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住宅医リレーコラム2019年5月

株式会社 キノマチ不動産
 藤村直樹

土砂災害から不動産を守るためには

最近は交通事故で痛ましい事故が続いて報道されています。同じくらいの子供を持つ身としては、身につまされる思いで胸が苦しくなります。

冬が過ぎ、これから梅雨を迎え夏本番に近づきます。今度は災害、大雨による土砂災害の時期になってきました。昨年7月の7月豪雨災害、平成29年の九州北部豪雨、広島の頻繁な土砂災害等、毎年のように災害が発生し多くの方が亡くなっています。

日本という国土である以上「土砂崩れ」は避けられないのですが、「災害」はある程度避けることができます。

私のブログの中で、「不動産購入時に気になること」というコラムで連載したところ、土砂災害から守るコラムが検索でよく見に来られていました。今回、その内容を一部改変してご紹介します。なお、主観的部分でのコラムであることをご了承下さい。


土砂災害は次の3つに分類されます。

1.急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)

2.土石流

3.地すべり

この中で3の「地すべり」は事前に兆候が現れ比較的緩やかに進行することから、生命への危険度は小さいと言われております。

(※ただし、1985年の長野市の地附山災害のような急な地すべり現象で死者26名のような事例もあるので、必ずしも緩やかとは言えません)

急傾斜地の崩壊は、「がけ」が「崩れる」という現象ですから、一般の方でもイメージしやすいと思います。

都道府県が定める「急傾斜地崩壊危険地域」では斜面30度以上、高さ5m以上の人家や、公共施設に被害を及ぼすおそれのある急傾斜地およびその近接地を定めることになっていますが、急な斜面の下や直上はなんとなく危険な感覚は伝わるかなと思います。なんとなくがけの上付近はよくない、がけの下からがけの高さくらい離れないとまずい、という感覚で大体あっています。

一方土石流は、その昔「鉄砲水」という名前がつけられていましたが、一般的なイメージでは、渓流が急に増水して石や流木ごと氾濫する、というイメージになっているかもしれません。

ところが実際は川沿いではなくても土石流が起こりやすい地形は存在して、昨年の広島の事例のように、あっという間に強烈な運動量で家ごと流されます。

土石流の起こりやすい土地は素人の感覚ではわかりません。

よって、素人としては行政が危険箇所を指定した場所、情報を必ず目を通しておき、理解しておく必要があります。


土砂災害が起こる可能性のあるエリアとして、「土砂災害危険箇所」が定められています。

急傾斜地崩壊危険区域

・土石流危険区域

・地すべり危険区域

また土砂災害防止法に基づいて、

・土砂災害警戒区域

土砂災害特別警戒区域

が定められ、また今後定められようとしております。この土砂災害警戒区域に定められているかどうかは、宅建業法の重要事項説明の説明義務になりますので、これから土地建物を買う方は必ず知ることにはなっています。

又その他にも、砂防指定地、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域という工事を行う予定の地域、山地災害危険区域という森林を定めた区域も存在しています。

個人的にはとてもわかりにくい(指定の目的が違うのはわかりますが)ので、全て土砂災害警戒区域、特別警戒区域にまとめて欲しいと思いますが、現在はわかりにくいので土砂災害の危険区域だけを注目する必要はありません。

危険な情報は全て一つの地図情報である市町村のハザードマップを確認すれば基本的に全て載っていますので、ハザードマップを手に入れましょう。国交省のサイトからも見ることができます。

国土交通省ハザードマップポータルサイト  https://disaportal.gsi.go.jp/

↑もちろん的中率は100%ではありませんし、区域に指定されていないところでも災害が発生していたりもしますが、新規に誰も住んでいないところに土地購入を考えている場合以外はこの情報を元に対策を考えるのがベースです。


私は以前の会社で土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域の区域を定める業務についていたことがあります。この区域の指定はマニュアルに従って機械的に定めます。(3次元の地図を使って)

特別警戒区域内は、レッドゾーンと言われますが、簡単に言うと「家が流されます。押しつぶされます。」

警戒区域内は、イエローゾーンと言われますが、簡単に言うと「家の中に土砂が入ってきます。」

と捉え方で言い過ぎではないでしょう。つまり不動産視点ではどちらにせよ建物は駄目になる可能性が高い、土地も形状が変化する可能性が高いのです。

人命視点では土砂災害警戒情報に基づき避難を行うことが命を守る行動につながります。


では不動産購入時の視点として、土砂災害警戒区域と特別警戒区域はどう判断するべきか。

特別警戒区域は法律で土砂を防ぐ対策を取らなければ開発できないと定めれられています。

警戒区域は特に定められていませんので判断は個人の判断になります。先程も述べましたが警戒区域に定められているかどうかは宅建業法の重要事項の説明事項です(ただし、諸々の事情でまだ定められていない地域はあるので行政に確認下さい)

基本的に土砂災害危険箇所は全て避けるべきです。

ただ、狭い日本の国土上、その場所を選ばざるを得ない場所もあるかと思います。というか結構な地域がそうでしょう。避けるだけでは非現実的な提案です。

それでもまず次は避けましょう。

・特別警戒区域に近い警戒区域内

土石流の氾濫地域に近い警戒区域内で家の全てが収まっている

ようは安全率を取りましょう、ということになります。

そして建築士と相談して、床上を上げるとか、上流側に対策工を打つとか、窓の位置を考慮するとか、2階を就寝場所とするようにするとか、ちょっとした対策が違いをわけることになります。不動産の被害も人命の被害もリスクを少なくできます。ここの視点を持っての家づくりはほとんどされないので、是非建築士に防災観点の家づくりを求めましょう。


日本にいる以上、地震、台風、土砂災害は避けられないのですが、過去まだ同時発生(近い発生)は無いと思います。

大規模地震のあと、大雨→土砂災害。

大雨が降り続いているその時に大規模地震。

このコンボは普通にありえます。その時どちらか片方だけなら崩れない、水が来ない場所でも、コンボにより尋常な被害が出ることは十分想定されます。

そこまでのリスクを想定しておくことが、不動産と財産、人命の保護につながると思います。

住宅医の改修事例報告 87例目

滋賀県「大津の家」2階建てから平屋へ減築改修工事

報告者: 株式会社坂田工務店  市川由美子/住宅医

■改修概要
設計者: 株式会社坂田工務店  市川由美子
報告者: 株式会社坂田工務店  市川由美子
所在地: 滋賀県大津市
主用途: 一戸建ての住宅
築年数: 改修当時築32年(昭和58年新築)
規 模: 木造2階建て(地下室付き)/ 在来軸組工法
敷地面積:240㎡  [72坪]
延床面積:169.68㎡ [51坪]⇒ 113.05㎡[34坪]に減築
          <工事範囲 99.51㎡[30坪]>
工 期: 2015年10月~2016年2月

■建築地の気候風土
比叡山延暦寺や日吉大社の門前町として古くから栄え、現在も 趣きのある街並みを形成している地域です。東に比叡山、西に 琵琶湖、その間の緩やかな傾斜地に位置しており、東西の風の 通りもよい状態です。

■改修に至った経緯
ご家族構成:ご夫婦と20代の息子さんと娘さんの4人家族
息子さんが電車好きということと、広めの敷地が魅力で購入された駅近のお住まいは、道路と敷地の段差が80㎝程度あり、建物は地下室付きの 地上2階建て。
重度の知的障害がある息子さんは段差を極度に苦手とされていることと 奥様のご両親の介護の経験から段差が全くない家にしたいとお考えで 当初は地面を全面削り取って道路からフラットには入れる平屋を新築 したいというご相談でした。
地面を削ると、周囲の家にも不具合をもたらす可能性があることや 土留め擁壁のコストのことなどご説明したところ、2階を撤去する減築 改修工事で進めることとなりました。

■既存建物:台所と浴室が2か所づつある二世帯住宅



・立地が気入って購入されたものの建物には不満が多い。 

■既存建物調査

・木構造は概ね良好と判断しましたが、解体中に基礎が無筋であり、 一部にひび割れもあることが判明しました。
RC造の地下室の配筋図を確認し、現在のコンクリートの状況も 良好であることから、木造部分の基礎も鉄筋コンクリートであると の思い込みがありました。鉄筋探査機などを使い確実に判断すべき だと反省している点です。

■ご要望① 1段も段差のない住まい

道路から一階床高さまで1350mmの段差解消については 施主様と様々検討した結果、省スペースで年老いても 利用可能な昇降機を設置することにしました。

■ご要望② 2台分のゆったりした駐車場が必要

2台分の駐車スペースと昇降機を設置するため、緑豊かな前庭をやむなく撤去しスペースを確保しました。

・軒先を低く抑え、昇降機を板張りの壁で覆うなどし、出来るだけ柔らかい印象になるよう工夫しました。

・また、両隣の緑豊かな外構に続くよう、ささやかながら植栽スペースを用意し、緑化を促しています。

■ご要望③ 大きな声を出すことがあるので隣家からできるだけ離したい

北側に奥行きのあるリビングとし、南面に深い庇と両袖壁に囲われたデッキを配し、光を取り入れながらも少し奥まった感覚で安心感が得られるよう計画しました。

■ ご要望 ④ リビングの横に着替え部屋が必要
■ ご要望 ⑤ 寝室は一人ずつの個室にしたい
■ ご要望 ⑥ 寝室のうち1室はトイレに直接入れるようにしたい

・長い廊下と主寝室・洋室1は天井までの建具と欄間ガラスでつないで閉塞感をなくし、通風・明かりを確保。また、可変性も持たせています。
・ 耐力壁は既存基礎・大梁・火打ちを活かして構成。

■劣化対策(維持管理)

■耐震性能

・解体時に無筋であることが判明した基礎を全面補強することは時間的のも予算的にも難しかったため耐力壁線を中心に差し筋したうえで鉄筋コンクリートを既存基礎に添え打ちすることとしました。

■断熱性能・省エネ性能

建物全体に深い庇をかけ、全ての居室に掃出し窓を設け通風を取っています。

■バリアフリー性

■火災時の安全性

■性能診断結果概要

■完成

■総括

本物件は住宅医スクール受講前の工事で、基礎が無筋であることを調査時に見落としていたり、省エネ性能が基準値クリアした程度でよいと考えていたことは反省すべき点です。 しかしながら、様々なご要望に一つ一つ応えるだけでなく、採光や通風、耐震性、 周囲の景観や将来的な可変性等、設計者として住まい手様が計画中には気づきにくい部分 を織り交ぜてデザインできたのではないかと思います。
膝がいたいとおっしゃる奥様もできるだけ階段を利用して、いつまでもお元気に過ごして いただきたいと思い、玄関ポーチの階段の両側に無垢の木の手すりをつけたところ、 息子さんが自然に階段を利用するようになられたことは設計者としてもうれしい限りです。
3つの寝室を天井までの建具で間仕切り、開いたり閉じたりしやすいようにしたところ、 3部屋が4人の寝室となり、広い個室が今では娘さんの「ヨガ教室」として利用されています。
住宅医スクールで学ぶ改修内容を6つの性能ごとに分析する方法は、様々な視点で建物や 改修内容を確認でき、出来ていることとできていない点がより明確になりました。
今後は、各性能の向上を目指して取り組んでいきたいと思います。


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