投稿日:2016年09月29日

事例報告(改修事例)2016-61


京都市「釈迦谷の家」改修事例報告

報告者:一級建築士事務所 FORMA 建築研究室 [http://www.forma-fae.com]

 

 

 

■工事場所:京都市北区

■家族構成:夫婦(70代)2人子供(30代)1人

■工事期間:平成23年3月~平成23年12月

■構造・規模:混構造 RC造地下1階、木造1階建

■地下面積:91.97㎡ 1F床面積:121.40㎡ 床面積:213.37㎡(64.54坪)

■設計:一級建築士事務所 FORMA 建築研究室

■施工:施主直営による分離発注

■平成22年度第1回 長期優良住宅先導事業(国土交通省) 採択

■木造建築病理学・「既存ドック」システム2 に基づいて設計

■概要

昭和55年建築された住宅をクライントご夫婦がロケーションと建物の佇まいを気にいり、別荘として購入され、老後はこの家で暮らしたいという事で耐震性の不安、温熱環境の改善、劣化改修、老後に備えた改修を行った事例です。

1F部分がご夫婦の生活の主たる場で現状の平面計画もご夫婦の生活スタイルに合致していることから間取り変更に主眼を置かず、限られた予算で不安や不満個所の定量化を行い、費用対効果の高いと感じられる、今後の保守を考え今やっておくべき劣化の改修を行う事としました。

 

 

【詳細調査を踏まえた設計】

耐震について

混構造なので半地下のRC部分は除き1階(木造部分)で計算

・耐震診断(一般診断)は0.9 (倒壊する可能性がある)

・常時微動は7~9Hz (2F基準の6Hzに比べて剛性を有する)

・基準法 充足率

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本建物では、地震力に対しては東西方向及び南北方向において耐力壁の壁量は不足している。また、風圧力に対して東西方向は満足しているが、南北方向は不足している。(詳細調査結果引用)

 

バランス計算

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本建物は東西方向の南端部において充足率が満たされていない。また東西方向の壁比率も50%を満たしていないので耐力壁のバランスが悪い結果となった。南北方向の西端部および東端部において充足率が満たされないていない。南北方向の耐力壁のバランスが悪い結果となった。

建物全体のバランスを良くするため、改修時には東西方向の南端部および南北方向の西端部と東端部に耐力壁を増やす必要がある。その際には耐力壁の配置バランスに充分留意する必要がある。(詳細調査結果引用)

 

・N値計算では15か所の金物補強が必要という結果です。

 

◎ これらを踏まえて耐震診断(一般診断)判定値1.20(一応倒壊しない)とし、必要個所に金物設置を行う耐震改修計画を立てました。 接合部、劣化改修の必要な部分と耐震壁改修部分を重ね合わせる事で工事の合理化を計りました。

1F平面図

1F平面図

※色付き部分は劣化改修、開口位置増設による造作と耐力壁を重ねた部分

 

 

 

 

温熱環境改善

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熱損失係数(Q値)は4.79W/㎡Kという結果となった。

これは、現行の次世代基準で建てられた住宅と比較すると、約1.7倍の熱の逃げがあることになり、同じ温度に保とうとすると、1.7倍のエネルギーを必要とすることになる。

部位別の面積割合と熱損失割合を見ると、熱損失が一番大きいのは開口部で44.37%、次いで床18.37%、換気16.54%、屋根・天井9.90%、外壁 9.21%となっている。

天井、外壁に断熱材が入っているため、部位面積の割に熱損失の割合が小さくなっていることがわかる。一方、開口部はシングルガラスアルミサッシのため、部位面積の割合に比べ、熱損失の割合が大きくなっていることがわかる。(詳細調査結果引用)

 

以上の結果を元に優先個所と工事コストを概算を検討して、アルミサッシガラス部分の断熱性能強化と床下付加断熱そして天井の付加断熱を行いました。この工事においても劣化改修、耐震改修、フロアの段差解消等の工事に絡めて工事経費を削減する事に役立てています。

設計Q値は3.02W/㎡Kとなりました。

一日のうち一番長い時間を過ごす居間、冬場は日当たりが良いこと、床暖房の効果もありますが2月中~後半、朝の気温18度前後、日中(快晴時)は日射のダイレクトゲインにより室温も20度前後になる事もあるとのことでした。

 

 

 

 

老後に備えた改修

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このようにご夫婦の生活においてはワンフロアーで同線はスムーズです。

また、高台の眺望や借景を活かした設計となっているので日々のうるおいも感じられる平面計画です。ただ、各室間の敷居が15mm、浴室と洗面脱衣部分は120mm存在し、膝を患う奥さまの移動時の障害となっています。家の動線の中で使用頻度の多いところを重点的に段差解消を行いました。

改修前

改修前

改修後   脱衣-浴室・廊下の段差解消

改修後 脱衣-浴室・廊下の段差解消

 

 

 

劣化改修

屋根については購入前に葺き替えがなされていて、軒が深い建物のため外壁の傷みも心配するほどではなく、床下、小屋裏の蟻害、腐朽は見られませんでした。

気になる部分としては擁壁と家の地下部分外壁が近接していて地震時に擁壁が動いた事により家の外壁にひび割れが起こっていたいました。

改修前

改修前

改修後

改修後

 

雨水が入ることにより将来更に躯体を痛める可能性があるので劣化改修として優先的に改修しています。

佇まいを気に入られていたご家族でしたので、外観や平面の大がかりなリフォームでは無く、保守と各種の基本性能を上げる事に主眼を置いたリフォームでした。

性能を数値化、提案して住まい手と共に目標を定め不満だった個所が改善されたリフォームとなりました。

今回は施主による分離発注のサポートという側面もありましたが施主自ら工事に立ち会う事で思い入れが深まり愛着のある家となったと思います。

改修を機に快適で潤いのある暮らしをされる事を期待します。

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玄関から廊下

 

浴室からの植栽を望む

浴室からの植栽を望む

 

縁側

縁側

 

居間から大文字を望む

居間から大文字を望む

 

施主支給の手洗いカウンターと信楽焼ボウル

施主支給の手洗いカウンターと信楽焼ボウル

 

施主支給の大阪障子

施主支給の大阪障子

 

投稿日:2016年09月20日

住宅医スクール2016熊本 震災関連特別講義ダイジェスト03


住宅医スクール2016熊本 震災関連特別講義ダイジェスト03

 

9/17(土)、住宅医スクール2016熊本(第3回)開催しました。

今回の第4講義(ゲスト講義)は、「熊本地震の構造的被害②-調査分析報告②」と題して、京都大学生存圏研究所教授、五十田博先生に講義して頂きました。

その概要についてご報告します。(滝口/住宅医協会理事:スクール熊本担当)

 

熊本地震の構造的被害②-調査分析報告②

五十田博氏/京都大学生存圏研究所教授

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熊本地震の被害調査報告(9月現在)

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国総研の「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会(第3回)」が9/12に開催され、委員会報告書(案)が公開された。

(委員会の第3回配布資料はこちら)

益城町の悉皆調査結果から、倒壊数は1981年以前(旧耐震)で215棟、1981年~2000年までで75棟、2000年以降で7棟となっていて、2000年以降で7棟倒壊しているのが熊本地震の特徴である。新耐震基準はそれなりに効果があり、2000年基準も概ね妥当であったことから、委員会では現行耐震基準は妥当であったという結論を出している。よりたくさんの被害が出ていたら法律が変わったかもしれないが、今回はそこまでには至っていない。ただ、2000年以降で倒壊した7棟は問題がある。7棟のうち3棟は2000年基準が守られていなかった。

建築基準が計算で担保しているのは全壊してもよいが倒壊しないというレベルだが、施主は大地震が来ても一部損壊や半壊程度で済ませたいと思っており、倒壊による死者は防げてもこの要求レベルのギャップを埋めていかないと、地震が来るたびに社会問題が起こる。壁量の充足率を上げることでこのギャップを埋めていくことができるが、益城町でも壁量の充足率が2.0倍ほどあるものは、大きな被害が見られなかった。

 

倒壊と非倒壊をわけたもの

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大破以上の被害の要因は、1981年以前(旧耐震)では壁量不足、不十分な接合部、バランスの悪い壁配置、劣化、地盤変状など。前震で倒壊した建物のほとんどが旧耐震だが、接合部が外れて倒壊しているものが多い。実大実験からも分かるが、揺れで建物が倒れるにはかなり大きな変形を生じさせないと倒れないが、接合部が外れて倒れるのは比較的容易に起こるため、倒壊させないために接合部はとても重要。

1981年以降(新耐震)では、金物があっても2000年基準を満たしていない、金物に対して所定の釘が使われていない、筋かいの配置が悪い(圧縮は2.5倍、引張は1.5倍。これらがセットではじめて2.0倍になる)、ソーラーパネルにより屋根の重量が想定重量より増えているなど。ほんのわずかな違いだが、各々が致命傷になっていると考えられる。また、軟弱地盤による局所的な増幅なども考えられるが、地盤による要因は1割程度で、さほど大きくないと考えている。

 

木造の耐震設計の要点

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木造住宅は経験と勘が重要だと言われるが、大地震に対する経験と勘はそんなにうまく蓄積はされていかない。度々訪れる「経験したことのない揺れ」。新しいことを学んでいかなければならない。また、何が耐震的であるか?壁なのか接合部なのか材料なのか。これらは要素技術に過ぎず、建物全体の性能はこれらを設計・構造計画してはじめて分かるものである。正しい施工ももちろん重要である。

同じ壁量の建物でも壁の配置によって損傷が異なる。同じ材料を使っても耐震等級が異なれば損傷レベルも異なる。重い瓦屋根(要素技術)が悪い訳ではない。瓦屋根ならそれに応じて適切に躯体を設計すればよい。

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耐震性能は壁のバランスや接合部性能によって変わってくるが、接合部のN値計算では不足してしまうケースがある。2階柱の直下に1階柱が無い場合、2階柱の引き抜き力は、本来1階柱に伝わるが、N値計算では考慮されないため1階の柱が抜けてしまうことが起こる。

「国総研の地震応答解析(wallstat)」

から、今回の地震でもこのような1階柱の抜けが原因で倒壊した建物があったと思われる。実際に、軽いベランダの下部について、2階建ての1階の柱として計算されていると思われる被害例もあり、接合部の設計はとても重要である。

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また、材料(壁の性能や接合部の性能)にはかなりの安全率が掛けられている、限界値とされている値は倒壊限界まで余裕がある、積載荷重は実際の方が軽い、非耐力壁の存在など、耐震性能には設計する部分以外にも色々考慮されているため、品確法で1.5倍の設計をしても、全体の耐震性能は1.5倍にはなっていない。設計部分の性能値を確保することが最も重要だが、非耐力壁、重量、金物についても、設計値以外の部分の性能を下げる可能性があるので要注意。

これまでの実態を見てみると、これらの余力部分は想定よりもう少しありそうで、今回の地震については、設計値部分が1.5~2.0倍あれば、激震地でも十分倒壊しないと考えられる。

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木造住宅は単純な構造だからといってなめてはいけない。作用する力も抵抗する力も単純ということは、即倒壊するということ。壁配置や接合部などの設計は面倒と思われるかもしれないが、建防協の「誰でもできる我が家の耐震診断」にも専門家に最低限考えて欲しいことが書いてある。

地震に対しては是非余裕を持った設計をしてほしい。

 

以上

(※資料は五十田先生の講義資料より抜粋)