各地の住宅医の日々№64 既存住宅調査と家財整理の関係性。新たな一歩で問題に向き合う。
目黒 剛志(住宅医 / Frosch住宅調査改修設計室 / 新潟県)
全国的な大雪に見舞われてから約2か月。
私が暮らす新潟県も新緑の季節がやってきました。
暖かく、新緑が美しい最高のシーズンです。

【 4月末の朝。自邸 緑道を望む住まい 食卓からの新緑の景色。】
既存住宅には「モノ」がある

【 昨年 改修工事を行った事例、築84年の元農家住宅。改修前は様々な時代の家財が混在しており、その裏側の調査は容易ではない。】
これまで改修工事をさせて頂くお客様に、下記の様なセリフを伝えた事があります。
「工事をするために〇月〇日までに施工範囲の片付けをお願いします」
「私たちが処分すると産業廃棄物扱いとなるため、お値段が高くなってしまうのです」
「箪笥などは廃木材として一緒に出すことも出来ます」
費用は事実であるし、「お客様のために」と思い伝えていました。しかし同時に「何か違う」とも感じていたのです。これではお客様の負担が大きすぎる。実際に「家財の片付けで家族が疲弊してしまって…」という言葉もありました。
特に築年数を重ねた住まいほど先代様の家財などが多いため、
・残す、残さないの判断が簡単にできない
・故人のモノとなると正常な判断が出来ないこともある
・単純に「不要なものをゴミとして出す作業」ではないということ
上記の様な事が、住まい手の心理的状況としてあると感じてます。
すべては「調査」と「整理」と「把握」から

【築84年 元農家住宅 before/玄関ホール】

【after/玄関ホール。漆塗りの建具、囲炉裏で煤けた2階床梁 を魅せる既存要素として残した】

【after/縁側の突き当りには、飾り障子とミシン台の居場所をつくった】

【after/1階洋室。以前は2階で埋もれていたお母様の嫁入り道具のタンス。捨てられることなく新しい居場所を得た。】

【before→afterこがね色の襖紙。残存していた部分を額装して、住まい手さまにプレゼント】
歴史を俯瞰すれば、住宅の在り方は常に変化してきました。
・借りる事が当たり前の時代
・とにかく住居が足りず「質より量」が必要な時代
・災害を機に性能変革がなされたり
・都市部では「住宅は投資」「住宅は負債」といわれたり。
そして現在。
コロナ禍、ウッドショック、ナフサショック、物価高騰、そして職人不足。
これからは「家を買いたいと思ったときに買えるのか」という時代かもしれません。
苦慮されている方も多いかと思います。
大きな時代の変化の中。
それでも住宅改修工事の根幹は、これから先の未来でも変わらないと思うのです。
それは、設計業務の肝となる「調査」と「診断」というフロー。
現況を「きちんと調査」して、「情報を整理」し、「正しく把握」することから始まる という流れ。
たとえ手段や手法が変化したとしても。
①既存建物自体の調査・診断
■そして同時に
②実家、空き家に溢れた先代が残したモノ
どちらも共通しているのは「現況を整理し正しく把握すること」が最初に必要であるということ。
そしてそれらは、住まい手にとって「並行して解決に導く必要」があり「相互干渉」している事象である。
■と言えると思います。
これらの「面倒な事柄」は、
価値の残るリノベーション よりも 安くて価値が継続しない新築 を選んでしまう住まい手の心理、引いては 社会の雰囲気 にも影響しているのではないかと私は思うのです。
Frosch住宅調査改修設計室として

©Frosch住宅調査改修設計室
私は約5年間、現在勤める株式会社大庄で性能向上リノベーションの実務における温熱・耐震設計と施工の実務などを、豊富な知識を持つ上司や協力業者の方々から学ばせていただきました。
今年、住宅改修工事を専門とした設計事務所「Frosch(フロッシュ)住宅調査改修設計室」として独立し、夏頃から本格的に始動します。
独立後は、既存建物の調査・診断・設計を主軸としながら
住まい手と既存住宅が抱える物理的・心理的問題を総合的に解決する事を目的としています。
B to C 業務としての 住まい手 への 提案設計業務はもちろんですが、
B to B 業務として 住宅改修工事の業務フローに「壁」を感じている地域工務店様や設計事務所様の役に立ちたいと考えています。
また、設計業務と並行して
・既存建物の片付けサポート
・既存建物の相続に関するサポート
を予定としており、7月中までにスキルのほか準備を完了する予定です。
片付けに関わることは、設計者にとってもメリットがあります。
① モノで隠れて調査できなかった範囲の事象が確認できる。(例:壁仕上のカビ、ひび割れ等)
②モノが整理される=「床面が空く」
■=連続していない 又は 床下高さが著しく低い床下空間の調査が確実にできる。
③ 住んでいた人・住んでいる人について知る事ができる。家は暮らしの器。建物自体とそこにある物をベースにした顧客とのコミュニケーションから、家とご家族の歴史や思いを知ることが出来る。などです。
まだまだ手探りではありますが、価値のある住宅改修工事を望む住まい手が、望む目的地にスムーズに到達できる様に伴走する設計者となれる様、これからより一層の研鑽を積んでいきたいと思います。
目黒 剛志
写真提供:株式会社大庄 , 図・文章:目黒 剛志
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LINK
住宅医の改修事例 №0144「緑道を望む住まい」目黒剛志 https://sapj.or.jp/kaishuujirei2024-144/


