令和2年7月豪雨災害 ~住宅医リレーコラム2020年10月

泉保 真史(住宅医協会理事/新産住拓株式会社

今年の7月は長期にわたり梅雨前線が停滞し、九州、中部地方で集中豪雨を発生させました。
特に3日から8日にかけては、九州で多数の線状降水帯が発生し、熊本県を流れる球磨川水系は、
八代市、芦北町、球磨村、人吉市、相良村の計13カ所で氾濫・決壊し約1060ヘクタールが浸水しました。


球磨村渡地区では浸水の深さが9メートルに達しました。

人吉市中心部の国宝青井阿蘇神社付近でも4.3メートルまで浸水し、商店街や住宅に流木や土砂が流れ込む甚大な被害が広範囲にわたりました。
渡地区で、私が2年前に増築をお手伝いした住宅も2階まで浸水しました。
このコラムでは、住宅が浸水後、どのように復旧改修を進めていくかのお話を書きます。
水害にあうと、床下への土砂の流入や、壁も水分を含むことになり、搬出や乾燥に多くの時間がかかります。
熊本地震も経験した中で、地震での被災と水害での被災との大きな違いは家財、内装材をすべて撤去することになることです。
罹災証明の発行を申請し支援制度を活用するうえで、地震での罹災と同じように、被害状況で認定が異なります。
浸水した箇所が床下であった場合は一部損壊とし半壊、床上浸水1m未満が大規模半壊、床上浸水1m以上が全壊となります。
先ずは被害状況がわかる写真を撮ります。
家屋の外をいろんな角度から、浸水深さがわかるよう撮影し、内部、床下の状況も確認します。
濡れた家具や家電は使えるものと処分するものに分別。床下の水や泥は取り除き乾燥消毒が必要になります。
壁の中の断熱材も濡れていると、カビや悪臭の発生で健康被害の恐れがあります。
洗浄消毒においては、被災後一部の役場が消石灰を配布した経緯がありましたが、取り扱いには十分な注意が必要です。
弊社では、ベンザルコニウム塩化物液を消毒剤として使用しました。
床下の泥の搬出はかなり大変な作業となります。コロナ過での被災となり、ボランティアの受け入れも非常に難しい状況でした。

社員・協力パートナーで手分けして、搬出のお手伝いに入りました。

4m浸水:床剥ぎ取り、泥出し(球磨郡)


床上1.2m浸水:壁撤去、床撤去、壁内床、洗浄(水害から4週目 葦北郡)


床上1.2m浸水:ダクトファン(スポット送風機)にて送風乾燥(葦北郡)


作業には肌の露出を避けた服装で、怪我と夏場の作業での熱中症対策も十分に必要でした。
浸水高1800未満であれば、分電盤や太陽光のパワコンなどの被害は無く、2階での生活の継続が可能な場合もありました。
応急修理制度・被災者生活再建支援金・義援金・見舞金制度・保険・各種税金の減額・免除などの措置も確認しながら、今後、被災された方々の修繕、改修、新築をご相談、検討していきます。
最後に、この度の豪雨災害により被災された方々、ご家族ご友人の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
1日も早い復興復旧へのお手伝いが出来ればと願っています。