住宅医コラム 意見交換2018-85

住宅医リレーコラム 2018年10月号
リレーコラムでは毎月住宅医協会の理事等による月替りコラムです。
10月号はMs建築設計事務所代表の三澤文子氏のコラムです。

 

「中京・風の舎」が、住まいのリフォームコンクールにおいて、
国土交通大臣賞(最優秀)を受賞しました。

Ms建築設計事務所 三澤文子
初めてのマンションリフォーム。住宅医スクールの小谷和也先生の講義を何回も聴講し臨みました。それでも何回か初歩的な質問をする私に、小谷和也先生は「三澤さん本当に僕の講義聴いていたの?!」と言って呆れていましたが。 お蔭で、防音の2重床や、断熱方法などしっかり実践できました。今回の受賞も、住宅医スクールのお蔭だと心より感謝しております。
さて、マンションリフォーム「中京・風の舎」は、この名前が意味するように、マンション住戸では得難い通風に注目して、風の道をつくることを意識した計画です。京町家にある土間、ぬれ縁など、内部と外部をつなぐ空間を、集合住宅の住戸に取り入れました。住戸の共用廊下側の住戸巾いっぱいの玄関土間と、どのマンションにもあるベランダを、より室内化してぬれ縁空間としています。
 

 
これが 住戸巾いっぱいの玄関土間です。写真左手真ん中くらいに、玄関扉があります。住戸巾一杯の玄関土間。写真真ん中に見える扉は、土間の両側にある玄関クロークになります。
 

 
またこれが、ぬれ縁です。
ぬれ縁の桧板が室内の床レベルと段差無くつながるため、上足で外に出ることが出来、室内空間が広がると同時に、外部とのつながりが感じられる気持ちの良い空間になります。
外と内とをつなげ、このような調整空間がつくられることで、限られた窓しかないマンションの住戸でも、3本の風の道をつくることができました。

 

 
玄関の鉄扉を開けると、土間と玄関ホールが迎えてくれます。
本棚に囲まれた玄関ホールはベンチも備わってちょっとした読書コーナーです。
 

 
鉄扉の内側には、障子があります。風を通しながらも、内が見えにくくなっています。
 

 
玄関土間が、住戸巾いっぱいあることは、この写真を見ればわかります。メインの通路、(ここを廊下とは呼ばずにあえて図書室と読んでいますが)の右左に、入口があり、奥につながっている気配が感じられると思います。
 

 
これは、玄関ホールから土間を見返しています。
正面の住戸玄関は鉄扉を開けて、障子を閉めているところ。雪見障子ならぬ「風通し障子」です。
 

 
更に奥のキッチン側から見返したところ。写真真ん中ほどにピアノも組み込まれています。ピアノの横には水廻りに入る障子風建具があります。
 

 
ランマが無い親子建具は単に目隠し用。これも上部に風が通る工夫で、目線もとおり広がりが感じられます。
また、繊細な杉の建具や、コットンのカーテンは肌に優しく感じます。
 

 
ぬれ縁(ベランダ)に面したキッチンとダイニング。床は厚さ30㎜の漆塗りの杉板です。濡れ縁の向こうに帆布の暖簾が見えます。この暖簾によって、正面のビルの窓を隠すことができました。
 

 

 
最後に、今回是非実現したかった差鴨居を使った内装システムです。
1984年(34年前)かつて現代計画研究所にて担当した「集合住宅の木造的内装システムの提案」 当時は実現できませんでしたが、今になって俄然このテーマに燃えています。引き続き、「集合住宅の木造的内装システムでの改修提案」を行なっていきたいと思っています。