投稿日:2017年06月08日

住宅医コラム 意見交換2017-79


「トイレコラム」
トイレの設備 ~ 設備屋さんから話を聞く
三澤文子(Ms建築設計事務所)

 

住宅医スクールの講義に「設備の劣化診断と対策」があります。設備に関する講義は他にないので、大変貴重だと評判が良いのですが、それは、給排水衛生工事の実務者である講師の清水基之さんの、わかりやすい説明が、人気の秘密なのではないかと思っています。

そこで今回、「トイレ」に絞って、設備屋さんからの「思うところ。」をうかがってみました。

これから先は、対話形式で続けます。

 

清水さん「トイレに関して、ですね。わかりました。最近の便器は節水トイレが多くなりました。

そのため排水のつまりでメンテナンスに出動することが増えてきています。

配管の勾配・管径は、トイレの水量が13リットル程度流れることを想定して設計されています。

近年各メーカーがこぞって節水便器をつくり始め、管径と水量のバランスが取り難くなり、<つまり>が多く発生しているというわけです。

水量が少ないため管内に汚物が滞留することもあります。

節水便器ですが、用をたしたら一度流し、使用後にもう一度流すと効果的です。

ちなみに、女性は<小>でも紙を使用するため、<大>洗浄扱いです。」

 

三澤ふ 「2回流すことになると節水とはいいにくくなりそうですね。」

 

清水さん 「そうですよね。それと、設計士さんへのアドバイスですが、節水トイレの場合は、設計の際に最上流に浴槽がくるような設計が大変好ましいのです。節水タイプでも、詰まりにくくなりますね。」

 

三澤ふ 「そんなこと考えていなかったな~。」

 

清水さん 「それと、ネオレストなどタンクレスや一体型便器は、外見はとてもシンプルでスマートですが、故障した場合通常10年間部品供給はしていますが、それから先はない場合がでてきます。

ことによると、タンクレスなど大変高価なものを10年足らずで取り替える可能性があるので、本来のようにタンク・便器・便座の三点セットでトイレ構成すると、故障は便座だけとなり経済的だと思うのですが。」

 

三澤ふ  「確かに、タンクレスはスッキリしていて、今や、便器はタンクレスが当り前になった感はありますね。

コスト比較と、機能について、住まい手さんに整理して説明できるようにした方が良いですね。」

 

タンクレストイレ:TOTO/CES9897【定価】379000円
          【某社見積もり額】272880円

 

タンク、便器、便座の3点セット。便座を木製のものにしたいという希望があり、この形になった。
清水さん 「それと、設計士さんにお願いしたいことがあるんですが。」

 

三澤ふ 「えっ、なんでも言ってください。」

 

清水さん 「設計士さんに、トイレ内の配管をした後で、追加工事で、トイレ内に手洗器設置を依頼されることがよくあります。

施工が簡単そうに見えますが、床下でトイレ配管より狭い場所での切り回し、なおかつ、トイレを排水すると手洗器の封水を引っ張り、破れる可能性が高くなるんです。

手洗器が必要な場合は土間逃げ配管前に決定をしていただきたいですね。」

 

三澤ふ 「わかりました。気をつけます。というか、私はいつもトイレには手洗器がある設計なので、後から設計変更はあり得ないので・・・」

 

清水さん 「それとトイレの掃除のことですが・・・・」

 

三澤ふ  「あ。トイレの掃除については、次号のテーマなので、今回はここまでということで。」

 

◆次回は、トイレの掃除がテーマです。設備屋さんの「掃除についてのご意見」を聞いてみます。

投稿日:2017年04月01日

住宅医コラム 意見交換2017-77


「ためしてガッテン・トイレ事件」ってご存知ですか? 2015年9月2日放映のNHKのTV番組「ためしてガッテン」のタイトルが「家族が涙!トイレ問題大解決スペシャル」。トイレ問題となれば、みないわけにはいきません。さすが、ためしてガッテン。実験をもとにした検証により、洋便器を使って男性が立小便をした際の尿ハネの実態を明らかにしていたのです・・・今年は、健康にも直結する「トイレ」に注目して、住宅設計のポイントを抑えていきたいと思います。今月の「トイレコラム」は尿ハネ対策の仕上げ事例のご紹介から。

 

「トイレコラム」

 

トイレの仕上げ ~ 実用面と豊かさと。

 

三澤文子(MSD)

 

「ためしてガッテン・トイレ事件」ってご存知ですか? 2015年9月2日放映のNHKのTV番組「ためしてガッテン」のタイトルが「家族が涙!トイレ問題大解決スペシャル」。トイレ問題となれば、みないわけにはいきません。さすが、ためしてガッテン。実験をもとにした検証により、洋便器を使って男性が立小便をした際の尿ハネの実態を明らかにしていたのです。
さて、その数日後、設計の打合せの際、住まい手さんから「ためしてガッテンをみたんですが、尿ハネが凄くてビックリ。小便器をつけることはできませんか?」とのお話でした。小便器をつけるとなると、それなりの広さが必要なので、プランに影響します。その数日後、他の住宅の設計打合せでは、「うちは座ってしてもらうので、大丈夫。それにしても・・・」と「ためしてガッテン」の話題が続きます。そんなことで、この騒動を「ためしてガッテン・トイレ事件」と私が呼んでいるのです。
トイレの尿ハネについては、それまで住まい手さんとの打ち合わせで、それほど話題にならなかったものの、便器周りの仕上げには、それなりの配慮をしてきました。私の住宅設計において、トイレの壁の仕上げは、木材と珪藻土の2種類のみですが、便器周りは、必ず板張りの仕上げにしています。ただこの番組が話題になって尿ハネを意識してから、便器周りのみ台所の壁に使うキッチンパネルを使ってみました。トイレの幅が狭い(内法790㎜)場合です。

 

 腰は杉板張り。便器の周りのみチリ無しでキッチンパネル貼。

 

白いキッチンパネルは、艶消しを使えば、嫌み無く、木材や珪藻土にも馴染むと考えてのことです。また、機能的に水拭き掃除が容易だということが一番の理由ですが。
また、床は他の部屋と同じ板張りですが、便器周りに大判のタイルを貼ることがよくあります。実際、このような狭い範囲で効果はどうなのか?そもそも床だけでいいのか?と考えてしまいます。

 

 

拭きやすい材料を使っても、床や壁の拭き掃除が必要。ということになりますので、掃除を頻繁にするのか、しないのかという問題になってきます。掃除をマメにする家では、板張りでもいい味に変化していくだろうし、しない家では、仕上げで配慮するほか、小便器をつけるか、男性にも座って使用して頂くことをお願いたいものです。

さて、仕上げについては機能的なことも大切ですが、その他にも大切な要素があります。というのは、トイレは一人きりになる大切な空間。家族が使うのは基本ですが、お客様も使います。

トイレというと、ある大工さんの発言が忘れられません。「リビングなどでは、家族と話をしたりテレビをみたり、日々暮らしていて、部屋の隅々をじっと見る機会は意外に少ないものだが、トイレでは、じっと隅を見たりする。だからトイレの仕上げや造作は気合をいれて入念につくるようにしているよ。」
全く同感です。私も、どこに行ってもトイレ内の観察をしてしまいますし、良いトイレの店舗や旅館は評価が高くなるものです。

そこで、お仕事柄、来客が多いお宅のメイントイレの壁に、漆塗りの板を張りました。

土間サロンにある玄関。その近くにあるメイントイレ。天井は大きくアールになっていて、柿渋紙貼り
床は桧板張り。便器下には大判のタイル。

 

 

漆は殺菌効果があると言われています。具体的にそのような利点があるのか今のところ追求していませんが、漆に殺菌効果があると聞いただけで、何か清らかな気がするものです。床は桧板ですが、便器の下には大判のタイルを貼っています。

 

 

天井は柿渋紙貼です。私にとって、この柿渋紙がトイレの天井仕上げで定番になっているのは、経年変化とともに、より一層色が濃くなり、深みが増すといった魅力ある材料だからです。
じっとしている空間こそ、他にはない仕上げ材料を。ということで、機能面ではあまり追及されない天井に、いち押しの素材を使っているというわけです。

そもそも、柿渋紙を、最初に使ったのが、我が家のトイレ。すでに25年ほど前になりますが、その時に貼った柿渋紙が、年を経ることに良い味わいになっていて、訪れる人たちに自慢しています。

 

トイレの巾(内法)955㎜。床は厚30の桧板。良い色に経年変化している。

 

トイレでは、一人でじっと眺めているせいで、素材の特性や、おさまりのことなど、気づきが多いというわけです。

投稿日:2017年03月10日

住宅医コラム 意見交換2017-76


ご病気になる前にトイレを改修できたケースのご紹介。また、すでにご病気にかかり、不自由な生活をされているご主人のために、トイレをなんとかしたい。という動機から、改修の相談を受けたケースのご紹介・・・今年は、健康にも直結する「トイレ」に注目して、住宅設計のポイントを抑えていきたいと思います。今月の、トイレコラム」は、高齢者のトイレについてお話です。

 

 

 

「トイレコラム」

高齢者のトイレ ~ ビフォア―・アフター

三澤文子(MSD)

 

1964年、東京オリンピックの前の年、新しい家ができました。私の実家です。当時、まだ珍しい水洗トイレがつきました。それまでは、主屋から30mほど離れた汲み取り便所に行かなければならなかったのですから、家の中にあるトイレ、それも水洗ともなれば、天にも上がる気分だったのです。個室のある2階にはなんと洋式トイレ。ところが1階のお客様も使うメイントイレが階段の下の、俗に言う汽車便(段差のある和式便所)だったのです。当時は、家族のだれもが、そのバランスの悪さに気付くことも無く、狭いトイレを有り難く使っていましたが、さすがに高齢の祖母のために、25年ほど経ち、父が洋式トイレに替えた時は、膝が悪い祖母は涙したものでした。ただし相変わらず階段の下です。その後、住宅の設計をしている私が、とうとう改修することになりました。

 

改修前の階段下トイレ

 

柿渋紙を貼ったトイレの引き戸

 

既存の窓が見える、奥行きのあるトイレに。

 

床、壁は桧板張

 

トイレの前の1坪ほどの無駄に広いホールも含めてトイレにしたことで、かなりゆったりしたトイレになりました。当時80歳前だった母は「寝れるほど広いね。」と大喜びでした。そんな母も新しいトイレを2年間、使うことなく亡くなってしまいました。母を介護した義姉から、「トイレが広くて助かった。」と言われたことも忘れられません。

 

そんな経験もあり、過酷なトイレを使って過ごされている高齢者に出会うと、いたたまれなくなります。とにかく、1日でも早く、トイレをつくり変えてあげたい。そんな、焦った気持ちにさえなるのです。

 

 

改修のご相談で出会ったこの家のトイレは、庭にある、いわば離れのトイレ。昔の汲み取りトイレの名残です。80歳を越したおばあ様は、毎晩ご自分の寝床からこのトイレまで、長い道のりを往復するのです。冬の寒さを想像すると、身が縮む思いです。

 

小便器の右手がトイレの扉。

 

築150年を超えたこの家は、性能向上の改修がされました。もちろんトイレは家の中、茶の間の前の、玄関室につくりました。おばあ様が寝室にしている座敷からは、茶の間を経てトイレに行くことになったのですが、今までのことを思えば、「手が届くほどの距離よ。」と言われ、とても喜ばれました。

 

ゆとりの広さのトイレ。

 

トイレットペーパーホルダーとリモコンを取り付ける腰壁は手摺にもなる造り。

 

改修して3年後くらいたった頃メンテナンスで訪問して、相変わらずお元気そうなおばあ様に再会することができました。でも、聞けば、1年前、ご病気なり半年ほど床に伏していたとのこと。「母が病気の時は、茶の間にベッドを設けて介護していましたが、暖かい家になったことや、トイレが近くになったことが、本当に有り難かった。」と言われ、胸をなでおろす気持ちになりました。

 

 

このように、ご病気になる前にトイレを改修できたケースばかりでなく、すでにご病気にかかり、不自由な生活をされているご主人のために、トイレをなんとかしたい。という動機から、改修の相談を受けたことがあります。不便なトイレとは、やはりあの汽車便です。

 

これが汽車便。出入口の幅は600mmほど。床には段差があります。

 

白い壁と板張りの壁で明るく清潔感がある。

 

畳1帖の広さだったトイレの巾を広げ、ゆとりの広さに。また、出入口は800㎜ほどの引き戸。そして手すりもしっかり設けました。

改修して、数年後に、ご主人はお亡くなりになったのですが、おそらく、機嫌よく使って頂けていたのではないかと思っています。