住宅医コラム 意見交換2014-47

「家を見守る」ということ~病理学の学びで自信を持った説明ができるように。
三澤文子(MSD)
 
秋も深まり、冬の到来が間近というのに、シロアリのメンテナンスです。阪神ターマイトラボの水谷さん(住宅医スクールの講師でおなじみ)も、調査の日程調整がなかなかできないほどの忙しさ。
 
さて、この日メンテナンスにうかがったのは、私の設計した住宅で、築年15年になります。
調査開始から、さっと内視鏡を取り出す水谷さん。クールな調査道具に、その使い方を観察します。
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こちらの住宅は、7年ほど前に一度シロアリの駆除を行っています。その際、その後のメンテナンスをしやすくするためにもと、デッキと、建物本体にスリットを設けていたのが、功を奏しました。
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デッキの下に潜らずに、その隙間から内視鏡を入れて、土台と基礎の際を見ていくことができます。目視の姿勢も腰をかがめるだけなので、かなり楽なのだと感じました。
 
今回は、住まい手さんが、室内、室外で、木部の被害を見つけ連絡があったのですが、比較的、早かったことで、被害の範囲は限られ、水谷さんからも、「大丈夫。しっかり駆除できます。」と言って頂けました。
得てして、住まい手さんも、私たち設計者も、「シロアリ」と聞くと、ゾッとするものですが、木造建築病理学で、シロアリについての学びを重ねていくうちに、シロアリがそんなに恐ろしい虫ではないことが解ってきました。
 
シロアリの存在があってこそ、生態系の循環があること、家の中に入ってしまうと害虫になるものの、庭で生活していて、腐った木を食べているのなら、それを駆除する必要もなく、そのまま見守っていたほうが、家に入ることを守ることにもなる。との水谷さんの説明。それをしっかり理解するには、シロアリについて、よくよく勉強し彼らの行動を解ることが必要でした。 シロアリについての勉強で、たじろがずに、住まい手さんに説明できるようになりましたが、やはり水谷さんの「大丈夫!」の言葉が心からの安心感を導いてくれます。
 
今回、以下の2か所から、シロアリが内部に侵入していました。
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(1)デッキ下の部分
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(2)エアコンの冷媒管を地面に這わせていた部分。(造園のためにそれを石で隠していた)
 
(1)(2)とも、まさしくシロアリ侵入を呼ぶ、設計です。
デッキもあると便利。庭園にある冷媒管は隠したい。いずれも設計上やむおえないことなのだけれど、それらをかなえつつ、シロアリメンテがしやすい方法など、工夫の余地はあるはずです。
今回、デッキと建物本体とのスリットがあったことで、蟻道の位置や範囲がすばやく特定できたことを実感したので、今後の新築の設計では、そのディティールでいこう!と強く思った次第です。