各地の住宅医の日々№58「昭和をつなぐ土壁再生の小さな家」改修1年目の仕事と暮らし
川島 淳子 (住宅医 / 住設計室 / 静岡県)

昨年の9月から新しい拠点での生活がスタートいたしました。
築60年の叔母の空き家を減築・増築・フルリノベーションし、屋根の土を再利用した土壁の家です。詳しくは、2025年4月の「最新!住宅医の仕事」に掲載されておりますので、ご覧いただけたら幸いです。
引っ越した後、沁みついた生活習慣の身体の動きがぎこちなく、自分の家というより仮住まいをしているような不思議な感覚がありました。
普段お世話させていただいている住まい手さんもそうなのだろうか?住所変更がからむ色々な手続きなどまあまあ大変だわと、住まい手の体験ができました。
そんなバタバタしている中、12月には住宅医の検定会で物件を発表させていただきました。プレゼン資料を作るのは苦手でとても苦労しましたが「何を伝えるか」ということを整理できました。
設計コンテストへのエントリー
資料を作ったことで、ついでに何かコンテストに応募しようと思い「YKK性能向上リノベデザインアワード」と「日本エコハウス大賞」にエントリーいたしました。
驚くことに、両方ともノミネートされ、YKKでは「審査員賞」、エコハウスでは「自邸モデル部門の優秀賞」をいただきました。
日本エコハウス大賞は、ノミネートされた10社が審査員や実務者に向かってプレゼンをするという、住宅医の検定会とは異なる緊張感を体験しました。
いろいろなコンテストがありますが、私の場合、意匠よりも性能や環境への思いが強く、この建物は既存の経年美化を生かすこと。これが評価されたのかな、と思っております。事実、クライアントさんや実務者 数十人が自邸を見に来た際、内装の意匠や素材を全く変えていない2階の和室に「すごくいいね」と言われ、そのまま残して良かった~と今後の自信に繋がっています。
その後の仕事
改修の仕事は、今まで耐震補強工事の部分改修がほとんどでしたが、不思議なことに、引っ越しをしたあとは性能向上リノベの案件が増えています。
住まい手さんとの打ち合わせには、住宅医の調査パンフレットを持って詳細調査の意味と、耐震や断熱の重要性を説明しています。皆さん、「どこにお金を掛けるのか」「優先順位はどこか」と理解いただけます。限られた条件の中で、新しい暮らしにあった間取りを提案させていただくと、とても喜んでいただけます。やはり住み慣れた家に住み続けられるという喜びもあるのではと感じます。
住み心地
初めての冬は足元とテーブルの高さで温度差が2度あり寒さを感じショックでしたが、どうやったら改善できるか試してみよう!と思え楽しみにしています。
性能が良い家は、雨風の音が小さく静か、車の振動を感じることがない、冬場18度を下回ることがない室内でリラックスでき、乾燥も抑えられ保湿クリームの減りが少なくなったのには、びっくりしました。
食事をしながら庭を眺めたり、庭の花を部屋の中に飾ったりと、とても穏やかに過ごせています。
草取りをしていると散歩をしているご近所さんに「きれいにしているね」と声を掛けてもらうこともあります。
我が家は改修事例の一つに過ぎないですが、クライアントさんに良いとこ悪いとこを素直に体感していただける環境ができたことはとても有難く、丁寧な暮らしをしてこの建物を残してくれた叔母にも感謝です。

写真右:叔母のミシン台に庭の山ごぼうを飾る。写真下:ワークショップに来てくれた方達と職人さんへお礼のワイン会
文章 : 川島 淳子
Photo: Sho Ohata & Kawashima | Copyright © Kawashima Junko, jutakui
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・住宅医の改修事例 №0158「昭和をつなぐ土壁再生の小さな家」 https://sapj.or.jp/kaishuujirei2025-158/


