各地の住宅医の日々 №54 住宅医としての10年を振り返り

泉保 真史( 住宅医 / アイズリフォーム株式会社 / 熊本県 )

前職から離れ2年程岡山県の住宅会社リフォーム事業部立ち上げのお手伝いをしてきましたが、今年5月より熊本県の創業100年を超える総合建材商社 出田実業グループのアイズリフォーム株式会社で新たな取り組みをスタートしました。
久しぶりの熊本ですが、以前お世話になった会社もパートナー施工店の皆様にも暖かく迎えて頂いています。

以前書かせて戴いたコラムにある、「自適荘」の10年点検に立ち合いしてきました。


改修後10年目となる自適荘  写真2025年6月下旬

「自適荘」は大阪在住のお施主様が幼少期の想い出、夏休みを家族と過ごした時間を取り戻す為に、2014年に改修着手した築80年の建物です。
竣工後には熊本地震・コロナ禍もあり頻繁に来れる環境ではありませんでしたが、時間が許す限り家族と共に有意義な時間を過ごす家として使われています。
家は使わない時間が長くなれば、傷みが出てきます。
梅雨・台風・寒波・猛暑など日本の気候環境は年々大きく変化しています。

季節の移り変わりのタイミングで定期的に点検・風取り・草刈りなど行ってきましたが、今年はちょうど10年の節目となる為、前職の新産住拓の定期点検に同行しました。

床下の漏水・白蟻調査では異常なし。
屋根の点検はポールカメラを使用し確認。
屋根は日射による退色はあるものの、腐食等はありません。
雨戸鴨居庇と敷居をガルバリウム鋼板で巻いていますが、雨戸を長期間閉めた状態では湿気が溜まり、錆が出てきている箇所も見受けられました。笠木上部も同じく塩害の影響での腐食がでていました。
玄関木製引戸のレール・戸車はステンレスを使用していますが、虫等の汚れ詰まりで重くなる箇所があるようです。

外回りの点検では、周り縁の雨戸に鴨居下がりが要因で開閉ができない場所があり、調整を行いました。
漆喰壁は雨水の跳ね返りなどで当たる部分に剥離と苔・カビが付着。
敷地は、防風樹・防潮樹の意味のあるアコウの巨木と山の木々に覆われている為、落葉の影響を考え樋は着けていません。

内部はヤモリ・ムカデ・クモ・サツマゴキブリ・ゲジゲジなどの虫も多く侵入しています。ここにも生態系の連鎖がありますね・・・

 


季節の変わり目で行われる定期点検や草刈りと防風樹防潮樹の意味があるアコウの巨木

お施主様と相談し、今後は使用しない期間を民泊として検討したいとのことですので、運営会社に相談しながら進めていければと考えています。

住宅医として10年、様々な年代・構造・環境・施主の想いなど多様な状況に立ち会うことができました。住宅医スクールで学んだ知識が基礎となり、小規模のリフォーム希望のお客様へも、その相談の背景や要因についてお話をすることができるようになってきたかと思います。

現在弊社では、木造建築の大規模な改修相談は多くはありません。マンション改装や設備改修が主にはなっていますが、新たな事業として住宅医の取組を軸に進めていきたいと考えています。

写真 文章:泉保 真史
Copyright©senbo shinji , jutakui


LINK
・ 自適荘 ー住宅医によるストック活用型社会への取組みー GOOD DESIGN AWARD2015受賞