投稿日:2015年01月09日

事例報告(改修事例) 2014-42


カンマキの家
トヨダヤスシ建築設計事務所 豊田保之

 

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■所在地:奈良県
■家族構成:夫婦、息子
■延べ床面積:103.09㎡(1階60.45㎡、2階42.64㎡)
■リフォーム面積:103.09㎡
■構造・規模:木造軸組、2階建て
■工期:2013年11月~2014年3月
■設計:トヨダヤスシ建築設計事務所
■施工:㈱じょぶ
■左官:豊田工業所

 

<概要>

この家は、阪神・淡路大震災後に新築された築16年と築年数が浅い住宅である。
洗濯機から物干場までが遠い、LDKの使い勝手が悪い、家事動線の悩みを日頃から抱えていた。加えて、耐震性に対する不安、暑い寒いが顕著であることを理由に、性能向上リフォームに踏み切った事例である。

 

調査のため、ご自宅に訪問したが、外観は、思っていたよりきれいで表向き不具合はなさそうである。しかし、小屋裏等に潜り家を詳細に調査してみると、筋交いには金物がついておらず、柱が未乾燥であったためか反りによるクロスのヒビ割れがあり、サッシも建て付けが悪くなっていた。断熱材も施工精度が悪く、所定の性能がでていない上、壁に充填されたグラスウールに黒ずみがあり、内部結露によるカビ、または、壁内気流による汚れによるものだと予想できた。

 

築30~40年経過した建物の耐震性が今の基準より劣るのはごく自然なことであるが、今回の事例では、築浅の物件でも詳細調査し性能を定量化することで、思ったより低い評価であったことがわかる。結果として「築浅であるから安心」と、安易に考えるのは危うさがあり、まずは、どんな建物でも詳細調査を行い、性能を定量化・診断し、その上で治療方法を提示するのが重要である。

 

<改修前の平面図>

改修前 平面図
<改修後の平面図>

改修後 平面図
 

【リビング】
改修前も落ち着いた色の内装だったが、昼間でも暗い室内となっていた。開口部を大きく取り内装に明度の高い左官素材を採用。暗い印象のリビングを明るく開放的な空間とした。
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▲改修前                      ▲改修後

 

【ダイニング】
室内は暗く、カウンター型で家族が向かい合うこともできなかったダイニングをテーブル型につくりかえた。また、窓の配置を考慮し、家族が明るい場所で食事ができるよう計画した。壁の仕上げは、鋼板の上に左官素材を塗っている。

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▲改修前                       ▲改修後

 

【キッチン】
改修前はリビングダイニングに背を向けて作業する形となってしまい、収納量も少なかった。キッチンから様子が見える対面キッチンとし、リビングからダイニングへの動線も整理した。
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▲改修前                                                                      ▲改修後

 

【夫婦寝室】
床座のライフスタイルに合わず、空間を有効利用できなかった和室と洋室をワンルームにした。南面・東面の開口部は、視線を遮りながら、断熱補強や日射量の調整が行えるように断熱ブラインドを設けている。
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▲改修前                       ▲改修後

 

<詳細調査の様子>

【2階床梁調査】
2階和室の床が少し傾いているため、床梁の状態を確認した。
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【小屋裏調査】
目立った雨漏りはない。断熱材はグラスウールが敷かれていた。
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【既存断熱材の状況】
断熱材の端部が閉じられていないため、内部が黒ずんでいた。
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<耐震性のための構造補強>

一般診断法により耐震診断を行ったところ、上部構造評点:0.16(倒壊する可能性が高い)という診断結果だった。調査時、筋交いに金物が付いていないことがわかったため、既存の耐力壁の補強をしながら、新たに鋼板サンドイッチパネルを用いて耐力壁を新設し、上部構造評点:1.17(一応倒壊しない)まで性能を向上させた。鋼板サンドイッチパネルは、所定の仕様とすることで3.4~7.5(kN/m)の壁基準耐力を付加できる。基礎は、ベタ基礎であるため補強は行わず、クラックが見受けられた箇所のみ、エポキシによる補修を行っている。

 

【釘留めされていない筋交い】
筋交いが釘で固定されず金物も付いていないことが調査でわかった。
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【内張りによる耐震断熱補強】
鋼板サンドイッチパネルを使い、外部は触らず内張りでの耐震・断熱補強を行った。
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<省エネルギー>

壁は、外周部の室内側から鋼板サンドイッチパネル35mm(熱伝導率0.019 W/(m・K))を張り、天井は高性能グラスウール16K110mm(熱伝導率0.038 W/(m・K))を二重に敷き、床にフェノールフォーム60mm(熱伝導率0.019 W/(m・K))を敷き込んだ。また、床下からの気流止めとして、グラスウールを詰めるなどして配慮した。開口部は、主たる居室をアルミシングルサッシから、アルミ樹脂複合サッシ・Low-Eペアガラスに変更し、断熱性の向上を計った。既存浴室は、内部からの施工が難しいため、外部から鋼板サンドイッチパネルによる外張り断熱を行いつつ、浴槽裏面に発泡ウレタンを吹き付けた。主たる居室の南・東面開口部には、ハニカム構造の断熱ブラインドを取り付け、断熱性の向上と日射遮蔽措置を行った。結果、Q値を4.95W/㎡・Kから3.17W/㎡・kまで性能向上させることができた。

 

【断熱ブラインドによる補強】
リビングの窓を天井いっぱいまで上げ、開口面積を大きくするとともに、断熱ブラインドで断熱・遮蔽措置を行った。
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【既存浴槽発泡ウレタン断熱補強】
既存浴槽の外側に吹付けし、湯が冷めにくくなるよう配慮した。
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【気流止め】
床下からの隙間風を防ぐために、余った断熱材を床の隙間に詰めている。
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【鋼板サンドイッチパネルの採用】
鋼板の間にポリイソシアヌレートフォームを吹き込んだパネル。表面が鋼板なので、壁内結露対策としても有効である。
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<レーダーチャートによる診断結果>

レーダーチャート
住まい手が気にしていた耐震性能、温熱・省エネルギー性能は、改修前と改修後の性能を見える化することで把握することができた。