各地の住宅医の日々№52 静岡県袋井市より「どまんなかセンター(旧 中村洋裁学院)」戦後の建物から持続可能な まちづくりを目指して。

倉田 布美江 ( 住宅医 /倉布人一級建築士事務所 / 静岡県 )


撮影:淺川 敏 

私の住む静岡県袋井市は、東海道五十三次の27番目の宿場町で、日本の東西の「どまんなか」に位置します。
昭和の後半から区画整理が始まり、懐かしい面影を残す建物が次々と解体されていきました。画一的な街並みに、地方の個性が失われていく寂しさを感じていました。

20年ほど前、街の中心を流れる原野谷川のたもとに建つ、かつての洋裁学校と出会い、その建物の保存と活用が、私のライフワークとなりました。
昭和25年から、人々の往来を見守り続けてきたこの建物。この景観を守りたい・・・。

道のりは決して簡単ではありませんでしたが、この建物と、ここに集う人々との出会いが、私の人生を大きく変えてくれました。

建物が「ある」だけでは足りない・・・そう感じ、アーティストの力を借り「どまんなかセンター」としての活動が始まりました。
2010年のアートイベントをきっかけに建物が開かれ、地域の人々にも徐々に知られるように。
翌年の東日本大震災の際には、写真洗浄ボランティアの拠点となり、被災地に思いを寄せる人々との交流の輪が広がっていきました。

とはいえ、築およそ70年。建物の耐震性が課題でした。
隣接する公園でマルシェを開催するなど、袋井市と良好な関係を築いてきたこともあり、国の空き家対策事業による補助金を活用し、教室部分の耐震工事を行うことができました。

2017年には、国の登録有形文化財 および 袋井市景観重要建造物にも指定されていたため、外観を変えることはできません。
そこで、インナーフレーム方式を採用。1階の床を撤去し建物内部に基礎を築き、耐震壁と梁の補強を実施。耐震評点は0.1から1.03に。さらに公園側には新たに入口も設けました。


1階 教室の床撤去後 建物内側に基礎をつくる

基礎工事修了後 耐震壁、梁補強を行う


ようやく動き出せる──と思った矢先にコロナ禍が到来。思うようには進まないものです。
それでも、地域の大工さんをはじめとする建築仲間たちの力を借り、多くの方々のご協力のもとで、片付けやDIYによる仕上げ工事を進めていきました。
こうして、少しずつ建物は活気を取り戻していったのです。


 1階和室 大工さんや地域の方との修繕

1階和室 しっくい仕上げ

改修後 1階 公園側の入口

2階ホール 大工さんや地域の方とDIY工事

改修後 2階ホール

改修後2階ホール(イベントを楽しむ)


現在、1階には「袋井市すまいの相談センター」やお箏教室が入り、2階にはアーティストのアトリエも設けました。どまんなかセンターに心を寄せる皆様の支えで運営は継続しています。
2階の約50帖のホールでは、演劇公演、勉強会、蕎麦打ち、味噌づくり、アートワークショップなど、さまざまなイベントが開催されています。

今後も、地域とのつながりを大切にしながら、創造性あふれる、持続可能なまちづくりを目指していきたいと考えています。



毎年開催される「遠州ふくろいの花火」では、ホールの窓から花火を楽しむこともできます。
皆様もぜひ、「どまんなかセンター」(旧中村洋裁学院)にお越しください。

倉田 布美江
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