投稿日:2016年05月16日

【重要】熊本会場 カリキュラム一部変更のお知らせ


住宅医スクール2016、熊本スクールでは、講義内容を一部変更してお届けします。

なお、日程、会場には特に変更はございません。

1.7月9日 1日目 【変更前】第4講義 住宅医改修事例を語る-① 大角雄三氏

→【変更後】熊本地震の構造的被害①~調査分析報告 大橋好光氏(東京都市大学工学部建築学科教授)

2.8月27日 2日目 【変更前】第4講義 住宅医改修事例を語る-② 山辺豊彦氏

→【変更後】事例から学ぶ耐震補強~耐震補強の基本とコツを学ぶ ※講師に変更はございません

3.9月17日 3日目 【変更前】第3講義 木造建築物の耐久性能と維持管理方法② 中島正夫氏

→【変更後】木造建築物の耐久性能と維持管理方法②~木造住宅工法の変遷と木材の劣化と震災被害 ※講師に変更はございません

4.9月17日 3日目  【変更前】第4講義 インスペクションの現場から 栃木 渡氏

→【変更後】熊本地震の構造的被害②~調査分析報告 槌本敬大氏(国立研究開発法人建築研究所材料研究グループ 上席研究員)

5.10月15日 4日目 【変更前】第4講義 住宅医改修事例を語る-③ 横内敏人氏

→【変更後】熊本地震と伝統木造~伝統木造被害の調査分析報告 古川 保氏(すまい塾 古川設計室㈲代表取締役)

6.11月26日 5日目  【変更前】第4講義 温熱改修プランニング演習 辻充孝氏

→【変更後】熊本地震の構造的被害③~調査分析報告 五十田博氏(京都大学生存圏研究所教授)

7.12月10日 6日目  【変更前】第1講義 設備の劣化診断と対策 清水基之氏

→【変更後】震災時の復旧方法(住宅設備を中心に)~被災住宅の復旧の現場から学ぶ ※現地関係者(予定)

8.12月10日 6日目  【変更前】第4講義 住宅改修事例を語る-④ 安井昇氏

→【変更後】震災と火災~都市部の震災と火災の研究最前線 ※講師に変更はございません

9.1月21日 7日目 【変更前】第1講義 契約実務の留意点 中尾太郎氏

→【変更後】契約実務の留意点~災害時の補償の実務を学ぶ ※講師に変更はございません

10.1月21日 7日目 【変更前】第4講義 住宅改修事例を語る-⑤ 南雄三氏

→【変更後】ライフラインが停止した時の温熱環境~断熱性能で変わる室内温度の調査結果から ※講師に変更はございません

住宅医スクール2016熊本カリキュラムFIX改編後

 

投稿日:2016年05月11日

事例報告(改修事例)2016-56


黒埼の家 改修事例報告

報告:宮崎建築 宮崎直也

 

 

・設計 監理  宮崎建築 宮崎直也

・施工 宮崎建築

・設計期間 2014.6~2014.9

・工事期間 2014.10~2015.1

・所在地 新潟市西区

・築年数 1975年(昭和50年)築40年

・構造、規模 木造2階建て 延床面積:101.72㎡

 

□お施主様の要望、課題

・築40年の建売住宅の改修。

・屋根、外壁共に劣化あり。改修が必要な時期に。

・設備や内装も傷みが見られリフォームを検討。

・耐震性に不安があり、必要があればリフォームに合わせ補強をしたい。

・冬、とにかく寒くトイレやお風呂に行くのも大変。

・冬、窓面の結露がひどい。

・子供さんが独立され現在はご夫婦のみの生活。使用していない部屋もあるがリフォームするべきか。

・リフォームの補助制度などあれば活用したい。

 

□改修の方針

・屋根、外壁は建築当初のままでこれまで改修はしていない。今回の工事で屋根葺き替え、外壁貼り替え。

・耐震診断を行い評点が低い場合は耐震改修を行い評点を1.0以上とする。

・断熱改修は水廻り、リビング、寝室などを中心に生活スペースをゾーニングして行う。

・断熱区画はサッシを高性能品に交換。暖房、換気も同時に計画をする。

・2階はほぼ物置としての使用なので内装や断熱仕様は現状のまま。耐震補強のみを行う。

・新潟市の耐震改修の補助制度を利用する。平面図 既存1F

 

平面図 既存2F

平面図 既存

平面図 改修後1F

平面図 改修後2F

平面図 改修後

断熱ゾーニング

断熱改修ゾーニング

□現地調査

既存外観

既存外観

ポーチ柱劣化あり

ポーチ柱劣化あり

小屋裏にて筋交い寸法を確認

小屋裏にて筋交い寸法を確認

小屋裏筋かいを確認、断熱材は無し

小屋裏筋かいを確認、断熱材は無し

床下、根がらみ無し、束の寸法も小さい

床下、根がらみ無し、束の寸法も小さい

各室の入口は30~40㎜の段差あり

各室の入口は30~40㎜の段差あり

 

 

 

□補強工事

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解体はほぼ手作業にて行う。既存のまま工事をしない箇所を傷めないよう神経を使う。

 

 

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屋根の葺き替え工事。既存瓦を撤去しガルバリウム鋼板に葺き替え。

屋根材を軽くすることで耐震性能を向上させる。屋根構面は合板により補強。

 

 

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耐力壁直下を中心に基礎を補強。重機が入らないため基礎工事もほぼ手作業。

手作業の場合工期が通常よりも掛かりコストも割高になる場合がある。

 

 

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基礎アンカー増設、柱頭柱脚などの接合部は金物補強、合板による耐力壁の増設。

耐震診断の結果をもとに根拠を明確にし補強。

劣化箇所は交換、梁せいが不足な箇所は補強。

 

 

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床下は防湿シートを敷き込み砂で押える。床を撤去しない箇所は床下から断熱材を施工。

 

 

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(左)床、壁の取り合いは先行して防湿シートを施工。確実に気流を止める

(右)新規床組みの箇所は新築と同様の施工方法。

 

 

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ゾーニングをしての改修のため1階天井、2階床の間も断熱、気密処理が必要になる

施工者の技能、知識とも高いものが要求される。

 

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断熱材施工、気密シート張り。天井はロックウール吹込み。

天井裏は既存配線など凹凸が多いので隙間なく充填できるブローイングを選択することが多い。

改修の場合は特に天井の気密処理を慎重に行う。

 

 

竣工写真

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□改修を終えて

・耐震性 工事前の最少評点は0.08であったが改修工事後は1.24まで向上した。

・断熱性 熱計算ソフトによる算定Q値は工事前13.9 工事後2.2となり断熱区画は新築住宅並みに断熱性を高めることが出来た。

・バリアフリー 床改修を行うことで各部屋の段差を解消できた。

 

黒埼の家改修工事では屋根、外壁の更新のタイミングと重なったため耐震性、断熱性を向上させる工事が比較的容易であった。

耐震改修は新潟市の補助制度を利用することで耐震診断判定会の意見を聞くことが出来、補強計画を立てるうえで参考になった。

断熱改修は熱計算ソフトを利用し費用対効果が最大になるよう各部位の仕様を決定した。

ゾーニングをしての断熱改修は初めてのケースだったが大きな問題なく終えることが出来た。温熱境界部分で処理が複雑になる箇所があり、現場での指示や施工図など今後工夫が必要と感じた。

 

 

お引渡しが冬だったこともあり「とても暖かくなった。」と喜びの声をいただいた。断熱性を高めることで冬でも戸を閉め切る必要が無く開放的な暮らしが出来るようになったことも満足度の向上につながったと考える。

耐震性の向上は日々の暮らしの中で実感することは少ないがいつか訪れる地震への備えができたことの安心感は大きいと考える。

 

 

 

投稿日:2016年05月10日

住宅医コラム 意見交換2016-66


古く素敵な建物が、簡単に壊されることを阻止するためには、どうしたらいいのでしょうか? そのためには、まず、壊されずに残り、愛されて使われている建物を、大いに誉めて、古い建物を壊さず大切に使うことが「誉められること。」と、多くの人に認識してもらうことなのでは? と考えました。

今月の、誉めコラム「改修建物を訪ねて」は、住宅医スクール講師でおなじみ、小谷和也さん設計のマンションリフォームによるお住まいです。

 

 

「改修建物を訪ねて~その5

木のマンションリフォーム~小谷さんの手法を探る

三澤文子(MSD)

 

数年前、小谷和也さんのお名前を、編集者の真鍋弘さんから教えて頂いて初めて知りました。「関西でこんな人がいるけど、知ってます?」と、真鍋さんはセンスのよい冊子を見せてくれました。2010年 私が音頭をとって発行をした「木の家リフォームを勉強する本」に掲載する事例をリストアップする作業で、「マンションリフォームの記事をしっかり入れたい。」という真鍋さんの意見があり、彼自身が小谷さんのHPを見つけたのでした。この本の、編集作業まで手伝った私は、ゲラの過程から小谷さんの仕事のおおよそを知り、「このかたには、すぐに住宅医スクールの講師になって頂きたい。」という思いから、今にいたります。

お陰様で、何十回というほど小谷さんの「マンションリフォーム」の講義を聞き、マンションリフォームの設計を警戒していた私が「やってみたい。」と思うようにもなりました。なぜ警戒していたかというと、それは近隣の音問題です。長閑に戸建ての木の家をつくるのと違い、むこうみずなことをするとタイヘン。という思いがあったからでした。その思いを解消してくれた内容は、住宅医の講義にありますので、ここでは割愛いたしますが。

 

 

さて、5月になったばかりの晴天のある日、運よくリフォームしたばかりの、小谷さんの自邸に伺うことが出来ました。

きめ細かく考えられた細部と、床、壁、天井の構成と素材感。清々しいという表現が当てはまる住まいでした。

 

IMG_3228 写真提供 小谷和也氏

 

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たとえば、窓のサッシは取り換えできないのが、マンション特有の設計条件のひとつですが、そのような「マンションなので諦めよう。」といったことに、あきらめない提案をしています。そして、その手法が、親切で且つ、いい感じなのです。

外部サッシも、内窓(既製品サッシ)で性能を上げ、さらに端正な障子で、シックなインテリアに変化させています。あえて真壁風の柱を設けていますが、90㎜角の細い柱で、憧れの軽やかさなのです。構造体でないので、細い柱や薄い壁がいくらでも可能。ふと前日訪れた京都の茶室を思い出しました。

 

 

床、これが講義で聴いた無垢の厚さ30㎜の杉板です。遮音性能を、実験を通して研究をかさね、無垢の杉板を使用するなら乾式二重床がベストをいうことも教えてもらいました。小節で赤み勝ちの吉野杉。スリッパ無しで暮らせます。

 

 

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天井は杉板と、白の珪藻土塗りの構成。構成の一要素になっている梁型がむしろ好い存在になっています。さらに、間接照明を上手く仕込んで、杉に色味を与えています。2重になった杉板天井の色味の差ができて、杉板の様々な顔を楽しませてくれていますね。

 

 

IMG_3225 写真提供 夏見諭氏

いよいよ、気になっていた台所や水廻り。お気に入りというモザイクタイル。色違いでトイレにも使っていました。ステンレスパイプも親切で且つ、いい感じです。

 

 

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洗面台の収納は内部にもコンセント。親切で、且ついい感じ。隙間利用の工夫は、界壁のコンクリート壁で十分感じます。いかなる空間も使い切る意志が見えてきます。

 

 

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もうひとつ変えることのできない玄関の鉄扉。ここも講義で聴いていたので、しまわれていた横格子の網戸を引き出してみました。この日は5月でも暑い一日。鉄扉は開け放していましたが、鍵付きの格子網戸で風通しの良い住まいになります。

 

 

マンションで諦めていることを、いちいちかなえてあげること。それは住まい手さんがワクワクすることなのではないかと思います。丁寧な設計手法が見て取れる住まいでありました。