投稿日:2015年09月08日

事例紹介2015-51 滋賀県甲賀市


甲賀市N邸 詳細調査

報告:日野弘一 / MSD

物件概要

■所在地:滋賀県甲賀市
■調査日時:2015年7月11日(土)
■構造規模:木造2階建て
■延床面積:約294平米
■築年数:築100年(詳細不明)
忍者の里、滋賀県甲賀市で詳細調査を行いました。

 

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調査建物は築100年以上の立派な建物です。

 

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調査員が揃い、住まい手さんに御挨拶をします。
そのあと、調査内容の確認等ミーティングを行いました。
今回は①採寸、②設備、③仕上、④劣化内部、⑤劣化外部、⑥床下、⑦二階床・下屋、
⑧小屋裏、⑨ヒアリングの9班、合計25名による大規模な調査となりました。

 

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(左)ヒアリング:住まい手さんから建物の基本情報・メンテナンスの履歴・各性能に
関係する住まい心地などを確かめます。
建物を見るだけではわからない情報がわかることもある大切な調査です。
(右)仕上調査:仕上材の種類・厚みを調べます。可能な限り下地材まで確認をします。
建物の耐震計算、また温熱性能の計算のために欠かせない調査です。

 

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(左)劣化調査(外部):建物の外回りに発生している劣化事象の確認を行います。
壁のひび割れや屋根の老朽化など、位置と状況をプロットしていきます。
(右)劣化調査(内部):内部の劣化状況も確認をします。写真は建物の床の傾斜を
計測している様子です。今回はレーザーレベルを使用しての調査です。

 

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(左)バリアフリー調査:床や階段の段差、また開口部や廊下の幅など、建物のバリアフ
リー性能を調べます。畳間は板間との間に小さな段差が多く注意が必要です。
(右)設備調査:電気・給排水設備の配管経路などを確認します。
また設備の劣化状況・維持管理のしやすさなど、細かく調べていきます。

 

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お昼休みの様子です。
今回はお庭にあるガレージのスペースをお借りしてお弁当をみんなで食べました。
調査員25名となると写真でも多いことがわかります。自己紹介をした後、調査の進捗
具合を報告しあい午後の調査に臨みます。

 

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床下調査:玉石基礎で、地盤面は土です。湿度がとても高く、木材の含水率も非常に高い
状態になってしまっています。またそれに伴った劣化が各所に見られます。位置、状況を
記録し、内部の劣化事象との関連性を検証できるようにしておきます。

 

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(左)二階床調査:今回は二階床の調査可能範囲が狭くなっていました。可能な範囲で
二階の和室の床をはがしたり、一階の天井の隙間などから調査を行っています。
(右)小屋裏調査:小屋裏は物置のようになっていて床板が張っていました。そのため
歩いて侵入し、部材の確認を行えています。小屋裏の部材には虫害の跡と思われる欠損が
目立ちました。また屋根の野地板が劣化してきていることを確認しました。

 

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多くの調査員の方のご協力をいただき無事に調査を終了しました。すでに住まいの診断
レポートとしてまとめ終わり、住まい手さんへの報告を済ませています。この調査で得た
記録を使うことで、無理なく適切な改修計画を行うことができます。
皆さんありがとうございました。

MSD日野

投稿日:2015年09月01日

事例報告(改修事例) 2015-48


「筑紫が丘の家」~2世帯で長く住まうための改修計画~

報告:澤木久美子/アトリエ空一級建築士事務所

 

物件概要

■所在地 神戸市北区

■地域  第一種低層住居専用地域

防火地域指定なし

■建蔽率 50%

■容積率 100%

■建築年 平成2年1月(改修時築22年)

■構造・規模 木造在来 2階建て

■敷地面積 55 ㎡

■建築面積 68㎡(41.8%)

■床面積

面積表

■主な外部仕様

屋根     コロニアル葺

外壁     サイディング張り

開口部  アルミサッシ(シングルG)

 

立地条件

・神戸市北区の郊外型の住宅地

・六甲山の北側で標高が約372 m

・市内より3~4℃気温は低い

・夏はあまりクーラーを使わない

・冬はかなり冷える

・南隣家が迫っている

・西が前面道路、東は水路と擁壁

航空写真UP

 

 

改修の与条件

・息子家族(夫婦+幼児)との同居=相談時独居

・とにかく寒いので何とかしたい(床暖房を希望)

・リビングダイニングが暗いので何とかしたい

・細かな段差をなくしたい

・浴室の寒さとカビを何とかしたい

・できれば対面キッチンにしたい

・駐車場からのアプローチの段差をできるだけ解消したい

=車いすやベビーカーが通れるように

・2階にもトイレが欲しい

・耐震性や漏水の心配が無いようにしておきたい

 

 

現況の調査・把握

「男ヤモメに〇〇がわく家ですが・・・」とのお電話の言葉に覚悟して伺った。奥様が亡くなられてから、「掃除も炊事も最低限のことしかする気になれなくて」と過ごしてこられた様子。

今回の改修は、ご長男家族との同居を決められ、「私は書斎兼寝室が1室あればいいんです」と。

ご長男御家族(打ち合わせ期間にお一人増えて、4人家族)も一緒に打ち合わせを進めた。

筑紫が丘の家(改修前1階)

 

1階

・南に隣接する住戸の陰になり、リビングは日当たり乏しく、薄暗い

・ドア下の沓摺が段差となって障害

・床下は特にキッチンの下が湿っぽく、配管の漏れも見られた

・浴室周りは確認できなかったが、在来であるため腐朽を予測

 

筑紫が丘の家(改修前2階)

 

2階

・一番日当たりの良い南の部屋が納戸として使用され、窓も小さめの腰窓のみ

・廊下、階段、納戸部屋と2階の中心が効率悪く使い勝手が良くない

・バルコニーの排水が悪く、階下に過去雨漏りの痕跡有り

 

 

間取り変更

 1階     書斎をご主人の個室とするべく、畳床をフローリングとし、リビングとの間に壁を設置

キッチン周りを一部増築して、対面キッチンを実現

浴室は在来を撤去して、ユニットバスを設置

1階改修後平面図

(赤は、改修開口部と耐震改修対象壁、水色は増築部分)

 

2階     玄関上部の吹き抜け部に床を設け、トイレを増設

廊下と納戸の間の壁を撤去し、子供家族がフリーに使えるホールとした

子供室は将来分けられるように、入口は2箇所設置

2階改修後平面図

(赤は、改修開口部と耐震改修対象壁、水色は増築部分)

 

 

劣化対策

屋根     高圧洗浄+塗装

屋根高圧洗浄前 屋根洗浄後

(現況)                                                    (高圧洗浄後)

 

外壁     洗浄+塗装、コーキング入替                 破風・鼻隠し    取替+塗装

外壁コーキング入替前 破風・鼻隠し入替

 

 

1階床下地       入替(大引、根太)                    浴室周り          下地入替、柱継

1F床下地入替 浴室周り:柱継

 

 

 

耐震補強

耐震補強(現況1F

 

改修前 1階 (赤い点線は2階)

 筋交いケサ(1.5)

 筋交いタスキ(3.0)

当初の壁量計算では、建物から外部に出た袖壁も含まれていた。これを入れて一般診断した結果は評点【0.76】となったが、除いた場合を試算すると【0.45】と不安な数字となった。

耐震補強1階

 

改修後 1階 総合評点 1.10

改修は、袖壁を考慮に入れず、新規壁で補強を行い、特に2階の乗る南東角を強くすることを意識して壁を配置した

 

耐震2階

改修前 2階

 

耐震補強2階

改修後 2階

2階も1階と同じく、袖壁は耐震壁として換算せず、3ヶ所の新規設置壁でY方向を補強した

 

 

 

断熱補強

断熱補強

 

改修前 Q値 7.5(Q-pex既存評価方法による)

改修後 Q値 1.99

 

開口部  新設窓=アルミ樹脂複合サッシ+普通ペアガラス 熱貫流率 3.49

既存窓=全てに内窓樹脂サッシ+普通ペアガラス 熱貫流率 2.33

(既存アルミ+シングルG算入)

 

既存天井・壁(GW10K、t50)                       セルロースファイバー充填

現況小屋裏(断熱) 工事中2F壁(セルロース吹き込み後)

 

既存床下(スタイロフォームt25)                      根太間 EPS t75 充填

現況床下(断熱) 床断熱工事

 

気流止め                                                          (乾燥木材 設置後)

現況土台周り 工事中土台周り(気流止施工後)

<室温実測結果>

元々あまり暖房されない暮らし向きのようで、室温としては低めだが、温度変化が少なく断熱効果は充分発揮されている結果となったようだ

WADA温度実測グラフ

 

 

 

昼光利用

2階の既存腰窓を床までの縦滑り出し+FIX窓とし、2階床に開口を設け、1階の光天井となるよう、格子にポリカーボネート板をはめ込んだ

 

昼光利用

竣工6・2Fホール 竣工4・1Fリビング(採光天井)

2階の明かり採り窓と床開口                              1階リビング見上げ(光天井)

 

 

 

 

竣工3・1Fリビング 竣工5・1Fダイニング-キッチン

明るくなった1階リビング                                  対面キッチン

 

 

 

通風・日射遮蔽

竣工1・外観  竣工2・玄関

西日がよく当たるが、良い風も西から吹いてくる

既存の雨戸を、ブラインド雨戸に取替

玄関ドア横に通風窓設置

(外部固定ガラリ+木建内開きペアガラス扉)

 

 

段差解消

段差解消・ドアは引戸に

室内建具は基本的に引き戸とし、沓摺は撤去した

 

外構まわり

植え込みで行き来できなかったガレージとの間を、植え込みを撤去の上スロープとした

駐車スペースも広げて、2台分確保

 

リフォームを終えて

初めてご相談頂いてから、ゆっくり打ち合わせを進めている間に息子さん家族には二人目のお子さんが生まれた。家族の形態は日々変化するものであり、柔軟に対応できる住まいであることを念頭に置きながらのプランの提案となった。

長く安心して住まうために必要な耐震性やランニングコストの問題は、すぐに実感してもらえない部分もあるかもしれないが、暮らし方のアドバイスも含め、より快適に過ごしていただくためのご相談を今後も続けていきたいと思う。