住宅医コラム 意見交換2016-72

古く素敵な建物が、簡単に壊されることを阻止するためには、どうしたらいいのでしょうか? まずは、壊されずに残り、愛されて使われている建物を大いに褒めて、古い建物を壊さず大切に使うことが「褒められること。」と多くの人に認識してもらうことなのではないか。と考えました。
今月の、褒めコラム「改修建物を訪ねて」は、神戸市舞子にある「旧日下部家住宅別邸」です。
 
「改修建物を訪ねて~その11」
旧日下部家住宅別邸 ~舞子ホテルとして生き続ける「住宅遺産」
三澤文子(MSD)
 
 
去る10月27日に、岐阜県立森林文化アカデミーで住宅医検定会が行われました。その基調講演では、建築家・野沢正光さんが「一般社団法人住宅遺産トラスト」にかかわるようになったいきさつや、活動内容なども、語ってくださいました。
私は、雑誌・家庭画報の連載「住宅遺産~名作住宅の継承」を楽しみにしているのですが、その連載の監修を「住宅遺産トラスト」が行っているのを知り、「良い建築を壊さず残していくこと」の価値を多くの読者に広めて下さっていて、本当に嬉しく思っていたのでした。
同時に、古く素敵な建物が簡単に壊されるニュースも耳にしますが、次第に価値観がかわっていくことを、この連載で感じています。
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11月号は宮脇檀設計のブルーボックスハウス。設計・宮脇檀・1971年竣工(築45年)。現在4代目がお住まいです。
執筆の伏見唯氏は、60年~70年代の薫りがする「レトロモダン」と表現しています。また継承のポイントとして「人を惹きつけるデザイン」としています。
 
 
さて、壊されずに残る建物は、用途を変えて、多くの人々が気軽に訪れることが出来る住宅遺産になっています。私たちもそのような建物を利用して、昨年4月に、Ms建築設計事務所の30周年記念パーティーを開催いたしました。
素敵な住宅遺産とは、神戸の舞子にある「旧日下部家住宅別邸」です。
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この建物は、海運業で名を成した日下部久太郎が、神戸進出に伴って、1919年(大正8年)、明石海峡を望むこの神戸市舞子に建設しました。英国風の洋館で、地上3階、地下1階建てのレンガ造。1階には応接室、2階と3階はベッドルームが設けられているのですが、この洋館に加えて、大規模な和風建築も併設されています。
その和風建築は、日下部久太郎の故郷、岐阜から名匠を呼び寄せ、木曾の山から伐り出した銘木を惜しみなく使っているそうです。
 
 
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ここは、まさしく木造を愛する私たちにとって、申し分ない会場になりました。
右上の写真は、宴会の始まりに、栗の専門店、橘商店の橘明夫氏が、乾杯の挨拶をしている場面です。
外は明るいので、ガラス窓の向こうに素晴らしい庭園が見渡せることが、お分かりでしょうか。
 
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品のある欄間や、時間を経た柱や長押の色合い。
MsのOB挨拶が続きますが、このような空間で和やかな時間を過ごし、明日の活力を得ることが出来ました。かつての大邸宅が、こんなふうに現代人の心を豊かにしてくれるのです。
 
現在は 舞子ホテルとして、誰でもいつでもお食事が出来ますし、結婚式も出来るとのことです。ここでの結婚式は好いでしょうね。「どなたかご招待いただけないかな。」