投稿日:2016年08月02日

事例報告(改修事例)2016-59


大阪府「高齢期に向けてのリフォーム」改修事例報告
報告者:THNK一級建築士事務所 北聖志
・設計監理:THNK一級建築士事務所

・設計期間:2014年1月~8月

・工事期間:2014年9月~12月

・所在地:大阪府堺市

・建築時期:1976年

・構造:木造軸組2階建て

・床面積 1階42.12㎡ 2階33.62㎡ 合計75.74㎡

・概要
中古住宅として購入し以来約25年間住んで来た戸建住宅を、行政の耐震改修助成等を利用し高齢期にも住み続けられるように改修しました。

 

 

■改修に至るまで

相談を受けたご夫妻は共に60代前半。まだ二人共地域の介護現場で働いておられます。家族は子供2人で1人は結婚して家を出ています。元気なうちにじっくりと高齢期の住まいについて考えておきたいということでした。その過程でマンション等に引っ越すことも考えたそうですが、やはり人間関係ができている今の場所で住み続けたいということで、改修か建て替えを考えておられました。

敷地はミニ開発された区画で間口二間で奥に伸びた2階建てで、建ぺい率はすでに一杯でした。建て替えても1階で使える形状・面積は変わりないということと、費用も抑えたいということで、改修による検討を進めました。改修計画に当たっては住宅医協会を通じて詳細調査を依頼しました。

改修前外観写真
写真奥右が改修前の建物

 

■要望と改修内容
大きな要望としては高齢期に住みやすくということと、耐震性を向上したいということでした。具体的なところは、現在のハシゴのように急な階段を緩やかにしてほしい、1階が昼間でも暗く照明をつけているので明るくしてほしいなどの要望がありました。

高齢期と言えどもまだまだお元気なので、就寝については段階的に考えました。当面は2階で布団で寝ることにし、夜間のトイレにはすぐに行けるように新たに2階に便所を設けました。階段は位置を変更し緩やかにしています。上下が不安になって来たら下階で寝られるように考えています。

食事はこれまで畳の部屋でちゃぶ台でユカ座でしたが、将来的なことも見越して改修を機にダイニングテーブルでイス座に変えてもらいました。
現在ご近所とも親しく、間取りとしては改修でより気軽に関係を持てるように、そして1階を明るく使えるようにということで玄関と居室を一体的にできるようにしました。

 

改修前階段写真
ハシゴのように急な階段

 

改修前台所写真
昼間も暗い1階台所

 

改修前居間写真
改修前の居間はユカ座で浴室への通過動線

 

改修前平面図

改修前平面図

 

 

改修後平面図
改修後平面図

 

改修後玄関写真

改修後の玄関。体が不自由になった場合は居間の掃き出しが2枚引きで大きく開放できるのでそちらを使っての出入りも考えている。

 

改修後玄関中写真
太鼓障子を開放すると玄関と居間が一体的になる。

 

改修後居間写真
建具を開放するとダイニングから玄関までを見通すことができる。

 

トイレについても現在は廊下を介して入るようにしていますが、介護が必要になってきたときには引戸の位置を変えて廊下も含めて大きく使えるように考えています。(改修平面参照)より体の状態が厳しいときには、1階居室の押入れ位置に改修前のトイレの排水管を残しているため、トイレを設置することも可能です。

 

トイレ廊下写真
右の建具はFIXで取外し可。便所引戸は手前の廊下とダイニングを仕切る位置に変更可

 

工事範囲としてはコストを抑えるためにも外周り(外壁・屋根)は塗装のやり直しに留めています。

耐震性に関しては短辺方向の壁強さを確保するため、短辺周りのみ無筋の基礎に添え基礎を行っています。それにより床下が区切られてしまうので、押入れの下に複数の点検口を設置しています。

基礎改修写真

基礎の改修

 

断熱性に関しては無断熱、単板ガラスであったものをグラスウール充填、ペアガラスサッシに変更しています。

 

■改修効果
改修を行うにあたって行政の耐震改修と省エネ改修助成を利用したため、設計費用含め150万円の助成受けることができました。

また改修後の住まい手の感想としては、すごく温かくなった、サッシを閉めると静かで裏の道路の音が気にならなくなった、1階が明るくて家で過ごすことが楽しくなった、などのコメントをいただきました。

改修前1年分と改修後1年分の光熱費のデータもいただき比較してみました。元々家計調査の標準値より光熱費は少なかったのですが、さらに年間の光熱費が27500円安くなっていました。1階にはガス温水床暖房を全面的に入れたこともあり、冬の光熱費はほぼ同じでしたが、断熱性の向上やエアコンを新しくしたことで夏の電気代が節約されています。

現在住んでいる家を改修する場合は、現状に対して具体的に要望があり、それを改善できたかがわかりやすい部分も多いですが、事前に調査を行うことで、耐震性や断熱性といった見えにくい部分も数値で示せてよかったと思います。

前後チャート

改修前後の性能チャート(赤-改修前・青-改修後)