調査診断アラカルト 多様化する調査業務 2026年6月コラム
日野 弘一 (住宅医協会理事・住宅医 / WASH建築設計室/ 大阪府)
こんにちは。WASH建築設計室の日野です。
大阪府の吹田市。万博記念公園の太陽の塔のお膝元を拠点にして設計事務所をしております。
住宅医ネットワークの関西の担当をしており、調査の実施やサポートも行っています。
調査の仕事は自社の案件で年間十数件程度のことが多いです。業務の2割ほどを占めていると思います。
他にも調査の参加だけ依頼されていくことも多々あります。
最近の調査活動を徒然と書きながら、情報を共有できればと思います。
最近の調査の傾向
住宅医協会が推奨する「性能向上調査」として、劣化調査、耐震性、温熱性、省エネ、バリアフリー、火災時の安全性の六項目に加え、各種図面化の業務まで全て行う調査を私たちの調査の基本として据えております。
しかし昨今は人件費が上がってきた事もあり調査費用がどんどんと高騰してきています。全ての調査を行うことができる案件が減ってきているように感じます。そこで求められるのが必要な調査内容を見極めて、成果物を取捨選択して提案する能力です。さながら調査のアラカルトです。
ここ一年くらいで行った調査の内容をピックアップして整理してみました。面積・人数・予算感と成果物を参考にしてもらえたらと思います。
【Ⅰ】現況調査+耐震診断 270㎡(兵庫県)

©WASH建築設計室
耐震診断をベースとして、劣化調査を行いました。最近一番多い依頼内容だと思います。工務店からの依頼です。主屋と増築棟が構造的にある程度くっついているので「主屋」「増築棟」単体に加えて「主屋+増築棟」の3パターンで耐震診断をしているので費用がかかりました。
【Ⅱ】現況調査 + 耐震診断 124㎡(大阪府)

©WASH建築設計室
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耐震診断をベースとして、劣化調査を行いました。工務店からの依頼です。コストを抑えるために劣化調査は写真提出のみで、報告書として様式を整理していません。ただ調査の内容としては床下小屋裏も含めてしっかり実施しています。
【Ⅲ】現況調査 + 耐震診断 144㎡(大阪府)

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耐震診断だけの依頼です。吹田市に問い合わせをした方が吹田市の紹介で私たちに相談してくれました。耐震診断に必要になるので劣化調査を行いました。また床下、小屋裏も潜ってしっかりと確認しています。市役所で紹介している業者の単価に比べると高くなりますが、調査内容を説明することで実施を依頼してもらえました。
【Ⅳ】図面化業務 + 現況調査 190㎡ (広島県)

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建物の改修を計画する足掛かりとして既存の建物の図起こしが主な依頼でした。遠方という事もあり、二泊三日でできる範囲で逆算して成果資料を提案しました。既存図面がない建物の図起こしの調査も最近増えている気がします。この調査では棟が複数あったため、それぞれの棟で矩計図を調査しました。後々必要になれば立面図や断熱計算ができる情報を拾っています。報告書として整理はしませんでしたが床下・小屋裏の点検も実施しています。周辺に建物がない環境でしたのでドローンによる空撮も行いました。
【Ⅴ】現況調査 + 図面化業務 240㎡(京都府)

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既存建物の作図が一番の目的の調査です。工務店からの依頼です。作図調査のほかに工事に影響が大きい劣化調査を行いました。耐震診断については追々できるように情報だけ拾うよう依頼されています。
建物の規模が大きく、図面枚数も多くなったため費用が少し大きくなりました。調査内容を図面化をするのが調査費用に影響するなと感じます。
【Ⅵ】現況調査 + 耐震診断 + 図面化業務 198㎡(香川県)

©WASH建築設計室
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自社設計案件です。古民家を旅館にするための改修工事を計画しておりそのための調査です。遠方ということで一泊二日での調査でした。工事費に直結する劣化診断、耐震診断をメインに調査しました。各種意匠図・構造図・設備図が描ける情報の収集も行っています。作図作業は設計業務で行いますので、調査予算の中には含まれていません。既存の雰囲気を大きく残す改修工事では建具情報の収集が非常に大切になります。
【Ⅶ】ガイドライン調査 + 図面化業務 525㎡(京都府)

©WASH建築設計室
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確認申請の取れていない既存建物を確認申請が必要な規模で改修したいという案件です。いわゆるガイドライン調査を行いました。既存の布基礎の評価を電磁誘導法の調査で実施しています。これが40万円くらいかかります。他にも既存図面を一式作図まで実施したのでそれなりの金額になりました。
【Ⅷ】RC耐震評価 40㎡(大阪府)

©WASH建築設計室
確認申請が出ていないRCガレージの調査です。同じ敷地内に確認申請が必要な増築を行うにあたり、このガレージも適法にする必要が出てきました。そのために既存の状態を調査することになりました。
コンクリートの強度調査だけで40万円程度かかりました。構造計算も外注になり、小さな建物の割に費用が掛かった印象があります。
最近の調査の心得
調査診断をするとき、建物の悪いところを探すことになることが多いのですが、いいことを探すことを心がけています。調査を依頼する住まい手は専門家に愛着のある家を見られてドキドキしています。「この柱は大きなけやきで立派ですね」「和室の設えがこだわられていますね」調査を通じて建物の魅力を共有するで緊張の糸がほぐれる感覚があります。
また耐震診断の報告については不安を必要以上に煽らないよう気をつけています。大体の古民家は上部構造評点が0.1~0.2くらいになってしまいます。改修前提であればいいのですが、しっかりと改修できない場合でもそこに引き続き住住み続ける必要もあります。専門家が言う「倒壊の危険性が高い」という言葉はかなり重たい意味を持ってしまいます。
ですので報告の時に、「建物が建った時とは基準が違う」ことをお伝えしたり、本当にラフな状態で「このくらい補強したらこのくらいまで上がります」という計算書を提示することで不安を和らげるを心がけています。また本当に生命の危険がある場合はタンスの固定や避難しやすい部屋を提案するなどただ不安を煽るだけの報告にならないように気をつけています。
これからの目標
私は調査診断はトレーニングと同じだと思っております。今まで何百件と調査をしておりますが、今なお調査すればするだけ新しい知見・経験を得られています。これからも引き続き調査の業務をコンスタンスにこなしていきたいと思います。
また、住宅医協会に関わらせていただいていますので、住宅医スクール生の方々にも参加していただけるよう、ますます意識的に発信していきたいと考えております。住宅医通信での告知を期待してお待ちください(自分へのプレッシャーをかけておきます)。今後ともいい調査生活を送りましょう!
文章・資料:日野 弘一
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