2025年1月「秘密基地ツアー」を行いました
住宅医スクールで「木造建築の防火」の講義をしていただている安井昇さん(桜設計集団一級建築士事務所代表)の秘密基地ツアーを行いました。
新年も明けて早々のまだ肌寒い時期に、八ヶ岳の麓にある秘密基地へ、住宅医関係者 総勢14名の参加者と共に伺いました。
天候に恵まれて雲一つない晴天。初めて訪れた秘密基地は、別荘地ではなく、集落に土地を探したという安井さんの話のとおり、周りに水田と蕎麦畑がある小高い丘にありました。
デッキはもちろん、キッチンからも雪化粧をした富士山が一望できます。今の時期は稲刈りを終えた水田ですが、時期になると水が張られ、水面に景色が映りこむと、桜設計集団スタッフの加來さんが教えてくれました。
私を含め初めて訪れる人もいるため、それぞれの自己紹介から始まり、建物の説明へと話は移っていきます。
秘密基地では、今では工事現場で見られるようになった石膏ボードやサイディングなどの建材を使っていないそうです。そのかわり安井さんがこれまで出会った職人さんや材料、設計方法がふんだんに込められています。木摺を打ち漆喰で仕上げをした壁。自分達で焼いた焼杉の外壁。その他、色鮮やかな大津磨きや艶のある天然乾燥材など様々な技術、材料を使っています。これらを展示するモデルルームであると同時に実験の場としても機能しているようです。
また、災害でライフラインが途絶えたとしても、生活できるよう自家発電システム(太陽光発電パネル+鉛蓄電池のバッテリー)や太陽熱温水器、調理や採暖として使用できる薪ストーブなど取り入れ、エネルギーの自給自足を図っています。
訪れた時は肌寒かった室内も、窓からはいる陽の光と薪ストーブで暖められた頃、昼食です。地元の美味しい豚肉、鶏肉を使った丸政のカツサンドと加來さんがつくってくれた野菜とベーコンの温かいスープをいただきます。
室内を温めるだけでなく、煮炊きにも使える薪ストーブ。広葉樹だけでなく、杉や桧などの針葉樹も使えるということで大活躍です。
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お昼を食べたあとは、外に出ていよいよ 火育実習です。
まず竹炭づくり。敷地内に生えていた竹を干したもので、事前に短く切り揃えて缶に隙間なくつめていきます。それを火に掛けしばし待つ…すると缶に開けた穴から可燃性ガスと共に火が出始め、火がきえていくと完成です。炭となった竹は少し縮まり、軽くなっていました。脱臭剤として使えるそうで、皆さん小袋につめて持ち帰りました。
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焼杉づくりは、3枚の杉板を四分の縄で縛り、三角柱を作ります。そこに下から火をつけるとすぐにパチパチという音と共に火が内部を上っていきます。煙突効果で火の勢いは増し、上から炎がゴォという音と共に噴き出します。板の隙間から赤い炎がちらりちらりと顔を見せる中、板の表面は触れると温かく、木の熱の伝わりにくさというものを実感しました。
最後は横倒しにして、三角柱を崩すと自然と火が消えていきます。これは、燃焼に必要な「空気、可燃物、熱」が三角柱を崩すことで「熱」が足りなくなり、鎮火するからです。
火がついたまま横倒しに。三角柱を崩すと自然に火は消え焼杉が完成
焼き上がった杉板と外壁に張った焼杉を見比べてみます。
基地が建ってから7年半経過したということですが、両者に色の変化が見られず、再塗装がいらないという話も納得。ただし表面が炭化しただけで内部が木であることに変わりはないので、耐久性が上がるわけではないとのこと。
12㎜の合板(左側)と屋根にも使っているガルバリウム鋼板(右側)をバーナーで背面から熱しています。防火上、ガルバリウムは不燃材であり安全ですが、両方に手を近づけるとそこには明らかな違いが…合板は触れますが、ガルバリウムの方は近づけるだけで精一杯です。木材の熱の伝えにくさをまたもや実感させられました。
実験場としての活用ということもあって、他にも木材の腐朽や雨樋など建築から7年半が経過した変化を実物を見ながら聞くことができました。最後はデッキにて集合写真を撮って解散です。
これまで講義で聞いていたことを目の前で体験することができ、充実した1日となりました。安井さん、加來さん、本当にありがとうございました。
■記:小森正和 Copyright©Society of Architectural Pathologists Japan