住宅医スクール2015 大阪 第1回のご報告

6月27日(土)、住宅医スクール2015大阪・第1回が開催されました。
初回として、スクールの概要説明の後「木造建築病理学の必要性」「建物調査と報告書の作成」「木造建築病理学の実践」「住宅改修事例を語る-①」という4つの講義が行われ、49名が受講されました。
 
第1講義「木造建築病理学の必要性」
三澤文子氏/MSD+Ms建築設計事務所主宰、岐阜県立森林文化アカデミー客員教授
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第1講義は、(社)住宅医協会理事でもある三澤文子氏により「木造建築病理学の背景と取組」と題して、 住宅医スクールで学ぶことの背景となる木造建築病理学についての説明と共に、 来るストック社会や住宅の長寿命化を見すえ、場当たり的でない住宅改修を行うために必要な知識や診断技術、 具体的な改修事例の報告などから、建築士や工務店が既存住宅改修をどのように捉え何をすべきかなどについて詳細な解説をしていただきました。
 
第2講義「建物調査と報告書の作成」
滝口泰弘氏/滝口建築スタジオ 代表
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第2講義は、(社)住宅医協会理事でもある滝口泰弘氏により、既存住宅改修のために行う詳細調査方法について講義が行われました。 現在の公の既存住宅調査手法である既存住宅インスペクションガイドラインの説明や、ガイドラインに基づいた既存住宅現況検査の概要、これらインスペクションと住宅医などの違い、国主導のリフォーム施策の背景などを説明していただきました。また、住宅医の調査手法として既存ドックシステムで採用している診断項目やレベルの設定、 建物調査のポイント、受講生や住宅医スクールOB生参加による実際の調査診断の流れや費用等について、 解説していただきました。
 
第3講義「木造建築病理学の実践」
豊田保之氏/トヨダヤスシ建築設計事務所 代表
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第3講義は、(社)住宅医協会理事でもある豊田保之氏により、住宅医による木造住宅改修事例として、 調査診断から改修設計、工事監理という実務の一連の流れ、耐震・温熱に関わる各種性能を向上させるための手法、 土壁がある場合の改修手法などについて詳細に解説していただきました。また改修後の光熱費調査などから、改修前後で建物性能がどのように向上したかについてもお話しいただきました。
 
第4講義「住宅改修を語る」-①
前田圭介氏/UID主宰
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第4講義は、UID主宰・前田圭介氏により、地元・福山市にこだわった設計活動を中心に、自らの生い立ちから建築家への道のりを踏まえ、「建築は環境をつくる」との一貫したメッセージを新規建築作品、改修、まちづくりと、建築家として多岐にわたる活動の紹介を通してお話を頂きました。「何もないとは言わせない」との福山市のコピーを引き合いに、店舗の再生から街の再生に至る活動は、粘り強く、最後は地元の人を味方にしてしまうというお話でした。更に、福山市出身である藤井厚二設計の「後山山荘」の3年越しの再生改修プロジェクトは、全国から学生ボランティアまで集めて、その魅力ある庭園を再生さるところなど、建築家としての魅力と共に、自らの現場の経験を通して、多くの人たちの力によって無事完成に至ったお話でした。また、地に足がついた落ち着いた語りは、これから住宅医大阪スクールでスタートする受講生をも魅了するものでした。ありがとうございました。以上で第1回の4つの講義は終了し、その後懇親会も開催されました。
 
次回第2回は、住宅改修の構造に関わる法規の整理、構造的不具合の原因と対策、 住宅改修における不動産仲介の取組みをテーマに講義が行われます。住宅改修設計には構造に関する知識と理解が不可欠です。何よりも実務に役立つ貴重な知識となり得ますので、 多くの皆様のご参加をお待ちしております。
(関西事務局 代理横田)