投稿日:2017年01月18日

住宅医フォーラム2017「災害とレジリエンス~木造住宅の耐震性とは」 開催報告


1/12(木)、東京大学弥生講堂(一条ホール)にて、住宅医フォーラム2017「災害とレジリエンス~木造住宅の耐震性とは」を開催しました。

 

「熊本地震をテーマに、災害とレジリエンスと題して企画した住宅医フォーラム2017。住宅医スクール2016開催地熊本で震災が発生したことを受け、現地の工務店やスクールで対応してきた経緯とそこから得られた情報を全国の関係者と共有したい」という三澤文子氏(住宅医協会理事)の挨拶で始まった住宅医フォーラム。全国各地から約180名が集まり、①熊本被災地からの報告(小山貴史氏、滝口泰弘)~②耐震特別講義(五十田博氏、山辺豊彦氏)~③パネルディスカッション(南雄三氏、山辺豊彦氏、五十田博氏、小山貴史氏、古川保氏、池田浩和氏)が行われ、盛会のうちに終了しました。その概要について報告します。

 

【報告①】

「熊本地震対応記録~発生後の対応と今後の備え」

小山貴史氏/エコワークス株式会社 代表取締役社長

被災地熊本のエコワークス(新産住拓グループ)の小山氏より、熊本地震発生時から現場で対応してきた様々な事柄について、生々しい写真や資料を用いて報告がありました。始めに、前震時の自宅家具倒壊、Facebookで社員安否確認、工事現場の確認、OB顧客への電話連絡などから。

 

「その後本震が起こったが、当初は余震で小さいだろうと思い込んでいたため、その後の対応が遅れた。社員からも生まれて初めて本当に死ぬかと思ったと言われたくらい揺れた。翌日も出勤できた社員は半数のみで、後からたいへんなことが起こったと分かった。」と小山氏。本震後は、停電、断水、電話普通、鉄道運休、道路通行止、都市ガス使用停止などライフラインが混乱、店舗の食料品の枯渇や支援物資の運搬の様子も紹介されました。

 

さらに、電話復旧後は被害相談が殺到し、新産グループで約3,200件。ほとんどが緊急出動の要請だがとても対応できなかったことや、大規模災害時の工務店の事業継続計画(BCP)と顧客対応のマニュアル化についても、「首都直下地震や南海トラフ地震に備えて、今すぐ計画を立ててほしい。熊本地震でも準備が出来ていない会社は風評被害でも圧倒的なダメージを受けた。」と強く訴えられました。

 

最後に、熊本地震で実際に使用した様々な対応書類について、是非参考にして欲しいと紹介がありました。

(※→対応書類のダウンロードはこちら)

 

【報告②】

「住宅医スクール熊本の実施と特別講義ダイジェスト」

滝口泰弘/一般社団法人住宅医協会 理事

現在実施中の住宅医スクール2016熊本について、募集開始直後に震災が発生したことを受け、急きょ震災関連特別講義を充実し80名を超える方々に参加して頂いている状況や、各先生方の特別講義の概要について、また、新産住拓グループへ調査依頼のあった被災住宅について、全国から住宅医が集まり実施した調査支援の報告がありました。

 

(※→住宅医スクール熊本 震災関連特別講義:第1~5回の概要はこちら)

 

【特別講義①】

「熊本地震の木造住宅構造的被害と今後のあり方①」

五十田博氏/京都大学生存圏研究所 教授

熊本スクールの特別講義でもお話し頂いた、熊本地震の全体像から国交省委員会の結論、耐震性能・設計の留意点について講義して頂きました。

新耐震以前、新耐震以降、2000年以降という年代別の被害状況、被害の特徴や要因、耐震性能や耐震設計の考え方、各々の留意点について、実大実験の動画も用いてお話しして頂きました。

 

 

(※→熊本スクール特別講義の概要は、上記「震災関連特別講義:第1~5回の概要」を参照下さい)

 

【特別講義②】

「熊本地震の木造住宅構造的被害と今後のあり方②」

山辺豊彦氏/有限会社山辺構造設計事務所 代表

引き続き、こちらも熊本スクールの特別講義でもお話し頂いた、木造住宅の構造設計の実践的なポイントや留意点について講義して頂きました。

地盤・基礎、軸組、鉛直・水平構面、接合部についての設計のポイント、現行の基準法と性能表示の基準の違い、過去の震災被害の特徴やその要因、耐震性能と損傷状況の対応ついてお話しして頂きました。

 

 

(※→熊本スクール特別講義の概要は、上記「震災関連特別講義:第1~5回の概要」を参照下さい)

 

【パネルディスカッション】

「災害とレジリエンス~木造住宅の耐震性とは」

(コーディネーター)南雄三氏/住宅技術評論家

(パネリスト)山辺豊彦氏、五十田博氏、小山貴史氏、古川保氏/住まい塾古川設計室有限会社代表取締役、池田浩和氏/岡庭建設株式会社専務取締役

 

熊本で活躍されている古川氏、住宅医スクールレギュラー講師の池田氏に加わって頂き、構造は専門外のコーディネーター南雄三氏の「一般の施主の立場になって色々な質問をしてみたい」という発言からディスカッションが始まりました。

まずは、あまり知られていない「レジリエンス」について、CASBEEホームページからダウンロードできる「レジリエンス住宅チェックリスト」が紹介され、「強くてしなやかな日本の国づくりという重要な政策課題の一つ」と、同作成委員の池田氏から補足説明がありました。

(※→レジリエンス住宅チェックリストはこちら)

続いて古川氏から、「震災後家が建ち始めているが、耐震ばかりに頭が行き、窓が小さく庇も短く軽い屋根、といった箱のような家ばかり」、「瓦でもしっかりと施工すれば問題ないのに」、「全壊判定を受けると治す人がいないので建替えになる。修繕の技術の普及が不可欠」、「被害が見え難くゴミが増える今の家づくりはどうなのか」と、現状の家づくりに対する危機感が訴えられました。

 

構造でよく議論になる「固めるか、柔らかくするか、どっちがいいの?」という南氏の問いに対し、「目的は同じ。どの要素を選択するかの違い」と古川氏。続けて「伝統木造で言われている、動いたら戻すという考え、素人的にはとても良いと思うが、修理も安そうだし」という問いに対しては、「今回は地震保険で賄えた」と古川氏。「伝統的な粘りがある壁はどうして強いの?石場建てはいつ効くの?」という問いについては、「土壁の強度は、貫のねばりは、摩擦係数が・・」と山辺氏、古川氏。「良く分からない・・」と南氏。古川氏からは、石場建てだが在来浴室を固めた事で、浴室だけ動かず全壊した事例も紹介されました。

「瓦は地震時に落ちるから良いとも聞いたが」と南氏、「地震は10秒程度なので瓦が全て落ちることはありえない」、「土蔵の壁なら地震で半分落ちて重量は減る」と古川氏。

ディスカッションは施主の立場になった南氏の質問責めで、軽快に進められていきました。

「今日の特別講義の内容はみんな分かっているのか?上級編ではないのか?」という問いについては、「力の流れは重要で山辺さんに教わった」と池田氏、「そんなこと言わず勉強して欲しい」と五十田氏、「設計者や工務店が、分かっているのは俺だけで他は分かっていない、とか言われると施主はとても不安になる」と南氏。

 

小山氏は「山辺さんや古川さんの話は一般工務店のレベルではかなり上級編。性能表示に対応している工務店は地元で1割程度。今日の講義資料でも出てきた、耐震等級と破壊の関係を理解すれば施主に説明できる。耐震等級とコストアップも試算すると、基準法ギリギリと比較して、等級2で30万程度、等級3はさらに5~10万程度、つまり1万円/坪で等級3は可能。自由度の制約は出てくるがちゃんと説明すれば、4~50万であれば、少なくとも熊本では皆さん等級3を選ばれる」と現状を報告。

池田氏は「基準法を満足すれば地震に耐えられると施主は思っているので、倒壊しないけど全壊してしまうこと、さらに今回の地震で見えてきた等級3を一つの指標として説明し始めている。耐震のコストアップはさほど大きくない。また、最近、建物が重量化しているので、仕様規定の中身や前提条件についても知っておくべき」と補足。

南氏「地盤はみんなチェックするのか?」

山辺氏「基準法でも地耐力によって基礎が選定されるので、スウェーデン式サウンディング試験をやるべき。少し勉強すれば誰でも分かり施主に説明ができる。」

古川氏「熊本地震も地盤が弱いから被害が大きかったと認識している。表層地盤増幅率があり2倍くらい増幅したのではと思っているが、五十田さんの講義で地盤の影響は1割程度と説明があったが」

五十田氏「今回の地震動の特性は建物の周期に合う地震動が来てしまった。地盤が悪い地域はそれより周期が長くなるので建物を壊す周期にはならなかったと考えているが、これから調査分析を進めていく。これまでの地震動は早い周期が多く、その場合、軟弱地盤だと周期が長くなり建物を壊す周期に合ってしまう。」

 

南氏「制振、免震は必要なのか?いらないのか?」

五十田氏「あくまでもどこまでの性能にするかが重要。そのために制振を用いるのか耐震を用いるのか、方法を色々と考えればよい。」

小山氏「地震後3か月程度は、制振という言葉が住宅会社の広告を踊った。当然施主のニーズもたくさんあったが、だんだん減ってきて今はもう無い。最近は、等級1、2程度であれば多少揺れるので制振の効果があるが、等級3だとそもそも揺れないので制振はあまり必要ない、と施主に説明している」

五十田氏「それで正しい。耐震性能を上げるほど変形が出なくなり損傷が少なくなる。耐震性能が元々高ければ、多少減衰しても満足値より下回らなければ大丈夫。制振は性能を減衰させない装置だが、少し入れた程度で建物全体に効かなければ耐震性能は当然減ってしまう。コストパフォーマンスからは、耐震性を高めるという小山さんのやり方が良いということだと感じている」

南氏「家が腐っていたら、耐震どころではないのでは。断熱も家を腐らせる一因かもしれないが」

山辺氏「腐る場所による。構造的に重要な場所は補修が必要」

南氏「シックハウスの時は合板が話題になった。耐震だけでなく総合的な判断が必要になる。住宅医の重要性は、耐震診断でも劣化その他が総合的に判断できる能力があること。新築ばかりやっていると仕様規定ばかりで何も学ばない。耐震も劣化も断熱も、治せると言ってもコストなどの制約で治せていないのが現状。20年でゼロに資産価値の問題等々、我々建築屋がこのような問題を解決していかなければならないはず」

 

小山氏「現状では新耐震以前のものしか自治体の補助対象になっていないので、1981年の新耐震~2000年以前の建物を業界として何とかしていくこと、これが熊本地震からの学びであると問題提起しておきたい」

古川氏「被災住宅のグラスウールにたくさんカビが生えている。断熱材を詰め込むだけでは駄目だということが視覚的によく伝わった。」

南氏「モルタルの裏側も真っ黒。水蒸気も壁の内外を行くとイメージしがちだが、上に上がって行って胴差の下端がやられる。もっとたくさん勉強が必要。」

 

そして、終了時間も迫り、最後に一言ずつ・・

 

池田氏「ストック社会に向けて、見立てる力を学ぶ唯一の場が住宅医。修繕技術も大切。これからは既存住宅の医者になって、どうコンサルティングしてあげるかが、我々技術者に求められる。住宅医はそこに特化して進んでほしいし、それがレジリエンス力の強化にもつながる」

古川氏「耐震も断熱も劣化もシロアリも台風も・・何かを優先すれば何かが劣る。また、大切なのは見える化だが不可断熱すれば中が見えなくなる。基礎断熱すればシロアリが。家は一問一答ではないし、耐震もナンバー1ではないと思う。」

小山氏「地元の社団法人で耐震等級3の勧めというリーフレットを作成した(五十田氏監修)。是非多くの方々に活用して頂き既存住宅の耐震改修に取り組んで頂きたい。また、首都直下や南海トラフが叫ばれる中で、事業継続計画については会社や社員家族を守るために、明日から取り組んで頂きたい。」

(※→「耐震等級3の勧め」リーフレットはこちら)

五十田氏「色々な場所で話をしていると、被災地とその他でとても大きな温度差を感じる。国交省は今回の地震で基準法は妥当だったと判断したが、構造研究者の世界では他構造の方に、木造について本当に今のままの基準で作っていくのか、もっと真剣に考えろと言われている。もっと発信していかなければと日々感じている。」

山辺氏「耐震の性能設計を理解し、また液状化を想定して基礎をしっかり作ると、レジリエンスにある回復力がもっと高くなる。修繕技術で言うと大工さんをもっと優遇すべき。構造設計者としては壊れ方を考えるのが一番大切。」

南氏「ある被災者に聞いたら、本震後怖くて家族みんなで寄り添って一番落ち着く和室に居たそうで、また木造は軽いので耐震等級4、5もできるという話もあり、木造には未来があると感じている。そして一番言いたいのは、既存住宅を触れる技術が必要で、そのために住宅医がある。もっと普遍的な学問体系として広げていって欲しいといつも思っている。」

最後に、今年度新たに住宅医協会代表理事に就任した山辺氏より、「東日本大震災の時は、長周期地震によって仕上げなどの非構造部材に大きな被害が出た。一般向けの相談会も多く実施したが、構造部材も非構造部材も一般の人には分からないため、そのギャップを埋めていく必要性を感じている。また、既存住宅を扱う住宅医は新築に比べてとても難しいが、これから必要なものである。今後ともご支援を賜り発展させていきたいと思っている。」と挨拶があり、フォーラムは閉会しました。

(記録/滝口)

投稿日:2016年12月02日

住宅医スクール2016熊本 震災関連特別講義ダイジェスト05


11/26(土)、住宅医スクール2016熊本(第5回)開催しました。

今回の第5講義(ゲスト講義)は、「熊本地震と伝統木造~伝統木造被害の調査分析状況報告」と題して、すまい塾古川設計室(有)の古川保先生に講義して頂きました。その概要についてご報告します。

(滝口/住宅医協会理事:スクール熊本担当)

 

熊本地震と伝統木造~伝統木造被害の調査分析状況報告

古川保氏/すまい塾古川設計室(有)代表取締役

kuma05-01  kuma05-02

地元の一被災者として活動をしているが、全てを見た訳ではなく、この度の地震の総括は私にはできないので、自分が見た範囲で、また伝統構法という視点から考察したことをお話ししたい。

 

瓦の家は地震に弱いのか

震災後、調査に入った多くの研究者が瓦の家の被害が多いと言い新聞もそう伝えたが、瓦の家が多いので被害が多いのはあたりまえ。また古い家ほど被害も多かったが、古い家が弱いのではなく古い基準を採用しているから弱かったのである。墓石に例えれば、新旧は関係なく縦長、横長の形状によって倒壊が決まる。

kuma05-03  kuma05-04

阪神大震災以降、2000年に瓦組合が「瓦施工ガイドライン」を作成したが、この工法によるものは被害が少ない。つまり瓦が悪いのではなく瓦の施工が悪い。また法律だと直ぐに抜け道を考えるが、ガイドラインは皆それに向かって行こうというものなので、とても良いやり方である。

益城町でも伝統木造の瓦の被害は多かったが、屋根だけの被害が多い。棟瓦が落ちた程度で躯体は大丈夫。瓦も100年前の物が多く、既に葺き替え時期に来ていたものである。

また、重い瓦が弱いので軽い屋根に、と言って屋根を葺き替えるよりも、耐力壁補強に費用をかける方が利口である。瓦は100年もつが軽い屋根はおよそ30年程度しかもたない。

軒を短くした方が軽くなり有利という人もいるが、それで良いのか。一長一短があり、それらを判断するために我々専門家がいる。

kuma05-05  kuma05-06

 

構造や壁倍率で家の強さを判断するのは間違い

木造が弱かったという声を耳にするが、ちゃんと数えた人はいるのか。自分の近隣の状況だけを見て判断している人がとても多い。唯一、調べたものに学会による益城町の悉皆調査があるが、1980年以降の全壊倒壊率は木造が25.9%、S造が20.9%であまり変わらない。また地域が違ったらどうだったか。このような状況で木造が弱いという報道はやめるべきである。

また、壁倍率を1.5倍にすればよいという話があるが、単純に1.5倍すれば良いというのは間違い。1階と2階の形状により必要な耐力は異なる。

kuma05-07

 

修理がきかないRC造

熊本市内のRC5階建ての市民病院も建て替えになった。被害は1階の柱のみだが、柱だけ取り替えるわけにもいかない。2階以上は見るからに健全なのに取り壊しはとてももったいない。それに比べて木造は限りなく修繕が可能である。

 

柱の引き抜き

接合部の引きちぎれが報道され、もっと強いボルト等にすべきと思う人が多い。接合部を強くするのも一つの手だが、梁を大きくして押さえ込みを強くするのも有効である。

接合部を強くすると土台が壊れるなど、必ずどこかにしわ寄せがくるので、全く被害がない家はあり得ない。

また、とめつけないと横へ移動してしまうが、動くことによってエネルギーが吸収され、内部の被害は少なかった。想定外の地震が来ても動くことによって被害を減らし、また戻すことができることは、伝統構法の利点である。

kuma05-08  kuma05-09

 

見える被害

真壁造りの家は被害が見える。また木造は揺れて元に戻る。傾いた変形が残留している障子は生き証人。調査では1/20で全壊となるが、この障子は1/15傾いて戻ったという証拠である。

また、耐震、免震、制振とあるが、耐震は固く強くすることで、制振は揺れることで抵抗する。免震は想定を超えると壊れてしまう。耐震、制振、どっちが強いとは言えないが、災害の多い日本には、自然には負ける、いかに逃がすか、という国民性が昔からあるのではないか。

修理のし易さで考えると、筋かいも筋かいが壊れれば良いが躯体を壊す場合がある。躯体を直すのはたいへん。瓦や障子は壊れても交換しやすい。下駄も鼻緒を弱く作る。込み栓も込み栓が壊れるのが良い。弱いところを作って交換できることは伝統構法の極意。

kuma05-11  kuma05-10

シロアリ対策でも、風通しの良い石場建ての床下が理想的。薬剤利用は過去何度も危険性が指摘される度に薬剤が変更され続けていて信用できない。薬剤に頼らず、年に1回床下を点検すればよい。

 

見えない被害

最近増えてきた大壁は中が見えない。今回の地震でクロスがやぶれた被害も、壁内部に被害があり耐力が減衰している。クロス屋だけで補修してしまうと耐力は戻らない。紙クロスが悪かったので伸びるビニールクロスにしようという人までいる。

また、今回露出した断熱材もほとんど真っ黒。熊本では955㎜の住宅モジュールが多いが、そこに910㎜モジュールの断熱材を充填し、隙間ができてしまっているものが多いのでは。

kuma05-12  kuma05-13

 

建築のゴミを考える

今回の地震の廃棄物処理場は県内では足りず、隣県にお願いに行くことになる。伝統構法の家の廃棄物は土、藁、木、竹で、埋め立てゴミは僅か。

kuma05-14  kuma05-15

一番厄介なのは石膏ボード。廃棄すると硫化水素が出るので特定廃棄物になっていて処分費が1枚600円。製品は1枚350円と安いが処分費まで含めて販売するべき。そうすればスギ板も勝負できる。

 

柱のヒビは大丈夫か

表面上の乾燥割れは強度低下しないことが証明されている。高温乾燥により内部割れを起こしている材料は、地震により貫通割れを起こしている可能性も高い。真壁であればヘラ等で確認できるが大壁では確認できないのは困ったことである。

低温乾燥というやり方もあるが、とてもお金がかかる。

 

液状化からは避けられない

震度6強以上になったら液状化はどこで起きてもおかしくない。前震では1,500か所、本震では4,000か所。熊本市内であればどこでも起こると思うべきである。RC造などの修復はアンダーピーニングなど莫大な費用と時間がかかる。足固めのある伝統構法であればジャッキアップ工事も安価にできる。高額な杭をすすめるより修繕のし易さを考えていた方が賢明である。

kuma05-16  kuma05-17

また、ハザードマップを見る際も、地震の発生率ではなく、表層地盤増幅率を注視すべきである。

 

伝統的構法の家の意義

先人の地震などの経験から、壊れ方を知っていて大事なものは壊さないという伝統構法は超合理的である。修理しやすい、ゴミにならない、見える構造、変形性能の高さ、沈下対策の足固め、耐用年数など、これからの家づくりは伝統的構法に解がある。

kuma05-19  kuma05-18

 

以上

(※資料は古川先生の講義資料より抜粋)

投稿日:2016年10月22日

住宅医スクール2016熊本 震災関連特別講義ダイジェスト04


10/15(土)、住宅医スクール2016熊本(第4回)開催しました。

今回の第4講義(ゲスト講義)は、「熊本地震の構造的被害③-調査分析報告③」と題して、建築研究所の槌本敬大先生に講義して頂きました。その概要についてご報告します。(滝口/住宅医協会理事:スクール熊本担当)

 

熊本地震の構造的被害③-調査分析報告③

槌本敬大氏/国立研究開発法人建築研究所 材料研究グループ上席研究員

kuma04-01 kuma04-02

 

地震の概要(おさらい)

前震では益城町の限られた範囲で被害が出て、倒壊は35棟と言われている。本震では西原村や南阿蘇村でも大きな被害が出たが、前震で西原村や南阿蘇村でどれだけ被害が出ていたかは分かっていない。

 

kuma04-03  kuma04-04

熊本地震は過去に何度も起きている。

研究書籍によると、1625年熊本地震(熊本城石垣損傷)、1723年肥後豊後筑後地震(住宅倒壊980棟)、1889年熊本地震(熊本市で住宅倒壊200棟)、1975年阿蘇山北部地震(住宅倒壊16棟)。

また、想定を超える地震は過去に何度も起きており、今後も想定を超える地震が来ると想定している。今回は余震の回数も多かった。前震は過去の地震波の最大値を超えていないが本震は大きく超えていて、さらに卓越周期が1~2秒にあったため、多くの建物に被害が出た。

 

本震による被害の拡大

木造住宅の被害は、旧耐震(概して土壁)、新耐震(概してモルタル外壁)、2000年改正後(概してサイディング)の3つに分けて分析されることになるが、旧耐震でも被害が少ないものは何らかの耐震改修がされているのではと想像される。

益城町役場も実際に見に行くと、前震ではほとんど被害が見られなかったが、本震では色々なところに被害が見られた。木造住宅でも前震で損傷し本震で倒壊している家屋が多く見られた。

kuma04-05

kuma04-06

kuma04-07

 

震度7を2回入力した実験

震度7を2回入力した実験を2005年にやっていた。当時築30年(旧耐震)の全く同じ形状の2棟の実物件を実大実験棟に移築して行われた。1棟はそのまま、もう1棟は耐震補強を施し、耐震補強の意義が実験で明らかにされたものである。

因みに、実験棟の内部という好条件での施工ではあったが1棟の耐震補強費用は110万円で補強している。

kuma04-08

評点1.5が推奨値。評点1.0=基準法同等と思ってもらっては困る。スペクトル上は同じ耐力があるような計算になっているが、それを超える地震動は当然来ること、同じスペクトルでも周波数特性が異なれば被害が大きくなること、モルタル外壁もカウントして安全を見ていることが主な理由(モルタル外壁は健全であれば10程度の耐力がでるが、健全でなければ1程度しか耐力が出ないものもある)。

kuma04-09

kuma04-10

実験では、震度7の1回目では耐震補強(評点1.5)したものは倒壊しなかったが、2回目を入れると倒壊してしまった。今回の震度7(熊本)と実験の震度7(鷹取)では、継続時間や地震派の特徴、エネルギーなどが異なるので、一概に同じことになるとは言えない。

また、別の研究者により、既存の建物と新しい材料で建て直した建物+地盤補強をしたもので、震度7を2回入力した比較実験もやられているが、新しい材料+地盤補強の方は倒壊しなかった。材料の劣化度も耐震性能に大きく影響することが分かる。

 

本震の体験談と南阿蘇村の被害

前震直後に調査に入り南阿蘇村に宿泊していた。本震は南阿蘇村役場では震度6強が観測されたが、宿泊地からは遠く地盤も異なっていたので、自分が体験したのは震度7ではと思っている。宿泊地付近では阿蘇大橋の崩落や学生宿舎の倒壊など被害も甚大だった。

kuma04-11

宿泊施設の部屋で、ソファーに寄りかかって床に座って、座卓で報告書を書きながら眠ってしまっていたら本震が来た。何が起こったか分からなかったが目が覚めたら真っ暗で、家具が散乱し自分も転がり静止するのがやっと。当然歩くこともできず、地震時にシェルターの中に入れというのは無理だと実感した。

停電・断水もしたが、宿泊施設だったので飲食には困らなかったが、アクセスしてきた道路も路盤崩壊していた。

その他南阿蘇村では、地盤の崩壊や建物の傾斜、共同住宅の倒壊、比較的新しい住宅の倒壊なども見られた。

kuma04-12 kuma04-13

kuma04-14 kuma04-15

kuma04-16 kuma04-17

kuma04-18 kuma04-19

 

被害の分析結果

比較的新しい建物がこれだけ多く倒壊しているのは、阪神大震災以来だと感じた。応急危険度判定結果を分析すると、倒壊・危険が905棟、著しい変形が266棟。新潟県中越地震と比較しても数が多い。

RCやS造も倒壊している。

kuma04-20 kuma04-21

南阿蘇村では、黒川地区に2階建て木造アパートが多く7棟が倒壊。多くは接合部が軽微な接合方法であった。

その後の益城町中心部の悉皆調査結果から、木造住宅の倒壊率は、旧耐震28%、新耐震9%、2000年基準2%。前震で倒壊したと考えられる35棟は2000年以前で、新耐震も5棟含まれるが、不十分な接合部や隣接建築物の倒壊等が要因の1つだと推定されている。

kuma04-22 kuma04-23

2000年以降の倒壊7棟のうち、明らかな地盤の影響、部材の過大重量、接合部不良と原因が特定できたものを除く4棟は、品確法評価方法基準による壁量計算では、近隣の無被害の木造住宅と明確な差は見られなかった。許容応力度計算でも4棟のうち3棟は満足していたと思われる。

このように、現行基準でも倒壊したと思われるのは約1%(320棟のうち3棟)であったため、現状までの分析結果からは、直ちに基準改正の必要はないと判断されている。

 

Q&A

kuma04-24 kuma04-25

公開されている委員会の報告書に、「木造住宅に関して消費者に向けてより高い耐震性能を確保するための選択肢を示す際には、住宅性能表示制度の活用が有効と考えられる」と記載があるが、その議論や背景はどうだったのか?

結論が出ていないので今日のまとめでは言わなかったが、等級2でも倒壊や損傷しているものがある。基準法の2倍、3倍、4倍の地震波が来ているので、1.25倍や1.5倍では足りないという投げやりな言い方もできるかもしれないが、もう少し細かい分析をしてから結論を出そうというのが現状。一方で、等級4、等級5を作ればいいという意見もあるが、それはやる気になればすぐできるので、そういう話は出てくるかもしれない。

2000年以前の新耐震のものも多く壊れているので、これらの耐震診断・補強についても進めていく必要がある。

 

以上

(※資料は槌本先生の講義資料(建築研究所の公開資料)より抜粋)