住宅医コラム 意見交換2017-75

最近の家は2階にトイレを設けることは当たり前になって、小さな家でもトイレが2つあることは標準のように思いますが、既存の住宅では、寝室のある2階にトイレの無いことが良くあります。60歳代のご夫妻で寝室が2階の場合、「2階にトイレを設けましょうか。」とお尋ねしますが、「まだまだ大丈夫です。」とのお返事があることも・・・今年は、健康にも直結する「トイレ」に注目して、住宅設計のポイントを抑えていきたいと思います。今月の、「トイレコラム」は、トイレの位置についてお話です。
 
 
 
「トイレコラム02」
トイレと寝室の関係 ~ 1階メイントイレの充実を。
三澤文子(MSD
 
 
最近の家は2階にトイレを設けることは当たり前になって、小さな家でもトイレが2つあることは標準のように思いますが、既存の住宅では、寝室のある2階にトイレの無いことが良くあります。60歳代のご夫妻のすまいで、2階に寝室がある場合、「2階にトイレを設けましょうか。」とお尋ねしますが、「費用もかかりますし、まだまだ大丈夫です。」とのお返事があることも。逆に50歳代でも、今まで何かしらの病気をされた方は、寝室の中にトイレを望まれることもあります。
 
 

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上の図は北東の寝室に併設するクローゼット周りにトイレを設けた事例です。「ホテルの客室のようなトイレを・・・」と言われてもスペース的に大きいトイレはつくりにくものの、いずれ高齢になってきて寝室にいる時間が長くなるようなことがあれば、介護のしやすいトイレが寝室の中に内にあることは、大変便利なことになるでしょう。
 
  
そこで、かなりコンパクトなトイレになりましたが、観音開きのドアのつくりにして、通常は片方のみを使い、いざとなったら観音開きに、というアイデアです。今のところは、掃除がしやすい。と喜んで頂いています。
 
 
 
さて、2階に寝室のある60歳代前半のご夫妻のお宅を改修させて頂きました。
2階にはトイレが無く、1階の玄関正面にトイレがあります。
 

改修前平面図(クリックで拡大表示)


 

玄関正面のトイレ。ドアの開口内法は565㎜、広さも畳1帖以下。


 
階段は急で、夜中にこの階段を下りて1階のトイレに行くのはなかなか辛いものがあると思い、2階にトイレの設置についてご希望をお聞きしましたが、「慣れているので、無くても大丈夫。」とのこと。「いずれ1階の客間を寝室にする時が来るだろうから。」とのお話でした。
確かに、この家に住み慣れているお二人で、夜中に頻繁にトイレに行くことが無ければ、2階にトイレがどうしても必要とは感じないのでしょう。このケースのように、いずれ1階に寝室として使えるお部屋があれば、あえて費用をかけて2階にトイレをつくる必要はないかもしれません。
しかしながら 1階の玄関正面のメイントイレは寒そうですし、トイレ自体が狭い。また、玄関を入って最初に目にするのがトイレの扉というのも、豊かさがありません。
 

改修後平面図(クリックで拡大表示)


 

開口幅も860㎜に。トイレの広さ(内法)1290㎜×1830㎜


 
そこで、玄関の位置をかえ、トイレも玄関ホールから廻りこんだ位置にして、将来寝室になるだろう、客間に近づけました。和室の客間は、南のリビングにもつながっていて、当分は茶の間のように使うことができます。
高齢になった場合、平屋で暮らすのがベストであることは間違いありません。2階建ての家に暮らす場合、10年以上先のことを想像して、1階のつくり方、つまり寝室に使える部屋とトイレとの関係も考える必要があります。
高齢に向かう方のお住まいでは、1階メイントイレの充実を目指したほうが良いかと思います。