住宅医コラム 意見交換2016-63

古く素敵な建物が、簡単に壊されることを阻止するためには、どうしたらいいのでしょうか? そのためには、まず、壊されずに残り、愛されて使われている建物を、大いに誉めて、古い建物を壊さず大切に使うことが「誉められるれること。」と、多くの人に認識してもらうことなのでは? と考えました。
今月の、誉めコラム「改修建物を訪ねて」は、岡山県倉敷市の「倉敷建築工房」です。
 
「改修建物を訪ねて」
古民家再生工房の影響力~楢村徹さんの活動拠点
三澤文子(MSD)
 
倉敷の町に入ると、気持ちが高揚してきます。古いもの好きの性分は、この町並みに浸るのが幸せで、目に入るもの全てが興味の的になります。
素敵な店の前を通ると、すぐに吸い込まれそうになり、ツアーのリーダーに叱られたり・・
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昨年11月、阪神淡路大震災を契機に開校したMOKスクール大阪の、フィールドツアーの企画で訪問した倉敷。私たちの大先輩、建築家・楢村徹さんの事務所や、楢村さんの手掛けた再生プロジェクトを見学することが目的です。(このような旅、是非、住宅医スクールの研修旅行として企画したいものですね。)
 
私が尊敬する楢村さんは 1987年に「甦える民家」として岡山県で実物大の展示を行ったことを契機に、建築家の仲間6人で「古民家再生工房」を設立。その活動は私たちのあこがれであり、目標でもありました。
そんな大先輩の楢村さんは、住宅医の活動にも注目してくださり、2年前(2013年)には、「古民家再生工房」の主催する勉強会に私を講師で呼んでくださるなど、交流を得ることができました。そんなことから2014年の住宅医スクール大阪では開講日のゲスト講師として講義を頂くことも出来ました。
 
さて、倉敷はいたるところに楢村さんが中心になった再生の活動の成果が見てとれます。楢村さんの事務所「倉敷建築工房」も当然改修建物。地主さんが、「楢村さんなら。」ということで貸してくださったとのこと。
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明快で力強い構造架構。小屋組みや天井の板、素材のテクスチャーや色の組み合わせなど、全てにおいて、魅了される空間です。この空間で仕事をする充実感をじんわりと実感できる貴重な体験でした。
 
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工房に隣接する地主さんの蔵も、楢村さんの設計で藏カフェに。そのほかいたるところに楢村さん設計の改修空間が町の中に点在します。それらが近隣の方々に愛され、さらには観光客の人気の空間になっているのです。
 
楢村さんの工房にあった、モダンなマットは「倉敷緞通」。
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これは、昭和初期の民芸運動から生まれた民芸品を、楢村さんが復興のお手伝いをしたとのこと。本当に素晴らしい。
こんなモダンなデザインの「倉敷緞通」を是非、住まい手に提案して、是非復興のお手伝いをしたいものだと思いました。
地域の職人の仕事、産業まで後押しするような活動。改修設計の仕事はそんな奥の深い、幅の広いものなのだと、ますます元気を得た思いでした。