住宅医コラム 意見交換2015-57

妻にとっての定年リフォーム
宝塚Iさんの場合 ~ その8
 完成!そして引き渡し。
三澤文子(MSD)
暑い夏が過ぎ、紅葉美しい秋。工事は佳境にさしかかってきました。キッチン周りや水廻りの造作工事が進み、だんだん形になってきています。台所の使い方など、設計時から、入念に打合せをしてきましたが、 Iさんは、念には念を入れ、現場に来ては、シミュレーションをしてみたりしています。そんなことで、みんなが集中し、日に日に出来上がってくる現場は緊張感があります。
 
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台所の作業テーブルと家電スペースを作製中の渡利貴志大工

大工さんの造作工事が終わりにさしかかると、仕上工事が始まります。
改修工事では、出来るだけ時間経過した既存材料に調和する材料を選ぶことが肝心だと思っています。塗装でも、新築では、白を使うことがほとんどなのですが、改修では、小豆色など、「日本のいろ」を合わせると馴染むように思います。

また、新築でもよく使う「柿渋紙」ですが、既存材料との馴染みが良いのです。貼ったばかりでも古めかしいからかもしれませんが、時間を経過するとだんだん色が濃く、深くなっていくという、熟年化する材料だからかもしれません。

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寝室(和室)の天井の柿渋紙。船底天井、化粧棟木の桜丸太は既存のままです。

既存材に合わせようと、実は、床の厚さ30㎜のスギ材も、当初は漆塗りを勧めていました。

ただ、予算のことや、「白木がいい。」という Iさんのご希望があり、今回は白木にオイル塗りをすることにしました。和歌山産で無節の杉板は優しい色です。これからじっくり良い色に変わっていくことと思います。

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左は私。中央が Iさん、右手が Iさんのご主人。細かいご要望や相談を受けているところです。

そして2014年11月4日。とうとう完成・引き渡しの日を迎えました。改修された家の鍵を、丁寧に箱に入れてお渡しし、ご夫妻が鍵をあけて家に入る。という、どこかで書かれたシナリオ(?)に沿って、うやうやしく行事が進みます。

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左:私もシナリオに沿って役者になり、無事演技終了です。
右:鍵をあけて、にこやかな笑顔で、玄関引き戸を開けます。

 
引き渡し時の書類や、追加工事費の説明、材料のお手入れの説明などなど、粛々とすすめ、最後に、コアーさんご自慢の「DVD」映写会。DVDでは、清祓い式に時間が戻り、そこから,本日の完成までの道のりを、かかわった職人さんたちの表情をいれながら、綴ってきます。完成に近い、最後のシーンでは、大工さん、監督さんなど、コアなメンバーのメッセージもあり、泣かせます。見ると、 Iさんはハンカチを目に当てています。かく言う私もですが。
 

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コアー建築工房お得意のDVD。編集や音楽の選定もなかなかのもの。魅せます!

完成時期にあわせて、引っ越し準備もすすめていたIさん。数日後、仮住まいから、改修されたこの家に戻ってきます。そんな話題に、アドバイスや、お手伝いできること、また事務的なことなどのお話をしました。終始穏やかで晴れやかな一日でした。

つづく