非住宅 木造建築の低コストにつながる要素とは ~「すなわち木造住宅に習ってつくること!」 住宅医リレーコラム2021年11月

塩田 佳子 ( 住宅医 /NPO法人WOOD AC/ 岐阜県 )

現在、私が所属するNPO法人WOOD ACでは、岐阜県から中大規模木造の低コストにつながる情報をまとめたマニュアルの作成業務を請け負っており、関係者の皆様から貴重なご意見を頂戴している最中です。
中大規模木造の低コスト化ってどうすればよいの?中間報告ですが、その答えの一つは「木造住宅のように建てること」です。木材は一般規格材、金物は汎用性の高いもの(=一般住宅金物)、プレカット加工できる継手や仕口、住宅用サッシの使用・・・どれも木造住宅では当たり前のことが、中大規模建築では低コストにつながります。そしてもう1つ、低コストにつながる要素は、「木材量を減らすこと」です。
なあんだ、住宅は低コストでもうこれ以上は価格が下がらないのか・・・・とがっかりさせてスミマセン。下記の表をご覧ください。

ちょっと古いデータですが建築工事費の内訳です。木造住宅は設備等を除いた本体工事費が6~7割、そのうちの木工事が4~5割・・・つまり、全体工事費の約3割が木工事費。そのうち木材料費が半分と仮定すると全体工事の1.5割、2000万円の住宅だと約300万円が木材料費になります。仮に、木材量が1割減ると30万減額になります(実際はこんなに単純計算ではないですが)。木材を化粧現しにしたり、大断面材や定尺長さ超の木材使用、加工にこだわったりすると木工事費の割合がさらに増え4割程度となり、コストへの影響が増します。コスト削減のため木材品質を検討する方も多いと思いますが、同時に木材量を減らす検討も必要、となると架構(構造)から考えることが基本になります。
木造住宅では当たり前に取り組んでいることだ、と既にお気づきと思いますが、「木造住宅は研ぎ澄まされた低コスト木材活用手法」「木造住宅は既に低コスト」ということが改めて見えてきます。(やっぱりこれ以上木造住宅の価格は下がらないですね、スミマセン)

ですが、木材量を減らすことを目指し、究極寸法の木材を導き出して使いましょう、とは絶対に言いません。なぜならば、

  • 木材は自然由来の材料 強度にも個性があり、ギリギリの構造設計は危ない
  • 仕口等で欠損があり、それを全て見越した構造計算、現場監理は大変
  • 木材の燃えやすい性質は、木材を太く厚く使うことで延焼を抑える効果が増す
  • 住宅の長寿命化を目指すにあたり、ライフスタイルに合わせたプラン変更にも木材寸法に余裕があると対応がしやすい
  • 外部使用板張りなど、厚板仕様の外壁材は耐久性が増す
  • 近年、木材がもたらすリラックス効果はデータとして出てきており、木材現しは健康にも良い

等々。安心できる長寿命住宅には、それなりの木材寸法や木材使用面積、木材使用量が必要なのです。そして、せっかく木材を使うなら魅せたくなるのが木造設計者の常。全て隠してしまっては面白みもありません。
コストとグレードのバランスは、設計者の皆様の頭を常に悩ますところで、ウッドショックの影響もありより一層シビアな木造設計が求められますが、木材の規格寸法を意識しながら見せ場を作っていくことは、コストと空間の良いバランスにつながると思います。

作成中の低コストマニュアルでは、木材手配、木構造、防耐火、維持管理やメンテナンス情報等も掲載予定です。木材の使い方等で、改善の余地があったな、こういうことが原因で木材を早く傷めてしまったな、という事例を募集しております。内容が掲載に至った場合は弊社より心ばかりのお礼も考えておりますので、宜しければぜひ、情報をお寄せ下さい。
(塩田 佳子)


NPO法人WOOD AC http://wood-ac.com/