投稿日:2016年07月25日

住宅医コラム 意見交換2016-69


古く素敵な建物が、簡単に壊されることを阻止するためには、どうしたらいいのでしょうか? まずは、壊されずに残り、愛されて使われている建物を大いに褒めて、古い建物を壊さず大切に使うことが「褒められること。」と多くの人に認識してもらうことなのではないか。と考えました。
今月の、褒めコラム「改修建物を訪ねて」は、広島県福山市鞆の浦の「後山山荘」です。

 

「改修建物を訪ねて~その8」
新進気鋭の建築家が再生~聴竹居を彷彿とさせる後山山荘
三澤文子(MSD)

 

 

昨年の住宅医スクール大阪、6月の開講日に、ゲスト講師として講義を頂いた、建築家・前田圭介さん。その前田さんが改修設計をされた「後山山荘(うしろやまさんそう)」を昨年11月に訪ねることができました。
阪神淡路大震災を契機に開校したMOKスクール大阪のフィールドツアーの企画でしたが、じつは住宅医スクールでも研修旅行があれば、是非訪れたい建物です。

 

この後山山荘があるのは広島県福山市鞆の浦。素晴らしい景観の地です。
前田圭介さんが福山市の出身で、今も福山を拠点にして世界的に設計活動をされているのですが、この地の生んだ建築家・藤井厚二(1888~1938)と同郷であることが、この改修の仕事をされた縁となるのでしょう。

 

京都・大山崎にある聴竹居を彷彿とさせる 後山山荘は、建築家・藤井厚二が、お兄さんのためにつくった昭和初期の別荘。それを2013年に前田圭介さんが改修設計し、見事に再生させています。

 

高台にある後山山荘へのアプローチ。
期待感をそそる小道です。
独り歩きがちょうどの巾のこんな小道が、工事にとってどんなに厳しい条件になるのかも想像に余りあります。

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期待の先にある佇まい。
凛としてこの地に存在し、私たちを迎い入れてくれる、後山山荘。

再生までのプロセスは、前田圭介さんの講義で聴いていたものの、時間をかけて、しつこく丁寧にすすめてきた道のりがあったことに、改めて敬服せざるを得ません。
また、今後の維持に関しても、ボランティア団体をつくるなど、尽力を惜しまない姿勢に対し、微力でも応援したい気持ちになります。

尚、見学は毎月第2日曜日の10時から15時まで受け付けているようです。
http://ushiroyamasansou.com/visit/

 

 

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雨に濡れた夕闇近くの情景。
時代を越えて上質なものと対話できることは、本当に価値あることです。

 

 

どこか懐かしい光景、縁側に座っての休憩。

どこか懐かしい光景、縁側に座っての休憩。

 

縁側に座って看る景色。雨に煙ってはいるものの美しい。

縁側に座って看る景色。雨に煙ってはいるものの美しい。

 

高台のこの地からは瀬戸内海に浮かぶ小島や行き交う船の景色を見下ろすことができます。
大切なものを壊してきた時代を過ぎた今だからこそ、壊されずに残った景観を、大切にしていきたいと思います。

投稿日:2016年07月11日

住宅医コラム 意見交換2016-68


古く素敵な建物が、簡単に壊されることを阻止するためには、どうしたらいいのでしょうか? まずは、壊されずに残り、愛されて使われている建物を大いに褒めて、古い建物を壊さず大切に使うことが「褒められること。」と多くの人に認識してもらうことなのではないか。と考えました。

今月の、誉めコラム「改修建物を訪ねて」は、和歌山県田辺市の「榎本邸」です。

「改修建物を訪ねて~その7」
町家の改修と数寄屋建築の融合~いつか真似したい材料選択
三澤文子(MSD)

 

 

 

もうずいぶん前に和歌山県の山長商店の榎本社長のお宅を訪問する機会を得ました。山長商店といえば、紀州材の代名詞ともいえる林業・木材会社。江戸中期に創業ということです。
代々住み継いだお宅を、道路側のみ改修というかたちで残し改修。敷地は奥行きが深く、そこには庭を整備しながら、数寄屋風の素晴らしいお住まいが増築されています。
設計は、建築家、故・渡辺明氏。完璧な設計を学ばせて頂きました。さらに高度な大工技術、圧倒されるほどの材料の質の高さ、全てに感動を覚えます。

 

今回、改修部分を中心に、ご覧頂きたいと思います。

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道路側正面。商家にある出格子は糸屋格子。ただ、縦格子が2本通しで、1本が切子というあまり見ないパターン。そのためかエレガントな雰囲気を感じるのです。そもそも、内部に光を入れるための糸屋格子ですから、糸屋格子にしたのは、それも目的の一つだったのかもしれません。

 

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それにしても、2階の縦格子の細さが凄い。何の材料なのでしょうか。もしや鉄筋では?と疑うほどですが、まさか山長商店が鉄を使うとは思われません。

 

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勝手口らしき格子戸。その両脇には栗のナグリ仕上げの板張りが見えます。格子戸の上部、板金で水切りをつくりそうなところに、紐丸瓦が水切りとして使われています。こんな選択に上質感と重厚感が生まれるのしょうか。
モダンデザインでスッキリさせ過ぎず、かと言って重すぎず。瓦のような部品を使うと重たくなりそうなところが、それを感じさせないのがさすがです。

 

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そして、塀も栗のナグリ仕上げ。笠木はここでも紐丸瓦です。
いつか、栗のナグリ仕上げ板張りの塀をつくってみたいと思います。

 

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糸屋格子のお蔭か、内側の障子が明るいのです。また、障子の仕組みも巧み。これも、いつかどこかで真似したいと思います。
増築の数寄屋テイストの空間は、今回ご紹介いたしませんが、チャンスがあれば、是非とも再度見学させて頂き、勉強させていただきたいところです。
チャンスとは、紀州材をしっかり使うことから生まれるはずですね。