各地の住宅医の日々№50 想いを受け継ぐ ~古民家再生の現場から~

清水 誠二 ( 住宅医 /()新和建設 /愛知県 )

私は岐阜県や愛知県を中心に、古民家再生の仕事をしています。ほぼ毎日のように、古民家を見ています。リノベーションを考え始めたばかりのお客様との出会い、工事中の現場調査、そして完成してお引き渡し後も続くお付き合い——。そのすべてが、古民家再生のプロセスであり、そこには一つひとつの家に宿る「想い」があります。

この仕事をしていて最も大切にしているのは、「なぜこの家を残したいのか?」をお客様と共に考えることです。単に古い家を修繕するのではなく、その家に込められた歴史や想いをどう未来へつなげるか——そこが、古民家再生の本質だと考えています。

例えば、先日手掛けた築100年の古民家。そこは、お客様のご家族が代々暮らしてきた家でした。家族の記憶が詰まった空間でしたが、長年の風雨で傷み、住み続けるには不安が多い状態でした。「もう住めないかもしれない」と悩まれていましたが、「家族の歴史を絶やしたくない」「これからの暮らしに合った形で住み続けたい」という強い想いがありました。

そこで、私たちは家の持つ風合いを生かしながら、現代の生活に必要な快適性と安全性を確保することを提案しました。特に耐震補強や断熱性能の向上に重点を置き、冬でも暖かく安心して暮らせる住まいへと再生しました。細かなデザインや使い勝手の部分も、お客様と何度も話し合いを重ね、日々の暮らしにフィットする形へと整えていきました。


古民家再生工事中

性能向上改修 完成後

完成後、お客様から「これでまた家族と安心して暮らせる」と言っていただけたとき、この仕事の意義を改めて実感しました。単なるリノベーションではなく、「暮らしの記憶を未来につなぐこと」が、古民家再生の本当の価値なのだと思います。

これからも、お客様の想いに寄り添い、家の歴史を大切にしながら、新たな暮らしの形をつくっていきたいと思います。

清水 誠二
©Shimizu Seiji, jutakui


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