現場製作の木製建具の熱貫流率を計算する方法!適判対応計算根拠保存版。コラム2026年1月

豊田 保之住宅医 /トヨダヤスシ建築設計事務所京都府

住宅医協会理事の豊田保之です。
本年もよろしくお願いいたします。

さて、2025年4月に建築物省エネ法が改正され、新築住宅でも建築確認申請時に外皮計算書や一次エネルギーの計算書の提出を求められるようになりました。省エネ申請は、仕様規定で進める方もいれば省エネ適判とする方、また、長期使用構造等である旨の確認書を取得して進める方とさまざまです。そんな中、昨年末に数人の実務者の方から現場製作の木製建具(玄関ドア・引戸)の熱貫流率の求め方について質問を頂いたので、計算方法を紹介したいと思います。

 

1、資料ライブラリーから該当資料を探す。

まずは、省エネ計算演習講習会テキスト​(標準計算ルートの解説)戸建・木造軸組工法テキストのP59を参照ください。(リンク先:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/04.html
ここには、日本サッシ協会の資料からドアの性能値を求める方法の記載があります。手っ取り早く評価がしたい方は、この方法で読み取るのが早いです。ただ、この資料は、枠と戸の仕様は木製の選択肢がなく、又、計算結果は丸めて安全側に評価されるようなので正確に計算したい方は注意が必要です。

2、現場製作の木製建具(玄関ドア・引戸)の熱貫流率の計算結果

結論から先に提示すると、

熱貫流率は、日本サッシ協会WEBSITEにある「17-0701 住宅用ドアの断熱性能評価方法について平成29年7月」(以下、17-0701資料とする)の表から導き出せます。(リンク先:https://www.jsma.or.jp/useful/technology/

計算は単純で、(1)戸はその他、(2)枠は木製、(3)ドア内ガラスあり、(4)ポストなしという仕様であれば、「UD=0.134×Ug+4.79」という計算式を解くだけです。Ugは、ガラスの熱貫流率です。ガラスの熱貫流率を個別の仕様で評価したい方は表2の計算式を使うことになります。又、決められたガラスの熱貫流率で選びたい方は表4を見ると確認できます。
(※計算仕様:掘込錠シリンダ×1、掘込錠シリンダ+角芯×1,ポストなし)

 

3、ガラスの熱貫流率Ugを調べて計算する。

先ほどの表2の計算式「UD=0.134×Ug+4.79」で進めたい方は、使用するガラスのUgを下の表から選択し、計算式に代入します。
もし、トリプルガラス(ダブルLOWE-G6)を使用するのであれば、熱貫流率は1.4W/m2・Kなので、
0.134×1.4+4.79=4.9776  ∴4.98W/m2・K(第3位切上)がドアの熱貫流率になります。

※省エネ適判で使用する木製建具の計算根拠の説明としては以上で説明が可能です。さらに、詳細な計算根拠を知りたい方は以下をご覧ください。

 

4、木製建具(玄関ドア・引戸)の計算根拠 JIS A2102-1とは?

この図は、「17-0701資料」にあるドアの計算に使われているJIS A2102-1の計算式です。記号がたくさん並んでいて難しく感じますが、数値を順番に代入すればいいだけなので、それほど複雑な計算式ではありません。注意点としては、錠の種類と数、ポストの種類によって点熱貫流率χ(カイ)を足す必要があります。

注意点としては、JISで定められている計算式に、Σlg・ψpを別途、足す必要があるようです。

 

5、木製建具(玄関ドア・引戸)をJIS A2102-1で解く。

下図は、JIS A2102-1の計算式に注釈をつけて色分けしたものです。表4、表5、表6は、建築研究所の資料から抜粋しています。計算は、ドアの面積・寸法に関わらず、戸・枠の種類に応じて、表4、表5、表6にある値を代入し解いていきます。この計算は、仕様(各部位)によって定められている数値が違うので、エクセル等で計算するのが簡単だと思います。(※注意:JIS2102-1には、+Σlg・ψpの記号がないので追記して計算しています。)

 

6、木製建具(玄関ドア・引戸)の熱貫流率を求める計算式(1)

まずは、各部位の熱損失を計算します。前述の表4、表5、表6で該当する数値を使い、「面積A(又は長さI)×U値(ψ値)=熱損失」 を計算していきます。仕様は、以下の通りです。
(1)戸は金属製又はその他、(2)枠は木製、(3)ドア内ガラスあり(LOWE-A10)、(4)ポストなし、(5)掘込錠シリンダ×1、掘込錠シリンダ+角芯×1,ポストなし。

熱損失の結果は、木製ドアであっても、パネルの熱損失が一番大きくなることがわかります。


※右欄の集計は、小数点第3位四捨五入をしている関係で、ドアの熱損失の計の数値が若干かわります。

 

7、木製建具(玄関ドア・引戸)の熱貫流率を求める計算式(2)

前述で計算した各部位の熱損失を下図の計算式にそれぞれ代入していくと、ドアの熱貫流率を求めることができます。
計算結果は、5.06W/m2・Kとなり、最初に紹介した計算式「UD=0.134×Ug+4.79」の結果と同じ値になることがわかりました。

 

8、大部分がガラスの框ドア、引戸の熱貫流率は?

大部分がガラスの木製建具(框ドア、引戸)は、「大部分が透明材料で構成されている開口部(窓等)」で評価が可能です。先ほど紹介した資料や計算式は、大部分が不透明部材のドア(引戸)の場合だったので間違わないように注意が必要です。
木製建具(框ドア、引戸)は、最低基準の6.51W/m2Kになると審査機関から指摘を受けた場合、この資料を提示して説明してみるのが良いでしょう。

 

9、まとめ

今回、現場製作の木製建具(玄関ドア・引戸)の計算方法とその根拠を紹介しました。審査機関から計算根拠を求められた際は、今回紹介した計算式を提示してみましょう。最初に紹介した簡易的評価では、数字がまるめられて6.51W/m2Kになるため、17-0701資料にある計算式を利用した方が有利です。

一方で、6番の計算で、ドアパネルの熱損失が9.65W/Kと、かなり大きいことがわかりました。これは、戸の種類に木製という項目がなく「金属製又はその他」を選ぶしかないからです。現実は、面材が木材になり、断熱材も充填されると、もっと数値がよくなるはずですが評価ができないようです。評価ができない色々な事情があるのでしょうけど、なかなかもどかしいものがあります。

木製建具(玄関ドア・引戸)は、メーカー製の建具だけでなく、地場の建具屋さんがつくる建具も多く存在します。今後は、地場の建具屋さんがつくる建具も正確な評価できるように願いたいと思います。

文章 豊田保之
©Toyoda Yasushi , jutakui


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