「年をとっても楽しいよ」と言える暮らしは住まいづくりから 2026年5月コラム

村上 洋子 (住宅医協会理事 / 愛媛県・大阪府

一昨年、高齢者と住まいについてのコラムを担当した後、昨年は父が蜂窩織炎にかかり、介護認定の要支援2を受けるに至ったことを書きました。

今年のコラムの前に、まずお礼を申し上げます。昨年の通信の配信後すぐに、メール等でお心遣いをいただきました。ご連絡くださった皆様、本当にありがとうございました。その頃はとても余裕がなく、お返事を返せないまま1 年が過ぎてしまい、大変申し訳なく思っております。この1年間で支援体制が整って、ずいぶん楽になりました。さりげない気遣いの言葉には思いやりがこもっていて、これから私も、心に寄り添う一言をさらりと伝えられるようになろうと思いました。

3 年続けての話題になりますが、今年も父について書いてみたいと思います。高齢者のための住まいづくりに、少しでもお役に立てたら幸いです。

父は昨年4月に介護保険要支援2に認定され、今年3月には要介護1と介護度が上がり、4月からは週に一度、訪問看護師さんが来てくださるようになりました。引き続き週に2回デイサービスに通い、施設では自転車こぎや、天井から吊られたロープ状の器具を用いた運動を行っていますが、昨年に比べるとかなり体力が落ちてきました。そもそものきっかけとなった蜂窩織炎は、傷口から皮膚の深い層に細菌が侵入するので、白血球などの免疫細胞が休みなく活動し、この防御反応に膨大なエネルギーが消費されるそうです。父の場合は傷が癒えるまで8か月かかりましたが、この間は体調も安定せず、手のかかることが増え、こちらの気力がすり減るようなことが何度もありました。

今年は6月3日に室﨑先生の「高齢化社会の住まいづくり」の講義があります。これまでの講義で高齢者の住まいに大切なのは「可変性」と学びましたが、可変性の大切さを実感する毎日です。加齢により、身体のいろいろな箇所に現れる歪みや変形は、長年にわたる癖や習慣によるものが大きいそうです。父は円背(えんぱい・猫背が進んで背中が丸くなること)に加え、側弯もあり、かなり身長が低くなりました。全く認識していなかったのですが、腰はじわじわではなく、一気に、あれよあれよという間に曲がるのです。これは介護をしている方、何人からも聞きました。

円背になると、手が届く範囲が極端に狭くなります。レンジフードの本体についているスイッチには到底届かなくなりました。腰が曲がる可能性があると知っていたら、低い位置にスイッチを設けていたのにと悔やまれます。また、流し台は腰に負担がかからないように高さ90㎝にしたのですが、腰が曲がったことで顔が天板に近づき使いにくそうです。日常に使用するものを置く位置も下がったので、今年は思い切って不要物を処分し、模様替えを行う予定にしています。体形の変化は個人差が大きいため、使いやすさの一般的な正解がないことも、父を通して学んだことです。

2011年の性能向上改修で、バリアフリー化と寝室脇にトイレを設置したことは説明済みですが、これに関しては、本当にやって良かったと思う毎日です。高齢者等配慮対策等級5相当の形状のトイレの床には、TOTO製の大型セラミックパネルを敷いていて、掃除のしやすさに大変満足しています。というより、これを敷いていなかったらと考えるとゾッとします。
(写真:「外壁の杉板の余りはトイレの腰壁にしたらどうですか?」三澤康彦さんのアドバイスでした。手洗い器の横のスペースには、赤ちゃんのおむつ用ゴミ箱を置いています。)

父は相変わらず畳の生活を続けていて、いまだにベッドではなく布団で寝ています。立ち上がるときに足の筋肉を使うため、これも一種の筋トレととらえ、できる限り長く続けていく予定です。以前にも登場した座面高さ390のカラマツの椅子は、腰掛けるだけでなく、寝ている姿勢から立ち上がる時の補助器具としても、なくてはならないものになっています。針葉樹で座面がペーパーコードで軽いのも、腕の筋肉が落ちてしまった父にとっては扱いやすいようです。このお気に入りの椅子に座ってテレビを見ながら寝てしまい、椅子からころげ落ちてしまうことがあったのですが、畳がクッションになり事なきを得ました。介護保険を使った住宅改修で、滑り防止及び移動の円滑化等のため、畳からフローリングに変更が認められていますが、転倒した際の安全性を考えると、うちの場合は畳のままにしておきます。フローリングの素材と仕上げによっては、畳の方が滑りにくいので、比較検討の余地があるとも考えます。一度だけ、滑り止めのついた靴下を履いて転んだことがありました。その靴下は冬用のアクリルが多めのもので、購入した後でラベルを見て、大丈夫かな?と思った矢先に滑ってしまいました。すぐに捨てたのですが、事故につながらないよう着衣側の素材にも気を付けないといけないな、また、何となく危ないと感じるものは使わないようにしよう。と決めたきっかけにもなりました。

さて、ここからは自分のことを少々。手の指に長く続く痛みがあり、昨年ペインクリニックを受診しました。そこで偶然、腰に側弯があることがわかったのです!知らずにいたら父と同じになるところでした。座りっぱなしの時間が長く、猫背でストレートネック、いわば職業病ですね。加齢による背筋の低下も側弯の一因だということで、さっそくピラティスと軽い筋トレを始めました。すると最初はうつ伏せの姿勢から顎が5センチ程度しか上がらなかったのが、半年ほどで肋骨あたりまで持ち上がるようになりました。慢性の痛みは我慢しがちですが、身体からの警告をないがしろにしないことも、老後の生活の質の向上につながるのだと身をもって知る、良い機会になりました。

父を通して何を一番学んだかというと、病気を防ぎ老化を遅らせることができるのは、自分しかいないということです。父が62歳の時に妻を亡くし、それまではやったことがなかった家事を自分で行うようになったのが、これまで父が元気でいられた一因だと確信しています。そのため今は父の介護を行っているというより、父が自分でできなくなったことを、暮らしの工夫で手を貸しているという感覚です。これからも余計な手出しをせず、私の生活が第一という姿勢を崩さずに父を見守っていくつもりです。

まだまだわからないことだらけですが、老化現象に対応する改修を、身体に不具合が出てから行うのではなく、健康寿命を伸ばすために時間にゆとりをもって行うよう、住まい手に勧めていきたいと思います。私たち全員に訪れる老化ですが「年をとっても楽しいよ」と言える暮らしは住まいづくりから。まずは自分で実践します!

文章・写真:村上 洋子
©2026 Yoko Murakami , jutakui


LINK
・コラム「バリアフリー改修してよかった!89歳の父が蜂窩織炎になってわかったこと 」村上洋子 https://sapj.or.jp/column20250512/

・コラム「高齢者が安心して暮らせる住まい~実体験から学ぶバリアフリー改修のヒント」村上洋子  https://sapj.or.jp/column240710/
・2011年の改修(村上洋子) 改修事例 №0025〜父の家 改修工事 https://sapj.or.jp/kaishuujirei2012-25/
・住宅医スクール(第5回)室﨑千重先生の「高齢化社会の住まいづくり」https://sapj.or.jp/inquiry-application2026/