各地の住宅医の日々No.30 ~名古屋市瑞穂区にある海上寺(ちばな保育園)の事務室の増改築

森 恵美住宅医 / 森建築設計 / 愛知県名古屋市

2年前、名古屋市瑞穂区の海上寺というお寺の事務室増改築の設計のお仕事をさせていただきました。
住職さんと天竜の永田木材の若社長が学生時代からのフットサル仲間とのことでお寺と材木屋さんの思いがしっかり形になったお仕事でした。

保育園も併設しているお寺なので、事務的なお仕事も多く、事務所スペースの増築とそれに伴う改装でした。大きなお寺の一部分の増築ということもあり、住宅医で学んだ耐震や建物全体の省エネの改修は発揮できない改修でしたが、既存のものを大切にするという住宅医の精神につながるところもたくさんありました。調査・計測もさせていただき、立派なお庭に面したところに増築するということで、

  1. お寺の一部としての事務所とすること
  2. お庭の景観を損なわない外観にすること
  3. 使用できる既存のものは使うこと

などを重点において、住職さんの意志を形にしていく貴重な経験をさせていただきました。


改修前(一部取り付けたような増築部分あり)

増築してあったところを解体して

事務所スペース+縁側+トイレを増築

右側が事務所


床材・天井材ともに天竜スギを使用


縁側(木製の建具は既存のものを再使用)


ビー玉も使ってある斬新なお庭

今の時期は紫陽花も綺麗


事務所スペースが広くなったことで、ゆったりと使用されていて、行事などで地元の方が使用する機会も増えて、お庭も楽しみながら活用していただいていることを聞いて、大変嬉しく思っています。


海上寺と、ちばな保育園の紹介をさせてください。

瑞穂区は名古屋市の中東部に位置し、大学や桜の名所、大きな競技場もあり、良好な住宅街もある地域として知られている区です。その中央付近にある海上寺は保育園も併設しており、100名近い可愛らしい声が聞こえて来るお寺です。


保育園の入口でもある山門

本堂


「海上寺」という名前の由来は寺の下あたりまで海が入り込んでいて、潮が満ちてきて熱田神宮から見るとまるで海の上に建てたお寺のように見えたそうです。
母乳満足と幼児の息災守護で知られ、乳授けを願う人は綿花で作った乳形のぬいぐるみを奉納し、乳が多すぎる人は乳預けするという珍しい信仰の「ちばなやくし」の名で知られています。
歴史は古く1639年(寛永16年)に造営、今の住職さんが20代目とのことです。昭和に入ってから保育園も併設され、いまに至っているそうです。
地元のお祭りや節分などの行事も担い、地元の方々から愛されているお寺で、若い住職さんの日本の木材を使って、日本らしい伝統や文化を継承して、環境も整備していきたいという思いをうかがい、頼もしい気持ちになりました。


愛しのおっぱいのある正面玄関

乳型のぬいぐるみを奉納


今年の夏に二人目の孫がベトナムで生まれる予定の私は、無事出産と母乳育児の祈願をしました。工事中にはなかった「愛しのおっぱい」という可愛らしいモニュメントが入口付近に新設されていました。 この中にたっぷり詰まっている思いが、子どもたちの健やかな成長となるよう心から願っています。

森 恵美
©Emi Mori , jutakui


 LINK
永田木材株式会社 https://nagatamokuzai.com/