投稿日:2016年11月09日

住宅医コラム 意見交換2016-72


古く素敵な建物が、簡単に壊されることを阻止するためには、どうしたらいいのでしょうか? まずは、壊されずに残り、愛されて使われている建物を大いに褒めて、古い建物を壊さず大切に使うことが「褒められること。」と多くの人に認識してもらうことなのではないか。と考えました。

今月の、褒めコラム「改修建物を訪ねて」は、神戸市舞子にある「旧日下部家住宅別邸」です。

 

「改修建物を訪ねて~その11」

旧日下部家住宅別邸 ~舞子ホテルとして生き続ける「住宅遺産」

三澤文子(MSD)

 

 

去る10月27日に、岐阜県立森林文化アカデミーで住宅医検定会が行われました。その基調講演では、建築家・野沢正光さんが「一般社団法人住宅遺産トラスト」にかかわるようになったいきさつや、活動内容なども、語ってくださいました。

私は、雑誌・家庭画報の連載「住宅遺産~名作住宅の継承」を楽しみにしているのですが、その連載の監修を「住宅遺産トラスト」が行っているのを知り、「良い建築を壊さず残していくこと」の価値を多くの読者に広めて下さっていて、本当に嬉しく思っていたのでした。

同時に、古く素敵な建物が簡単に壊されるニュースも耳にしますが、次第に価値観がかわっていくことを、この連載で感じています。

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11月号は宮脇檀設計のブルーボックスハウス。設計・宮脇檀・1971年竣工(築45年)。現在4代目がお住まいです。

執筆の伏見唯氏は、60年~70年代の薫りがする「レトロモダン」と表現しています。また継承のポイントとして「人を惹きつけるデザイン」としています。

 

 

さて、壊されずに残る建物は、用途を変えて、多くの人々が気軽に訪れることが出来る住宅遺産になっています。私たちもそのような建物を利用して、昨年4月に、Ms建築設計事務所の30周年記念パーティーを開催いたしました。

素敵な住宅遺産とは、神戸の舞子にある「旧日下部家住宅別邸」です。

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この建物は、海運業で名を成した日下部久太郎が、神戸進出に伴って、1919年(大正8年)、明石海峡を望むこの神戸市舞子に建設しました。英国風の洋館で、地上3階、地下1階建てのレンガ造。1階には応接室、2階と3階はベッドルームが設けられているのですが、この洋館に加えて、大規模な和風建築も併設されています。

その和風建築は、日下部久太郎の故郷、岐阜から名匠を呼び寄せ、木曾の山から伐り出した銘木を惜しみなく使っているそうです。

 

 

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ここは、まさしく木造を愛する私たちにとって、申し分ない会場になりました。

右上の写真は、宴会の始まりに、栗の専門店、橘商店の橘明夫氏が、乾杯の挨拶をしている場面です。

外は明るいので、ガラス窓の向こうに素晴らしい庭園が見渡せることが、お分かりでしょうか。

 

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品のある欄間や、時間を経た柱や長押の色合い。

MsのOB挨拶が続きますが、このような空間で和やかな時間を過ごし、明日の活力を得ることが出来ました。かつての大邸宅が、こんなふうに現代人の心を豊かにしてくれるのです。

 

現在は 舞子ホテルとして、誰でもいつでもお食事が出来ますし、結婚式も出来るとのことです。ここでの結婚式は好いでしょうね。「どなたかご招待いただけないかな。」

 

 

 

投稿日:2016年11月01日

調査事例紹介2016-61 広島市安佐南区


広島市安佐南区 住宅医スクール広島受講生による詳細調査

報告:澤田博/新協建設工業株式会社 広島支店

 

■所在地:広島市安佐南区
■調査日時:2016年10月4日(火)曇 気温27℃
■構造規模:木造2階建て
■延床面積:78.57平米
■築年数:築40年(昭和51年築)

 

広島市安佐南区で、築40年の木造2階建て住宅、現況詳細調査を行いました。

既存住宅の劣化診断、現況を的確に判断できるよう、住宅医スクール受講生の皆さんの「勉強会」として企画したものです。

調査リーダーとして山口市から田尻裕樹さんを招き、県内の建築士や工務店の有志15名が集まり、地盤調査員2名の合計18名による詳細調査となりました。

朝のミーティング

朝のミーティング

 

五つのチームに分かれ、①劣化、②設備・仕上、③採寸、④床下、⑤小屋裏を、専門機材も使って細かく調べ、建物性能を数値化していきます。

 

 

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床下、土台の含水率

 

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根太に白い斑点

 

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劣化事象確認

 

 

シュミットハンマー 女性も力いっぱい押す!

シュミットハンマー 女性も力いっぱい押す!

 

マス目20個所計測

マス目20個所計測

 

事象記入

事象記入

 

四十年前の時代背景か、天井・壁・床の断熱材が全く入っておらず、住まい手も仮住まい先へ引越し後のため荷物もありません。通常の在宅家屋と異なり、とても調査しやく、耐力壁や基礎、雨漏り、傾き、設備など劣化事象を細かく調べられました。

 

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小屋裏木軸含水率確認

 

小屋裏劣化事象

小屋裏劣化事象

 

構造材採寸

構造材採寸

 

配置確認

配置確認

 

 

また、簡易地盤調査(スウェーデン式サウンディング試験)も、昔ながらの手動式道具を用いて行い、参加者も土中の感覚を体験しました。

 

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参加者も手動式道具を廻し、土中の感触を経験

 

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屋内SWS調査

 

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お昼休みに各チーム中間報告

 

 

参加者の皆さんの感想として

「現場の人間ではないので、想像で理解してきたが、今回の調査体験で、勉強してきた事の理解度がぐっと深まった」

「これだけ詳細な調査がなされ、結果を図面化してあれば、設計も実情に基づいてきちんとでき、工事もスムーズに行える」

「少数運営の会社には、これだけの調査は難しく、調査の必要性を施主に納得してもらい、費用を拠出していただくことが課題」

「仲間と共に目で見て、ひとつひとつ計測し、記録する。体感して身につくって、大事だと改めて思った。疲れましたが楽しかった」

等など、今回の経験が皆さんの今後に活かされればと願っています。

 

作業終了後の集合写真

作業終了後の集合写真

 

 

さて、この建物は、長期優良住宅化リフォームで性能向上に資するとして、補助金を申請しており、断熱改修、メンテナンスおよび耐震性向上を施し、来年1月末の完成予定で進めております。

筋違い柱脚部欠損

筋違い柱脚部欠損

 

羽柄材に付着していた白い斑点は貝殻だった!

羽柄材に付着していた白い斑点は貝殻だった!

 

 

解体工事を進めていくと、詳細調査では判断の難しかった、筋違いの断面欠損の有無、辺材に付着した白い斑点の正体(貝殻跡)など、判別できなかった事象もわかりました。

筋違いや柱脚の断面欠損は、大工さんが巾木を埋め込んだためで、和室の廻縁や長押納めによる柱欠損と同じく、比較的よく見る事象です。

羽柄材に貝殻が付着していた事象は、40年前は貯木場として、原木を海上に浮かせていたため、その時代の名残であろうと思われます。

 

この建物は、(珍しく?)図面通り施工されており、地盤も良いため建物の傾きがほとんどなく、築40年の建物としては、状態は良好です。

改修工事により、断熱性能、耐震性能が向上することで、現在の住まいとして遜色ない家屋に生まれ変わることができるので、住まい手も楽しみにされています。

参加いただいた、皆様!大変お疲れ様でした。

現在、詳細調査の報告会を行いたいと考えており、その準備を始めているところです。

 

新協建設工業株式会社広島支店

澤田 博