投稿日:2015年08月03日

事例報告(改修事例) 2015-47


S邸「減築して豊かに暮らす」

報告:篠田三起子/㈱創造工舎 設計室

物件概要

■所在地:奈良県橿原市

■構造:木造軸組2階建て

■築年数:築42年(S47年7月)

■延べ面積:現状 150,25㎡  改修後 129.2㎡

■設計・施工:㈱創造工舎

■補助金活用:奈良県橿原市 「既存木造住宅省エネルギー改修補助事業」+「住宅耐震改修補助事業」

■工期:118日

■家族構成:夫婦

依頼者様は60代ご夫婦。

亡くなったご両親が建てられた家に住まうご夫婦は、2人の娘さんも嫁がれ、これから先の夫婦の生活を新たにスタートさせるきっかけにリフォームを希望された。

主な要望

○明るく、風が通る室内

○娘家族(孫)が遊びに来たくなる環境(大勢で食事がしたい)

○暑い、寒いを解消したい

○耐震的にも安心したい

○バリアフリーにしたい(両親の介護では苦労したので)

○収納を充実させたい

○趣味の部屋もほしい

○西日が強い

○車は2台止めたい

○庭いじりをしたい

 

改修前:外観(北西)  改修前:外観(南西)           

        ▲改修前:外観(北西)               ▲改修前:外観(南西)

 

改修前:台所  改修前:居間            

          ▲改修前:台所                  ▲改修前:居間

013現状配置兼平面図  09診断結果レーダーチャート_S邸         

         ▲現状平面兼配置図             ▲レーダーチャート
調査からみえた計画

3世帯当時、家族人数に合わせて増築を繰り返した歴史があり、そのたびに採光、通風も悪くなり、いつしか住みづらく、又老朽化も進行している状況があった。まずは建物調査の結果より、建物の健全化を盛り込んだ計画とした。

 

 

劣化状態

床下は蟻害、土台腐食も散見され、現場調査時、外気温26°床下湿度63%、木材の含水率は42%、土の状態も悪く、カビ臭があり体によくない環境であった。下屋のつなぎは雨漏り跡あり、外壁にクラックも数箇所散見。

特に状態が悪かった水廻り付近はすべて減築し、採光と風通しの確保、趣味の土いじりができる空間へと計画しました。

又防湿工事を行い床下の通気、湿気対策の計画を盛り込みました。

 

改修前:床下1  改修前:床下2

                       改修前:床下

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        改修後:床下

 

 

耐震性

一般診断にて既存評点は0.43から1.0を目標に計画。調査を進めると増築されていたつなぎ部分の軸組みの不具合、また床梁のメンバー不足等も見受けられたため、新たに基礎補強、軸組み補強、柱頭、柱脚の金物の追加、2階床を剛床へと補強等他耐震計画を進めた。

市の「住宅耐震改修補助事業を活用」

 

160計画基礎伏図  CIMG8018            

        ▲計画基礎伏図

113計画2階床伏兼小屋伏図  梁補強箇所         

       ▲計画2会床伏兼小屋伏図

 

170耐震補強計画平面図SANYO DIGITAL CAMERA SANYO DIGITAL CAMERA         

        ▲補強計画平面図

 

維持管理

適切な箇所に点検口を新たに設置、給排水は更新、ヘッダー配管を採用した。

会社独自の顧客管理システムにて、定期点検情報を提供できる仕組みをおこなっている。

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水廻り設備の付近に床下点検口を設置         

 

省エネルギー (5地域)

壁は土壁で、床・天井は断熱材の痕跡はなく、窓はアルミ+単板ガラスであった。

1階床は高性能フェノールフォーム(熱抵抗2.36㎡.K/W)を選択。壁は土壁の隙間を充填した上で、可変透湿機能性能を持つ防湿・気密シートを選択。外気に面する天井は高性能GW24Kt160mmを追加した。窓、開口部はすべて入れ替え、複層Low-Eガラスを採用。特にリビングとなる西面の窓は遮熱ガラス+通風雨戸を採用。

※壁の断熱対策は不十分であるが、優先順位の高い部位から選択した。市の「既存木造住宅省エネルギー改修補助事業を活用」

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                         2階の小屋裏全体に断熱材を敷設         

 

断熱断面_改修前 断熱断面_改修後

     断熱断面_改修前          断熱断面_改修後         

 

 

 

バリアフリー

ご両親の介護を経験され、室内の段差や動線に苦しまれたご夫婦。将来の備えの希望にはリアリティーがあった。

傾斜が急な階段の架け替え、1階の敷居段差の改善、玄関框高さの調整、通路巾の改善、その他玄関戸開口巾の拡張、手すりなどの設置。

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  ▲改修前:傾斜の急な階段  ▲改修前:玄関の段差

 

防耐火性

キッチン等は化粧ベニアから石膏ボードへ

火災報知機の設置他など

 

光と風

北・東・南を隣家の建物や塀に囲われ、採光は前面道路側の西面からしか得ることができなかった。ご夫婦2人の暮らしの間取りを確保しつつ、劣化が進んでいた北面は減築して土いじりの希望をかなえ、通風の環境も整えて、西面の開口部は遮熱ガラスと通風雨戸を採用し明るい間取りを可能とした。(又、度重なる増築により違法建築となっていた建築面積も健全化させることができた)

 

安全性

改修前は、玄関を出たら3歩で道路と、頻繁に帰ってくるお孫さんや愛犬の飛び出しは大変危険であった。

改修後は、減築した北側からのゆるやかなアプローチをとり、玄関の西日を柔らかくもしてくれる格子のポーチを新たに設置した。

 

間取りについて

基本的にご夫婦2人が1階で快適に暮らせる間取りを念頭に、近隣に住む娘さん家族も集えるリビングを。

リビングの小上がりは、日常は昼寝ができる大きさのタタミベンチ、法事の再にはふたをして、と簡易な「ハレとケ」を可能にする可変空間をめざした。

又、趣味の部屋である書斎や、畑道具が多いご主人のためのシュークローゼットを備え、2階は子世帯が泊まれるゲストルームとした。

リフォーム2年後「シニア世代の1階まるごと性能アップリフォーム」は「大変使いやすく、時間がたつほど値打ちがわかる。将来の不安が解消された」との感想を頂いている。

112計画平面図

 

改修後:LDK LDK2 LDK3

                            改修後:LDK

 

改修後:玄関ホール 改修後:外観           
      改修後:玄関ホール                改修後:外観