各地の住宅医の日々№10~ときがわの森と共に

勝見 紀子 (住宅医 / ㈱アトリエ・ヌック建築事務所/ 埼玉県)

写真:ときがわ杉材のタイコ梁と、組子建具

埼玉県に住み設計の仕事の拠点を置いて25年になり、設計する物件の殆どで埼玉県産木材を用いています。
他県に比べ平地率が高い(60%。全国平均は25%ほど)埼玉県で、山地と丘陵地は西部にまとまってあり、林業を基幹とした地域です。
西川材(飯能市)や秩父材が有名ですが、私が属する家づくりグループでは、ときがわ町に縁を得て「彩の森ときがわ協同組合」と共に様々な活動を行っています。
林業・製材業・木工業・建築業が主要産業の町で、都内からの小旅行に程よい距離のため散策・キャンプ・温泉・サイクリングなどで訪れる人が多いのも、ときがわの森の特徴です。

森の多くは人工林で、メインの材種は杉、ついで桧です。彩の森ときがわの特徴的な取り組みは、伐採した材を35℃という低温で行う加湿乾燥です。高温乾燥では失われてしまう木の粘り、芳香、美しい色合いといった木材の持つポテンシャルを損なわずに、木材強度や変形を左右する含水率をコントロールすることに成功しています。
物件ごとにときがわに出向き、製材・乾燥を終えた構造材を一本一本確認しつつ、含水率と簡易ヤング測定も行うのを恒例としています。

木材の簡易ヤング測定

軸組み構造の耐震性を担う水平構面に、合板を用いず、製材の小幅板を斜め張りすることで床倍率を確保する工法の開発にも関わらせていただきました。
その実験もときがわの杉材を用いて行いました。

床斜め張り構面の加力実験

またときがわは古くからの建具の町としても知られています。伝統技術である組子細工を用いた精緻な仕事のできる職人さんが、ときがわで育った木で質の高い建具を製作しており、先般はその組子建具を採用する幸運を得ました。
地域の木材を使っていくことを目指してスタートした設計活動です。ときがわとの関りを得たことで、木をより深く知り良さを生かしていく取り組みができるようになったと思っています。

建て主さんを伴い、大黒柱の伐採見学