各地の住宅医の日々№12 ~職人たちの仕事を継承していくために

有木 俊恵(住宅医 恵 建築デザイン一級建築士事務所 岡山県)

私の住んでいる岡山県北部は、全国有数の桧の産地です。全国的には、人工林の樹種は杉が47%、桧が28%(2017年)ですが、岡山県は桧が74%、杉が22%で、桧の生産量はここ10年以上、常に3位以内の県です。12年前、地元の木材関係者、工務店、設計事務所で「木の国美作ネットワーク」が結成されました。これに参加して特に良かったことは、活動を通して若手の棟梁たちと知り合いになれたことです。

私が常日頃から思っているのは、腕の良い職人たちと組んで良質な住まいをつくりたい、ということ。このまま、みんながハウスメーカーばかりで家を建てるようになれば、せっかくの腕を持った職人さんたちは高齢化でいなくなり、若い職人も、そういう家が作れなくなるでしょう。

ノミを使う棟梁

私は、設計事務所ですが、リフォームでは、分離発注で工事もさせていただくことが多いのです。
これらの大工技術を継承するためにはどうしたら良いのでしょうか? なるべく木材や自然素材等の、本物の材料を使うことを心がけることだと思います。消費者は、まずハウスメーカーの展示場に行き、「今はこれが普通だ。昔のような木造住宅はつくれない。つくれたとしても、すごく高い。」と思っています。ハウスメーカーと違って職人や地域の工務店はPRが下手です。どこにどんな家がつくれる人がいるのかわかりません。確かに、既製品の新建材を使うよりも手間はかかりますが、必ずしも高い、というわけではありません。ハウスメーカーが作るような大量生産に向いていないということでしょう。

作業場にて 手刻みの仕口

作業場にあったノミ

昨年は自宅を新築しました。築80年で50坪の旧宅がありますが、住宅医であってもリフォームしようとは思いませんでした。(旧宅はリフォームして事務所として使用しています。)

我が家は平成10年の水害で床上40㎝浸水したので、床もかなり上げないとだめ。家族も減り、大きな家は必要ないし、ちゃんとしたリフォームは小さな家を建てるより費用がかかることも知っています。

大黒柱越しに見るリビングキッチンの天井

木の家の良さをわかってもらうために、モデルハウスのつもりで、腕の良い棟梁にお願いして、手刻みで桧の大黒柱のある住まいが完成しました。断熱等級4の住まいです。
ここで初めての冬を迎えました。毎朝、起きるとすぐに室温を計りますが、暖房をつける前に全室15~16度あります。(外気温0度前後)基礎断熱もしていて、これから床下エアコンを取り付けるのでどれぐらいの暖かさになるか楽しみなところです。

リビングキッチン全容(完成写真)テレビの左が大黒柱(桧18センチ角)