住宅医の改修事例№175 名塩の家 築24年目のメンテナンス工事
©Misawa Fumiko Ms ARCHITECTS
ある調査では、改修工事を考えるきっかけのトップが建物の老朽化。今、「住まいのメンテナンス」が注目されています。住まい手に寄り添ったメンテナンスを実践し、楽しまれている Ms建築設計事務所さんの最新メンテナンス工事のご紹介が叶いました。(住宅医通信編集部)
三澤 文子(住宅医協会 代表理事 /Ms建築設計事務所 主宰/大阪府)
今年4月末にお電話を頂き、ひどい雨漏りで悩んでいる旨をお聞きしました。そこで5月20日にお約束をして、おそらく、24年ぶりに名塩の家に伺いました。24年ぶりというのは正確ではないかも知れません。竣工後1年あまりは、植栽工事などで伺っていたのかもしれません。竣工後まもなくしてお母様が他界されたこともお聞きしていました。
30坪の小住宅。ご夫妻と娘さんの3人家族のための家でした。竣工当時、「住みやすい小住宅傑作集」(世界文化社)に掲載されて工事費の分析まで行なっていました。

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建設年は2002年。施工会社はすでに廃業しており、現在、仕事をリタイアされた娘さんKさんがお電話をくださったのです。「いままで忙しさから、家のことが気になりながら誰に相談して良いのか解らずに時間が過ぎてきました。この20年あまり、数回の台風で、かなり雨漏りがしたのですが、自力で応急処置をすることしかできませんでした。」
設計事務所に連絡していいものか?と思いながら、思い切ってお電話くださったのが4月30日。かなりの大雨でまた雨漏りがあり、それが背中を押した。とのことです。
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ここ数年、メンテナンス工事に力を入れていることもあり、まずは現場確認から始めました。
メンテナンス工事の施工全般を担当してくれる出口光洋さん(HARE建築工房)にも同行いただき
雨漏りの原因追求をしっかり行ないました。
スライドのメンテナンス工事キープラン図は、住まい手さんに対するメンテナンス工事の見積もりの説明にも大変役立つシートで、調査のあと確認して頂き、聞き漏らしたことや追加事項を加えたりして精度を上げていきます。

2階のメンテナンスキープランです。シート左上の写真は、通称「防水スペシャリスト」の東保之さん。
「原因を必ず突き止めてくれる。」と、出口さんが太鼓判を押すほどの頼もしさです。
2階にあった木製デッキのベランダは、すでに撤去されていましたが、かつてのベランダ廻りにも原因があるのかと厳しい目でチェックしている出口さんです。

そして図面に問題箇所を入れたキープランとともに、それをリスト化した「メンテナンス工事リスト」を作成します。キープランとリスト、そして見積書を作成して住まい手さんにお見せし、合意が得られたら、工事日程を決め工事に取りかかります。

上記シートには 上部にあかいラベルが付いていますが、その番号はリストと合致しています。ただ、今回わかりやすい順番で解説したいので、番号は順不同でありますことご勘弁下さい。
まずは、蟻害箇所のキープランです。シロアリ対策では、住宅医スクール講師の水谷隆明さん(阪神ターマイトラボ)にお願いすることで安心してくださいと、住まい手のKさんに説明しました。Kさんは薬学の研究者であったことから、私のつたない説明でほぼ理解くださいましたので、おそらく水谷さんとは直接対応して頂くことが適切であると判断しました。

蟻害のあった建物東のサービスデッキは、「同じ仕様がよい」。という住まい手Kさんの意向から、腐りにくいセランカンバツ材で造ってもらいました。大工さんに生きたシロアリを見せている水谷さんですが、表情は何やら嬉しそうにみえます。
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この敷地は高台にあり、南からの風が強いこと、特に今までの台風では南風が厳しかったことを住まい手Kさんが話してくれました。このような気候条件で片流れの弱点が明らかになってしまいました。

そこで片流れ屋根の最も高い部分の鼻隠しに大きめの板金水切りを取り付けました。そしてコーキングを十分おこなった上で軒先から桁まで被せるように軒天を張ることにしました。
7月末の猛暑が始まった頃の工事日でした。

実はこの4月に、1階の雨漏りがしたのでお電話くださったのですが、その原因はやはり片流れの屋根の、母屋が外壁からでている部分の付け根でした。

そこで母屋部分を始め、怪しい箇所は全て入念にコーキングを施しました。
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南のデッキは西南の角の柱の柱脚と、デッキ材3枚に腐朽が見つかりました。また、室内からデッキに出る掃きだしの木製ガラス框戸は、ペアーガラスであることから、とても重くなり、開けるのがかなり難しいことになっていました。

すでに施工会社が廃業していることから、これら建具を造った建具屋さんではない平尾さん(岡本建具店)に来て頂き、スムーズに開け閉めできるように直してもらいました。

そんなことで、改善されたデッキスペースは、屋根もしっかりある使い勝手の良い外部スペースとしてこれからも活躍してくれると思います。

障子の張り替え希望は2枚ありました。1枚は和室、もう1枚は玄関です。24年前は、あまりアクリルを使わなかったのか、住まい手さんが障子紙で。といわれたからなのか覚えていませんが、今回シミができたり、黄ばんだりしている障子紙を貼り替えたいとのこと。そこで片引き戸の和室の障子は、プロに貼り替えてもらうことにしましたが、玄関の障子は戸袋から取り出すのに大苦戦。平尾さんに来て頂き、やっと取り出すことができました。この障子は住まい手Kさんが自分で貼りたいとのことで、貼った後の入れ込みは、Ms担当の髙田颯斗君が無事に行なうことができました。平尾さんにしっかり教えて頂いたたまものです。
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玄関側の軒先の鼻隠しは、実は樋を隠す、樋隠し。これの腐朽が著しく、合わせて樋の勾配の取り方が芳しくなく、この樋隠しを取り替えて樋の勾配も直し、さらに落とし口と鎖樋のつなぎ目の改良も行なうことになりました。落し口廻りで大雨のときには水が激しく跳ねて、それが腐朽の原因であると考えられるからです。

樋隠しを取り替えて見違えた北側外観です。取り付けに苦労している出口さん。この樋隠しの塗装はMsスタッフの作業の成果です。
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玄関廻りの板壁や建具の塗装はMsの担当です。塗料は木材保護塗料ニューボンデン(大阪塗料)
この日はインターンシップ生も手伝ってくれました。
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浴室の壁と天井の桧板に少しカビがでていました。24年でこのくらいなら、かなり良好です。カビ取り作業が好きな私と、住まい手Kさんとでカビ取り作業を行ないました。作業後はミニペットボトルに入れた薬剤「かびすけ」を購入いただきました。
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ダイニングチェアーは、永田健一さん(ZOO)のクリチェアーでした。その1脚の座面がわれてグラグラしているとのことで作者の永田さんに修理をお願い。およそ1週間で、塗装もされた綺麗な姿で戻ってきました。
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最後はお父様のお部屋です。「90歳を過ぎてクーラーのないお部屋は厳しいです。エアコンを入れてはいかがですか。」とおすすめしました。それが猛暑になる寸前に設置工事がおわり、「セーフ!」
お父様は、この夏快適にご自分のお部屋で過ごされていたようです。ほんとによかった!
24年間メンテナンスに関わらなかったという反省から、学んだことが多い今回の工事でした。
設計事務所はメンテナンスに関わらない。と思われることのないように、これからは積極的にメンテナンス工事に関わっていることを発信しようと思いました。

メンテナンス工事がほぼ終わり、穏やかな気持ちでおやつを頂くほのぼのとした時間。家も健康で長生きするように、健康管理のお手伝いをしていきたいと思います。
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最後にメンテナンス工事費のまとめです。
■問い合わせの電話:4/30(木)
■最初の現場確認:5/20(水)
■防水検査:6/9(火)
■メンテナンス工事 7/17(金)~8/18(火):計 6日
資料・文章:Ms建築設計事務所 三澤文子
© Ms ARCHITECTS , Misawa Fumiko, jutakui
№175 名塩の家 築24年目のメンテナンス工事
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