投稿日:2017年06月08日

事例報告(改修事例)2017-69


滋賀県「甲賀のいえ」改修事例報告
設計者:MSD/三澤文子
報 告:佐治あゆみ
所在地:滋賀県甲賀市
主用途:一戸建ての住宅
築年数:築100年以上(詳細は不明)
規 模:木造2階建て
建築面積:167.63㎡ (50.71坪)
延床面積:259.20㎡ (78.39坪)
着  工:2016年1月
竣  工:2017年2月
(工事期間13ヶ月)
長期優良住宅化リフォーム推進事業採択
今回の改修報告は2015年7月に詳細調査を行った築100年以上の民家です。
過去の調査報告はこちら↓↓↓
http://sapj.or.jp/syousaichousa2015-51/

△改修前の外観                 △改修前の内観
甲賀市は忍者の里で有名な場所。風情ある瓦葺きの立派な民家が多くあり、趣がある風景の一角に「甲賀のいえ」があります。今回の改修は築100年以上の母屋を息子さん家族へと引き継ぐための全面リフォームです。

 

△改修前1階平面図                     △改修前2階平面図

 

【改修計画】
玄関・仏間・和室・縁側は既存の雰囲気をできるだけ残し、北側のキッチンダイニング・水廻りは使い勝手よく今の生活にあったプランに変更しています。また道路境界ぎりぎりまで迫っていた西側の建物の一部を撤去する事で南庭と北庭の通路を確保しています。

△改修後1階平面図

△改修後2階平面図

【解体工事】
詳細調査にて蟻害や腐朽の確認を行いますが、解体後に分かることも多くあります。
改めて材寸や劣化具合を確認し、劣化している材は撤去、構造計画も再度確認します。

△解体中の様子
【基礎工事】

△土台据えの様子
捨てコン打設後、まずは土台を鋼製束で支えながら据え付けていきます。
住宅医スクールの講義にて紹介されている工法です。

△配筋の様子
既存基礎に新規基礎を抱かせて補強する方法もありますが、
ここでは、既存基礎を全て撤去し、新規に配筋・コンクリートを打設しています。

△コンクリート打設後の様子

【屋根工事】
既存の母屋・桁・棟木等は残し、それ以外は撤去しました。
耐震性等を考慮し、土葺き瓦から桟瓦葺きに変えています。
新規垂木の上に構造用合板を張って屋根の水平構面を確保しています。

△屋根解体後の様子

△新規垂木の上に合板張り

△外張断熱:フェノバボード(ア)90
耐震性能を確保すると共に、外張り断熱で断熱性も向上します。

 

【躯体補強工事・耐震改修】
既存建物の耐震要素は土壁がメインで、壁も少なく低い耐震性能でした。
既存3間続きの部屋を残しながら、新たに構造用合板で耐力壁をつくり耐震性を高めています。

△躯体補強の様子
腐っている柱・梁は撤去の上、新しい材をいれています。また構造耐力上必要な材やプラン上必要な材も追加しています。

 

△接合部検査の様子
構造計算をお願いしたTE-DOKの河本さんと田畑さんに現場へ来ていただき接合部検査を行っていただきました。改修は新築と違い、梁も柱も成型ではなく、規定通りにはいかない事ばかり。。。
構造の専門家に現場を確認してもらい、職人さんも交えて補強方法を相談できるのは大変嬉しい機会です。

 

【竣工写真】(左が改修前、右が改修後)
□北側外観
既存の趣を残しながら、雨仕舞を考慮して一部屋根の形状変更をしています。

 

□南側外観
南側の開口部は木製建具(ペアガラス)に格子網戸をつけています。

 

□玄関
敷台は既存床の間で使用していたケヤキ板を再利用。

 

□和室
既存の軸組・天井・建具を利用しています。

 

□ダイニングキッチン
息子さんご家族の生活に合わせ、リビングダイニングキッチンを一体とした広々した空間に変更しています。

 

□リビング
リビングの床は栗。茶色の部分は栗に漆塗りです。


□2階
既存の小屋組みを生かした空間。写真はキッチン上部吹き抜けの様子です

 

100年以上の歴史がある民家。
蟻害や腐朽も多く確認されましたが、劣化している箇所は治し、趣ある雰囲気を残しながら、今の生活に合わせた全面リフォームとなりました。
「新しい家に建て替えるのではなく、古い建物を生かして住み続ける」
改めて素敵な選択肢だと感じる機会となりました。

1年以上という長い工事期間の中、多くの方のご協力があり無事に完成する事ができました。
詳細調査にご参加いただいた皆様、改修工事にご協力いただきました皆様、本当にありがとうございました。

佐治あゆみ

投稿日:2017年05月15日

調査事例紹介2017-63 福井県小浜市


小浜市発心寺 詳細調査
報告:戎野朗生(エムズ建築設計事務所)
物件概要
■所在地: 福井県小浜市伏原
■調査日時:2017年4月10日(月)、11日(火)
■構造規模:木造2階建て
■延床面積:約1800㎡(調査範囲は内、約360㎡)
■築年数:不明(江戸時代後期と推定)
福井県小浜市で詳細調査を行いました。
今回の調査依頼は福井で活動されている住宅医の山田健太郎さんが受けているお仕事(お寺の保存・改修)への参加協力でした。500年ほど前に創建された歴史あるお寺の本堂や庫裏を修繕するために必要な現況調査です。

(上)庫裏外観

(左)本堂外観

(右)方丈外観

 

 

(上)庫裏内観

 

今回調査範囲が約360㎡と広範囲に及ぶことから作業量も多く見込まれましたが、一泊二日で少人数による調査とすることで、内容の把握がしやすく、庫裏と方丈それぞれの棟を一貫して調査することができる方法をとりました。

 

(左)開始前の挨拶   (右)調査準備

お寺が運営されている平時に調査を行いますので、調査を始めるに当たり、お寺の方に調査の概略や作業時間についてご説明し、お邪魔にならないよう確認をとることから始まります。
調査内容の確認などのミーティングを迅速に行い調査開始。事前に調査道具を班ごとに分けておくことで、すぐさま調査にかかれます。
今回は①劣化、②設備、③仕上、④採寸・バリアフリー、⑤床下、⑥二階床・小屋裏、⑦ヒアリング・矩計の7班、合計13名となりました。
住宅医の山田さんと一緒にお仕事をされているお二方、今回の改修の監修をされている大学の先生にも入って頂きました。

(左)庫裏:床下の様子  (右)方丈:床下の様子

 

(上)方丈:基礎のひび割れ
床下調査:庫裏と方丈で建築年が異なるため、床下の形式はそれぞれ異なっていました。庫裏は玉石によるもので、床組の多くは修繕されていましたが、修繕されていない古い部材が残る箇所には蟻害の痕跡が多く確認されました。
対して方丈は無筋の布基礎で出来ており、換気口周辺にクラックが散見されたほか、高低差のある敷地で、低い地盤側へ傾くことで生じたと思われる大きなクラックも見つかりました。

(左)庫裏 外部:木部の雨染み    (右)方丈 外部:外壁のサビ

劣化調査:建物の劣化状況を目視にて確認します。風雨に晒されおこる経年劣化が全体的に見られました。また、土壁の剥離や板金のサビなど、雨水が内部に侵入し躯体の腐朽要因となる劣化も見られました。

(上)庫裏:食堂の小屋組

 

 

 

(左)方丈: 2階小屋組   (右)方丈: 2階床調査の様子

 

小屋裏調査:庫裏の小屋組みは30㎝前後の丸太梁が掛けられており、小屋裏空間も広く、架構の確認が容易に行えました。ススで黒くなった梁には腐朽は確認されず、含水率も10%前後で安定していました。方丈の小屋組みや2階床梁は角材を用いた架構で、天井板を外した場所からの目視となりました。水染みなどが確認されたものの腐朽は確認されませんでした。

 

最後には全員で掃除をし、調査で生じたゴミや埃を残さないようにします。
二日にわたる調査も無事に終え、成果物(野帳)を住宅医山田さんへお渡し終了しました。
今回の調査では報告書の作成は行わず、野帳を基に実務でそのまま活用いただきます。
調査にご協力いただきました皆様ありがとうございました。
Ms 戎野

投稿日:2017年05月09日

事例報告(改修事例)2017-68


花小金井の家改修事例報告
報告者:設計事務所サイク 佐藤裕希子

設計監理:設計事務所サイク 佐藤裕希子
工事期間:2015.9-2015.12
所在地:東京都花小金井市
構造:木造軸組2階建て
建築時期:平成元年
延床面積:89.84m2(増築9.93m2)
補助:長期優良住宅リフォーム推進事業採択


■概要および改修に至った経緯
もともとは都心の賃貸住宅に居住していたものの、子供の成長を機に長く住み続けられる住居の相談に来られました。当初は新築での相談でしたが、自分たちの予算で手に入れられる住居は限られてくるため、より良い立地・住居を求め中古住宅の改修も選択肢のなかに組み込むことで実現しました。
敷地が小金井公園の南東に面しており、一年を通して四季を感じられる場所であることを施主が大変に気に入られておりましたが、施主の奥様が戸建てに居住したことがないことで冬の寒さや中古木造住宅の耐震性能を心配されておりました。

<01_改修前平面図>

<02_改修後平面図>
■改修内容
まずは施主が抱いている不安(耐震性能・温熱性能)を取り除くこと、既存プランの使い勝手の改善を改修の主目的として設計を進めていきました。打ち合わせを重ねるなかで、施主の表情に物足りなさを感じとりました。そこで将来的な改修案という形でリビングの増築を提案したところ、施主の強い希望により本工事で増築が可能となりました。リビングを敷地形状に合わせた形で台形とし、サッシ幅も広くすることで公園を内部へと取り込みました。また、施主夫婦は自宅で別々の仕事をしています。奥様の仕事場をダイニングとリビングを見渡す箇所に配置することで、家事や育児をしながらの仕事が可能となり、ご主人も希望であった個室の仕事場を得ることが出来ました。
他、住宅医の調査をもとにした性能向上は下記の通りです。

<耐震性能>
一般耐震診断の評価0.75→1.0以上を確保。
基礎は一部にクラックがあったものの、鉄筋探査によると有金で状態も良好。図面通り筋交い(金物有)も入っており、柱頭柱脚金物も設置してありました。耐震診断の評価をもとに筋交いの追加と柱頭柱脚金物の追加。1階床全てと2階床オーバーハング部に24厚の下地合板を設置。

<温熱性能>
断熱等性能等級4確保。断熱材は全てやり替え、外部開口部のアルミサッシ全てを複層ガラスに取替え、玄関戸も木製断熱戸に取替え。

<バリアフリー>
1階床は下地合板からやり替え、2階床はフローリング張替えにより全ての部屋にあった段差を解消した上、階段は段数を増やすことで、勾配を軽減。
<劣化対策>
屋根は費用に見合わなかったため、洗浄後塗装をするのみになったものの、外壁は補助金を得ることで全て通気工法でやり替え。

 


<03_住宅医調査01>
<03_住宅医調査02>
調査人員は6名の少数精鋭で1日の調査。調査後は診断レポート作成時と解体工事後、竣工後の3回に渡り調査を行った者による報告会を開催しました。

 

 


<04_改修前外観>


<05_改修後外観>

<06_改修前ダイニング>

<07_改修前リビング>

 

 


<08_改修後ダイニング>

 

 


<09_改修後リビングダイニング>


<10_改修前和室>
 


<11_改修後和室>
当初予算をはるかに超える提案であるにもかかわらず、設計趣旨を理解し、高い価値を見出し実現したことがこの敷地でしか得られなかった改修へと繋がりました。今回設計には含まれなかった2階への便所の設置など将来を見据えた話を施主と出来たことも、住宅医としての今後のかかわり方を考えるきっかけとなり感謝しています。