住宅医コラム 意見交換2018-79

住宅医リレーコラム 2018年4月号
リレーコラムでは毎月住宅医協会の理事等による月替りコラムです。
4月号はNPO法人WOOD AC理事でスタジオすぅぷ一級建築士事務所
を主宰している塩田佳子氏のコラムです。

「床下点検ロボットを活用した古民家床下調査」
スタジオすぅぷ一級建築士事務所 塩田佳子
先日、友人から、古民家調査見学の誘いがありました。日々の業務で、調査することはあってもゆっくり見学することはほぼありません。
しかし、その時は、『床下点検ロボット「moogle(モーグル)」を活用した古民家床下インスペクションならびに、古民家の耐震性を調査するための古民家伝統耐震診断を実施』とのこと。
点検ロボット、開発されたのはもう10年近く前でご存知の方も多いと思いますが、私は実際の動き等を見たことがなかったためこれは良い機会と見学して参りましたので報告をさせて頂きます。
(耐震診断は別日で都合により参加出来きませんでした)
その前に、少し経緯を紹介します。友人達は「一般社団法人全国古民家再生協会」の支部を立ち上げ、この再生協会では古民家(築50年以上で定義している)の主にインスペクションを床下・耐震診断・古民家鑑定の3本柱で行なっています。3本柱を1人の調査員だけでは調査せず、3者(床下:現場サイドの大工等、耐震診断:建築士等、古民家鑑定:古民家鑑定士)で多角的に行い、個人の主観が入り込んで偏りがないようにしているそうです。
床下インスペクションにモーグル君(親しみをこめて君付け)が活用されています。モーグル君自体は、大和ハウス工業さんが、主にアフターサービスの定期点検用と、住まい手に床下状況をありのままお見せし安心してもらう目的で開発したそうで、ちなみに新車とほぼ同等の価格だそうです。
 

モーグル君:段差15cmはクリアできるとのこと、この敷土台を乗り越えました

調査対象の床下の様子(石灰がかなりまかれていますが、ずんずん進みました。)
 
実際の調査は、モーグル君が床下に潜入、操作の方がコントローラーで指示した方向へ行き交い、内蔵カメラで動画を中継し気になる箇所をズームして詳細を映像を見ながら確認する、といった流れです。
今回はお座敷にてプロジェクターとスクリーンを通して住まい手様も一緒に映像を確認しました。白蟻を心配されての床下調査だったそうですが、写真のような小口からの劣化はあったものの、白蟻被害は確認されませんでした。
 

スクリーンを通して住まい手様にも見やすい映像
 

劣化箇所をズーム 鮮明でした
 
大きな画像を活用しその場で住まい手に説明出来ることは、わかりやすく説得力もあります。
さらに、私達は防塵マスク着用で作業していますが床下は強い薬剤がまかれていることもあり、劣化がないことが明らかになれば床下へ潜る必要性が少なくなりリスクは軽減します。
また事前調査で床下の様子を確認することにも役立ちそうです。反面、映像を通す目視のため、少しの劣化でも気付くことが出来る熟練した調査員が必要です。
劣化があった場合、含水率計測や木材の残存確認のためドライバー指しや、劣化しそうだと思われる環境を肌で感じることや、温湿度計測の必要性も改めて実感しつつ、併用が出来るとよいと感じました。
また、調査に慣れてくると少人数で手早く済ますことが多くなりますが、立場の異なる調査員の配置、多人数調査で主観の偏りを取り除くという点も、初心にかえった気持ちで伺いました。
モーグル君は価格的にもすぐに入手出来るものではありませんが、どなたか、防塵カメラを搭載したオフロードラジコンでパソコンにデータ送信できるような床下ロボットを製作いただけないかな、と思いました。
私は機械が苦手なのでとても無理ですが・・・。