的に耐圧版厚さが15㎝でシングル配筋であることを考えると、主構面の間隔は1間半(2.73m)~2間(3.64m)が最も合理的と言えます。
■改修の場合も同様に、主構面を4m前後として、なるべく「連続して通す」ように考えます。既存がコンクリート基礎の場合は、比較的基礎が連続している通りを主構面として、そこに柱や間仕切壁を設けるようにすると、基礎補強を軽減することができます。
■ただし、高倍率の耐力壁を設置すると、柱に大きな引抜力と圧縮力も生じ、基礎の負担が増えてしまうため要注意です。引抜力が大きくなる壁は新設基礎の上に配置するか、既存基礎に鉄筋コンクリートの基礎を抱かせるようにします。
■無筋基礎の場合は、壁倍率2.0程度の壁を分散配置して引抜力を抑えるのが構造計画上のポイントになります。また、連続していない島基礎に荷重がかかると沈下しやすいため、耐力壁は連続した基礎に載せるようにします。連続していれば、局部的に沈むことはないからです(図2)。
改修で地盤調査は必要?
■既存基礎は、現状の建物と地盤との関係を物語っています。不同沈下がない、無筋でもひび割れがない、という場合は、比較的良い地盤と判断できます。ただし荷重が増える場合は、地形図や近隣データなども調べたうえで地盤調査の要否を考えると良いと思います。もし不同沈下や大きなひび割れが多発している場合は、基礎をしっかりさせる必要がある、ということになります。傾斜地のときは軟弱層の厚さの変化を把握したいので地盤調査を行いたいところです。
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写真1 既存基礎の人通口部分 切断面から無筋基礎であることがわかる。無造作に切欠かれているが、ひび割れもなく健全であるため、良好な地盤であると推察される。 |
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写真2 古民家の床下状況 軟弱地盤地域に建つ石場建ての古民家で、束石が所々沈み、不同沈下が著しい。このような場合はしっかりとした基礎を新設する必要がある。 |
既存基礎を活かす補強計画
■下図は 築50年の木造2階建て住宅の改修事例です。基礎伏図は、青線が既存基礎で、赤線が補強箇所を示しています。既存基礎の状況から、Y方向は基礎が連続している(い)(又に)(ち)の3構面、X方向はプランとの整合も考えて(一)(三)(五)(九)の4構面を主構面としました。この主構面内に主要な柱と耐力壁を配置していくと、(九)通りの耐力壁はどうしても高倍率になります。
■さらに(と)通りは2階外壁面のため、五、九に大きな荷重がかかります。そこで、九通りは既存の無筋基礎に鉄筋コンクリートの基礎を抱かせて補強することにしました。
■また、(と)-(五)も重要な支持点となるため、(五)通りも基礎を新設して、格子状に基礎梁が連続するように補強しました。
なお、断熱のために土間コンを打つとのことでしたので、基礎梁の周辺は鉄筋を入れて構造的な役割も持たせるようにしています。

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図3 木造2階建て住宅の改修 構造検討スケッチ
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■このように構面を意識すると、上部構造の補強方針も明確になります。
■改修はコスト調整が厳しく、重要ポイントの絞り込みに苦慮しますが、「既にある基礎」を手掛かりに構面整理することをおススメします!
鈴木 竜子
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