投稿日:2017年10月04日

事例報告(改修事例)2017-73


改修事例報告
熊本県「龍田町の家」改修事例報告

■改修概要
設計者:堺武治建築事務所 堺武治
報告:堺武治建築事務所 堺武治
所在地:熊本県北区龍田町
主用途:一戸建ての専用住宅
築年数:昭和45年(築43年)
規模:木造2階建て
敷地面積:530.95㎡(160.61坪)
建築面積:100.95㎡(30.53坪)
延床面積:162.77㎡(49.23坪)
着工:2013年5月
竣工:2013年7月
(工事期間3ヶ月)
家族構成:世帯主(55才)、妻、祖父、娘2人(成人)計5名+ワンちゃん一匹
改修内容:耐震改修、断熱改修、間取り変更、内外装や設備機器の更新など全面改修

■ご相談~竣工までのスケジュール
2012年7月 熊本で大水害が発生。龍田陣内にあったご自宅は、1階が水没

河川改修の為、立ち退きする必要があり、物件を探されていた様子

2012年11月 出会い
2012年12月 中古住宅として売りに出されていた物件を調査。

高さ約5mの擁壁の上に建っている住宅で、抜群の眺望と自然を感じられる場所をとっても気に入られて購入を検討されていましたが、壊して新築するか、リフォームするか悩まれてて、購入前にご相談を受けました。この土地を調べてみると、条例(がけ条例)の制約により、壊して新築する事が難しい土地であることが判明しました。ただ、豊かな暮らしを送るという観点から見ると抜群の立地条件でした。物件を調査した結果、工事をすれば生まれ変わると判断し、全面的な改修を提案しました。

↓ 基本計画&概算見積 何度か計画案を練り直し、ご要望を形にしていきました。
2013年3月 設計契約

2013年4月 再調査&実施設計&見積
実施設計中に一部を解体して、床下や耐力壁、小屋裏の調査を行いました。

2013年5月 着工

2013年7月 完成 ご被害から1年後に完成

■改修前写真

■調査状況写真

画像11:床下は防湿コンクリート無し。布基礎。無断熱

画像12:天井裏は裸のグラスウール敷込み有。ただし、まばらな状態

画像13:壁は無断熱。柱、梁の状況確認。鉄骨の補強梁出現

画像14:実施設計設計中に耐力壁の確認

画像15:実施設計設計中に耐力壁の確認

■ご要望&提案テーマ
ご夫婦共に、毎日仕事で多忙な生活をされてらっしゃるので、家ではくつろげる生活をご希望でした。キーワードとして出てきたのが、眺望を生かす、山荘をイメージ、薪ストーブ、オープンエア、阿蘇を望む朝風呂、防犯、風格、明るく、ウッドデッキ、家族のロッカーetc
ご要望を受けて、私がテーマにしたのは「眺望を楽しみ、心癒せる家」です。
サブテーマとしては、
・眺望のよいリビングで、ゆっくりくつろげる家
・自然を感じられる家(太陽の動きや四季による自然の変化を感じられる家)
・室内と屋外が自然に続く家(ウッドデッキもリビングの一部として利用できる家)
・機能的な家(家事動線の短縮、室内物干可能etc)
・趣味が楽しめる家(ペット、薪ストーブ、家庭菜園、屋外調理etc)

■平面計画

画像16:改修前後の平面図
1階は玄関を広くする為に南側の柱を撤去し、半間南に壁を新設。新設壁は、基礎も新設して耐力壁としました。リビングの南側が塞がってて暗かったので壁を撤去し光を取入れ、阿蘇を望める位置にお風呂を配置(一部増築)。家事動線や祖父の部屋と水周りを近づけるなど暮らしやすくなるよう間取りの変更をしました。脱衣室には、リビングとつながる比較的大きな開口部(庭側窓)を設け、開けると庭の景色が見えるだけでなく、リビングの温熱環境と一体となるようにしています。除湿が出来るだけでなく、特に冬場は薪ストーブで温まった空気により、脱衣室に干した洗濯物が早く乾くよう配慮しています。
2階は、ほとんど間取りの変更はしてませんが、南側の和室2間続きを洋室に変更し、ウオークインクローゼットを設けています。和室側に向いていた収納は、北側の洋室側に向けて、各部屋に十分な収納スペースができるよう配慮しています。

■構造計画

画像17:改修前後の構造計画
設計開始前に一度調査を行い、床下や天井裏など目視確認をしました。しかしながら、耐力壁全てを確認できるはずも無く、一部は推測で耐震診断を行いました。そして未確認部分は、実施設計中に一部を解体して確認し、全て確認できた時点で再度耐震診断を行い、補強計画をしました。新設壁や増築部分には基礎を新たに作り耐力壁を設け、既存壁にも耐力壁の補強を行いました。

■施工状況

画像18:解体状況。柱、梁は健全。壁は無断熱。

画像19:解体状況。布基礎。地盤面は、土。

画像20:新設壁には、基礎を新設。耐力壁とする。

画像21:防湿コンクリート打設状況。

画像22:増築部の基礎

画像23:基礎断熱。押出法ポリスチレンフォーム保温板50㎜

画像24:壁断熱。グラスウール(16K)100㎜

画像25:屋根断熱。アイシネン吹付100㎜

画像26:既存壁 筋交い補強45×90。梁背の小さい箇所は、添え梁補強。

画像27:野地板が腐食している部分は、撤去後張替え。

画像28:アルミサッシは、全て取替え。

大きな開口部は、アルミ樹脂複合サッシ+LOWEガラス 熱貫流率2.14W/㎡K
その他の開口部は、アルミサッシ+LOWEガラス 熱貫流率3.49W/㎡K

■性能診断結果

全体的に性能向上は出来たと思っております。
特に耐震性、断熱性、省エネルギー性については、注意深く配慮したこともあり、費用対効果はかなりあったと思います。2016年4月に起こった熊本地震を受けても、ほとんど被害も無く、平穏な生活をされています。
外皮平均熱貫流率UA値 改修前 2.58W/㎡K → 改修後 0.88W/㎡K
省エネ地域区分6地域の基準はUA値0.87W/㎡Kですので、もう少しだけ配慮すればクリアしたのではないかというのが、反省点です。

■竣工写真 Before → after 
・南側外観

・西側外観
門扉やシャッターは全て撤去し、車が進入しやすいようスッキリとさせました。
化粧梁が見える木部はアプローチで、玄関ドア前の外でも内でもない中間領域です。

・東側外観
デッキや庇は造り替え、庭と出来るだけ触れあえる空間にしています。

 

・リビング
低かった天井を勾配天井にし間接照明とすることで、開放感のある明るいリビングになりました。

・リビング
南側の壁を撤去することで光を取入れ、見晴のよい空間にしています。

・寝室
和室2間続きだった部屋を洋室に変更し、一部をウオークインクローゼットにしています。左側の雪見障子は既存品を塗装しただけです。

・客間

 

■総括
水害のご被害に遭われて1年後に完成。長かった仮住まい後の家だったと思いますので、大変喜んでいただきました。築43年の中古住宅の改修としては、費用対効果も高く、全体的に性能向上に貢献できたと思っています。昨年の熊本地震直後にハラハラしながら確認に行った時、ほとんど被害もなく平穏に暮らされていて、安心した事を覚えています。また、出会いから設計&工事まで短工期だった事は大変苦労しましたが、建て主様をはじめ施工者や関係者のご協力により大きな問題も無く完成出来た事に、ほんと感謝しております。ありがとうございました。
今回の事例は、住宅医スクールを受講する前の事例ですので反省する部分もありますが、改修工事って新築とは違う楽しさがありますので、今後も積極的に関っていきたいと思っておりますし、熊本地震で被害を受けた建物を出来るだけ再生できるよう、スクールで学んだ事を今後の設計に生かしていければと思っています。
堺武治