投稿日:2018年03月08日

住宅医コラム 意見交換2018-78


住宅医リレーコラム 2018年3月号
リレーコラムでは毎月住宅医協会の理事等による月替りコラムです。
3月号は住宅医協会事務局で不動産会社も運営している藤村直樹のコラムです。

 

「改修に関わるお得な減税制度のご紹介」
住宅医協事務局  藤村直樹

3月のコラムは事務局藤村が担当します。年度末に向けて皆様ヒートアップの中、やはりその役割が周ってきました。
さて、私は協会の事務局とは別に不動産も扱っています。基本は仲介しています。
その中では建築士の方や工務店、リフォーム会社の方とタッグを組んで、
中古住宅を購入+リノベーションという住宅医等も手がけられる仕事も、不動産側として関わってきています。
その中で住宅医等にも知ってもらいたい、改修に関わるお得になる減税制度をご紹介し、うまく活用していただきたいと思います。

◎ポイントはこちら◎

・新耐震基準前の物件の改修は、購入前から準備を整えると減税のメリットが大きい
受けられる減税は

1.住宅ローン控除(所得税の減税)
2.不動産取得税の減税
3.贈与税の減税(住宅取得資金贈与の特例)
4.固定資産税の減税
5.火災保険の割引

以上の恩恵に預かれます。

しかし、実は購入前に耐震改修してもらう(売主側で行う)方がもっと減税になります。
上記5に加えて、

6.登録免許税の減税
7.抵当権の設定登記の減税
8.耐震診断+耐震改修の補助金(売主側、自治体による)

ただ現実的には、売主側で改修してもらうことは中々難しいかもしれませんし、
意匠改修を伴う住宅医等の工事ですと、買主側で耐震改修をしないと二度手間になってしまいます。
ですので、それは一旦忘れてポイントに戻ると、

①お客様が中古住宅の購入前(正確には契約前)から携わります。
②契約後、引渡し前(所有権が移転する前)に耐震改修の申請等を行います。
③引き渡し後、改修工事を行います。工事完了後耐震基準適合証明書を取得。
④引き渡し後から6ヶ月以内に居住
⑤確定申告+都道府県税担当事務所へ申告

住宅医等が①契約前から携わる理由としては、全ては「時間がない」に尽きます。
買主は引き渡し後6ヶ月で工事が完了して住む必要があるのですが、この6ヶ月という期間が中々難しいのはご経験のとおりです。
よって、中古住宅の契約前から携わって設計の期間、見積り調整等の期間を予め見込んでおく必要があります。
もちろん、不動産仲介会社とも連携をとり、住宅ローンの金額(工事金額も含めるのであれば)の調整等、
おおよそ概算の工事費をこの時点で出して上げる必要があります。
私はいつも契約前におよその設計を行って頂き、一応仮で押さえておきます。
そして契約はすぐ行ったとしても、引渡しまで3ヶ月以上延ばすように交渉しています。
それで実施設計期間を確保してもらいます。

忘れてはいけないのは②です。②は検査機関でなくても建築士の資格があれば可能です。
中古住宅の購入の契約後、仮申請を行い、その後に引渡し(所有権の移転)を行う必要があります。

以上を行えば買主は減税のメリットを受けられます。

どれくらいの効果があるのか、
条件は諸条件で異なりますが、

 

1.住宅ローン控除(所得税の減税)
→10年で200万も
2.不動産取得税の減税
→数十万円
3.贈与税の減税(住宅取得資金贈与の特例)
→500万円の差(耐震等級2以上)
4.固定資産税の減税
→翌年1/2
5.火災保険の割引
→10%割引

 

トータルすると結構な金額です。
すなわち、減税等を活用して耐震等級をあげる、そのために優遇を受けられるのですから、
これは必須と言っても過言ではありません。

キノマチ不動産(http://kino-machi.com/

投稿日:2018年02月09日

住宅医コラム 意見交換2018-77


住宅医リレーコラム 2018年2月号
リレーコラムでは毎月住宅医協会の理事等による月替りコラムです。
2月号はWOOD・AC理事で構造設計事務所のTE-DOKを主宰されている河本和義さんのコラムです。

 

「フロッキン狭小壁のご紹介」
河本和義/TE-DOK主宰

 

私どもNPO法人WOODACでは、岐阜県立森林文化アカデミーの小原先生と共同でアカデミーの試験施設オープンラボを利用して、毎年、数多くの木造に関する構造実験を行っています。その一方で、岐阜市の川原町にある江戸末期に建てられた建物で、明治には銀行出張所、それから事務所を経て、今回店舗への改修とのことで、それのお手伝いもさせて頂いております(写真1、2)。
今回は、この改修案件に用いる表題フロッキン狭小壁のご紹介をさせて頂きます。
このフロッキン狭小壁は、株式会社ダイドーハントさんと株式会社栗山百造さんという金物メーカーさんが共同開発された工法になります(図1)。

WOODACとダイドーハントさんの関係ですが、ホールダウン金物や筋かい金物など、色々な金物の構造試験を御依頼頂いています。その縁で、今回の改修にこの工法を用いることとなりました。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、川原町は古い町並みで、間口が狭く奥に長いといった典型的な町屋ですので、狭小壁での補強工法はのどから手がでるほどほしい方法です。この工法、柱芯々間距離350mmで、壁の総幅は455mmで、耐力は、壁倍率換算で7倍となり、これを用いることにより間口に大きな開口をとることができることから利用するに至りました(図2)。

この工法ですが、一般的に使われている合板や筋かい壁のように建築基準法第46条に規定される耐力壁ではありません。また、例えばJパネルのような大臣認定を取得している耐力壁でもありません。一般的に言われている柱芯々間距離が600mm未満の工法のためです。よって、残念ながら、通常、2階建て木造在来軸組住宅を建てるときに行うような壁量計算で用いることはできないため、許容応力度計算を行い運用します。

ある程度の試験データなどがあれば、許容応力度計算で運用することができますが、本工法の場合は、ハウスプラス確認検査株式会社の評定を取得し、適用範囲や運用方法も示されており、運用しやすい形になっています。
今回コラムにご紹介させて頂いたのは、本工法、現時点では、新築が対象となっており、改修にはなかなか使いにくい状態にあるのですが、現在、日本建築防災協会の評価を受ける方向で進められており、弊社の方にコンサルの依頼を頂いております。よって、とんとん拍子でいけば、防災協会の評価を受け、改修に特化した運用方法が示されれば、設計者や工務店さんにとって、改修に使える大きな武器となれるであろうと思いご紹介させて頂きました。

写真1 内観

写真2 外観

図2 フロッキン狭小壁


図1 フロッキン狭小壁工法

※株式会社ダイドーハントは当協会の賛助会員です。
※本商品について詳しく知りたい方は当協会事務局までメールにてご連絡下さい。

投稿日:2018年01月09日

住宅医コラム 意見交換2018-76


住宅医コラム 2018年1月号

建物の耐震性について

山辺豊彦(山辺構造設計事務所)

明けましておめでとうございます。
新しい年を迎え、全国の住宅医協会会員ならびに協力関係者の皆様に、謹んでご挨拶を申し上げます。

昨年末に発表された太平洋岸における巨大地震の発生確率のニュースは、
我が国が地震国である、ということを改めて考えさせられるものでした。
過去の多くの地震被害から、建築基準法は度々改正されてきました。
このうち耐震設計法の変遷から分類すると、
1971年以前は「旧耐震設計法」
1971年以後1981年までを「移行期の設計法」
1981年以降を「新耐震設計法」
と呼んでいます。
現行基準における耐震設計の基本理念は以下のようになっています。

 

表1 耐震設計の基本理念

 

いわゆる「新耐震の建物」とは、1981年以降の新耐震設計法によって設計された建物のことを意味します。
一般的に1981年以降であれば、概ね耐震性に問題はない、と言われています。
問題はない、というのは、震度6強の地震に対して建物が倒壊・崩壊しない、
つまり、下表の損傷ランクⅤは最低限防ぐ、ということです。

 

表2 大地震時における木造建物の損傷イメージ

 

新耐震以降も各地で大きな地震はありましたが、構造設計者である私が特に大きな衝撃を受けたのは、
1995年の阪神・淡路大震災です。都市部での大地震で、木造だけでなく鉄筋コンクリート造(RC造)や
鉄骨造(S造)の建築物・土木構造物も大被害を受け、建築物の倒壊により多くの犠牲者が出たことは残念でなりません。

 

写真1 1階が倒壊した木造住宅

 

写真2 層崩壊した鉄筋コンクリート造の建物

 

このような被害の反省から、2000年に法改正が行われ、また旧基準で設計された古い建物の耐震診断・耐震補強を早急に行う必要性がある、
ということで、公共建築物の耐震化が進められてきました。東京都では緊急輸送道路に面する建築物の耐震診断・耐震補強を進めています。
しかし阪神・淡路大震災から23年経った今でも、耐震化率は思うように上がっていないのが現状です。

木造においては壁量規定の変更はなかったものの、耐力壁に関連する規定がいくつか加わりました。
そのため、1981年以降に建築された”新耐震”であっても、2000年以降でなければ現行基準を満足しているとはいえません。

 

表3 年代別にみる木造建築物の構造的特徴

 

 

また木造住宅の耐震診断・補強は地域差が大きく、特に都市部の木造住宅密集地における耐震化の遅れが問題になっています。
耐震化を進めるには、行政・設計・施工の3者の協力体制づくりが重要であることは言うまでもありません。

住宅医協会は今年も住宅医スクールを各地で開講します。建築に関わる会員ならびにスクール生のみなさんには、
講義だけではなく実測調査や検定会などにも参加され、技術の研鑽を積んで信頼される住宅医として活躍してほしいと思います。