投稿日:2018年07月09日

住宅医コラム 意見交換2018-82


住宅医リレーコラム 2018年7月号
リレーコラムでは毎月住宅医協会の理事等による月替りコラムです。
7月号はタグチホーム株式会社の田口 元美氏のコラムです。

 

住宅医とホームインスペクション(状況調査)

本年4月より宅建業法が改正され、既存住宅の売買に際して、建築士
による状況調査の有無を説明する事が義務化された。
すでに住宅医の皆さんも既存住宅状況調査技術者の登録を行った方も
あるだろう。しかし義務化といっても状況調査というものがある事を
説明し、その実施の有無や、実施してあれば劣化の有無を明示する
必要がある。

しかし、住宅医が行う調査と違い調査範囲は狭く、また構造と雨漏り
に関する部分だけが調査範囲である。(給排水はオプション)
それ以外の部分に劣化や改修が必要となる様な部分があっても報告を
する義務もない。ただし虚偽の調査報告を行うと建築士として罰則を
受けることとなるので注意が必要だ。

ただ床下や屋根裏に潜らず調査を行い報告を行うことはリスクがある。
また、点検口がない場合でも「調査できなかった」で良い。
この状況調査の登録建築士は全国に2万人を越えるそうだが、実際に
住宅の劣化状況を調査して判断できる建築士はどれだけいるのだろう?

たかだか半日の講習と考査で生まれた状況調査技術者だか、住宅医と
比較して粗悪乱造ではないかと危惧している。

今後、彼らが既存住宅の診断について住宅医スクールで多くを学び、
さらにスキルアップして、既存住宅の売買でのトラブルが減少し、
さらに原状回復のみでなく、性能向上の改修工事にも取り組み、
住宅医として共に学び実践してもらえることに期待する。

投稿日:2018年06月07日

住宅医コラム 意見交換2018-81


住宅医リレーコラム 2018年6月号
リレーコラムでは毎月住宅医協会の理事等による月替りコラムです。
6月号は滝口建築スタジオ代表の滝口泰弘氏のコラムです。

既存住宅の補助事業(公募中、国の代表的なもの)

2018年度が始まり5月~6月は様々な補助事業の公募が行われる時期です。住宅医協会も「良質住宅ストック形成のための市場環境整備事業(国交省)」に数年前から参画していますが、住宅医協会の前身である住宅医ネットワークも、「超長期優良住宅先導的モデル事業」という国交省の補助事業がきっかけで立ち上がりました。
今回のコラムでは、現在募集中の国の代表的な補助事業を幾つかピックアップしてみました。また、耐震改修や省エネ改修だけでなく、伝統的民家活用推進、中古住宅取得リフォーム支援、空き家改修など、各自治体独自の新たな補助事業も登場しているので、地域で使える事業も調べて挑戦してみてはいかがでしょうか。

●長期優良住宅化リフォーム推進事業 (応募期間:4/10~11/30)

既存住宅(住宅以外は不可)のインスペクション、長期優良住宅レベルのリフォーム、履歴・維持保全計画作成、を条件として、最大100~250万円/戸(補助対象費用の1/3)を補助。三世代同居対応の場合は上限50万円/戸を加算。
・受付期間内に事業者登録を行う通年申請タイプ(11/30まで)
・安心R住宅の商標付与団体として登録された団体が提案する事前採択タイプ(安心R住宅)(9/28まで)
・事前採択タイプ(提案型)(※終了)
の3種類あり、今年度から「安心R住宅」の枠が新設。
詳しくは、
国交省ホームページ http://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000786.html
建築研究所ホームページ https://www.kenken.go.jp/chouki_r/

 

●空き家対策の担い手強化・連携モデル事業(応募期間:5/24~6/25)

空き家に関する多様な相談にワンストップで対応できる人材の育成、地方における専門家等と連携した相談体制を構築する取組や、空き家の発生抑制、除却、利活用等における高度なノウハウを要する事例を蓄積する取組について、地方公共団体、専門家等との連携を条件として関連する費用を補助。
詳しくは、
国交省ホームページ http://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000122.html
価値総合研究所ホームページ https://www.vmi.co.jp/jpn/consulting/seminar/2018/akiya-ninaite.html

 

●住宅の省エネ・断熱リノベーション支援事業(応募期間:戸建て(個別タイプ)5/7~6/29、7/17~8/10)

戸建て・集合住宅を対象に、事前に登録された高性能建材の使用、15%以上の省エネ効果、を条件に補助。上限は戸建て住宅:120万円/戸、集合住宅:15万円/戸。短工期で施工可能な高性能断熱パネルや蓄熱素材等を用いた次世代建材コースは、戸建て住宅:200万円/戸、集合住宅:125万円/戸。
詳しくは、
環境共創イニシアチブホームページ https://sii.or.jp/moe_material30/overview.html

 

●既存建築物省エネ化推進事業(建築物の改修工事) (応募期間:第1回4/24~6/6、第2回は8月頃予定)

外皮の省エネ改修、15%以上の省エネ効果、一定の省エネルギー性能、エネルギー使用量計測、バリアフリー改修含め500万円以上の事業費を条件に、最大5,000万円/件(補助対象費用の1/3、設備改修は2,500万円まで)を補助。
詳しくは、
国交省ホームページ http://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000790.html

 

●既存建築物省エネ化推進事業(省エネルギー性能の診断・表示) (応募期間:4/24~9/28)

300㎡以上の既存住宅・建築物について、省エネルギー性能の診断、認証、表示に係る費用の1/3を補助。省エネルギー性能表示の普及に資する取組で波及効果が高いと認められた場合は定額補助。
詳しくは、
国交省ホームページ http://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000791.html
環境共生住宅推進協議会ホームページ https://www.kkj.or.jp/kizon_se/index.html

※各省庁の補助事業一覧ページはこちら
(国土交通省:平成30年度公募一覧) http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_tk_000040.html
(環境省:H30年度補助・委託事業) http://www.env.go.jp/earth/ondanka/biz_local.html
(経済産業省(資源エネルギー庁)平成30年度公募一覧) http://www.enecho.meti.go.jp/appli/public_offer/
(林野庁:逆引き事典) https://www.gyakubiki.maff.go.jp/appmaff/input?domain=R

投稿日:2018年05月08日

住宅医コラム 意見交換2018-80


住宅医リレーコラム 2018年5月号
リレーコラムでは毎月住宅医協会の理事等による月替りコラムです。
5月号は特定非営利活動法人木の家だいすきの会 代表理事の鈴木進氏のコラムです。

 

人生100年時代の「地域型住宅」トータルサポートシステム(試案)の提案

1.住宅医の職能の確立を目指して

ここでいう 「地域型住宅」とは、国内の森の木を使用し、地域に受け継がれた職人の技を活かした木造軸組工法による住宅といった程度のゆるい定義です。住宅医協会、NPO木の家だいすきの会ほか、金融機関、宅建事業者、工務店、設計事務所等が参加する「地域型住宅リノベーション推進協議会」を立ち上げ、平成29年度住宅ストック維持向上促進事業(国土交通省助成)に応募し、3年計画の取組として、採択されましたので、この場をかりて初年度の取組の成果を報告したいと思います。

(1)人生100年時代が消費者意識を変える

人生100年時代のインパクトは住宅においても無縁ではありません。建物の耐久性に関する関心がトップを占めるという調査も報告されるようになり、消費者の意識も長持ちする住まいへの関心が高まっています。住まいを2度、3度と建て替えることは難しく、30代~40代あるいは定年を契機にして建てた住まいを大切に住み続ける必要性が今後、ますます高まります。

 

柱・梁・土台、基礎などの骨組みを基準にした木造戸建住宅の寿命は約100年までもたせることが可能と言われていますが、100年住み続けるには、適切に乾燥が保たれていて、シロアリや腐朽の被害がないことが大前提となります。住宅は経年劣化によって屋根や外壁などが傷み、これをほっておくと雨漏り、水漏れ、結露などの危険にさらされます。そうしたリスクを早期発見し、早期に手当する「住まいの健康管理」が、住まいのライフサイクルコストを抑えることにつながります。

また、物的な耐久性だけでなく、ライフスタイルの変化によるプランの変更、耐震性、温熱環境、防耐火性などの住宅性能向上要求への対応といった生活ニーズの変化に対する対応力が住宅の寿命に大きく影響します。さらに、転勤や家族の介護などの環境変化により移転しなければならないといった事情の変化もないとは言えません。

 

(2)人生100年時代の地域型住宅トータルサポートシステム構築のねらい

「地域型住宅トータルサポートシステム(試案)」は、以下の3つのニーズにトータルにこたえることで、人生100年時代に対応した住宅の維持管理システム構築をねらいとしています。

  • 適切な点検と予防的な補修により住宅の本来の耐久性を維持向上させる
  • 生活の変化に対応した性能向上改修を合理的な診断とコストにより実現する
  • 転勤や介護などの事情の変化により売却せざるをえない場合、建物の価値が適正に評価され売却できる。

また、住宅の建設にかかわった設計者や施工者、またそのグループが、住まい手向けのサポートを包括的に実施するだけでなく、売却の際に購入者の改修ニーズにも対応できる体制を構築することで、住宅価値の維持向上を継続的に見守る「住宅医」としての職能を確立することをねらいとしています。

 

2.地域型住宅トータルサポートシステム構築の試案

(1)3つの事業モデル

□住まいの健康管理サポート事業

住まいの健康管理サポート事業は住宅本来の耐久性を維持向上させるためのサービスで、住宅履歴情報サービス、住まいの健康管理コンサルティング、設備の延長保証、修繕積立金、定期的な点検・診断、予防的補修の各サービスから構成されます。

□リノベーション(性能向上改修)事業

リノベーション(性能向上改修)事業は、生活ニーズの変化に対応して、間取りの変更及び住宅性能の向上等を図る大規模改修で、改修前後の性能向上効果を適切に評価するための詳細な点検・診断、合理的な大規模改修技術、改修工事費の概算システム、改修前後の使用価値評価システム、瑕疵担保保険等のサービスから構成されます。

□リノベーション仲介事業

リノベーション仲介事業は、転勤や介護などの事情の変化により移転をせざるを得なくなった方向けに、地域型住宅の売却をサポートするサービスです。また、買主向けに購入時の改修やその後の維持管理サービスを提供し、設計者、工務店等が住宅価値の維持向上を継続的に見守る仕組みを構築します。

 

(2)11の基本サービス

3つの事業モデルは、以下の11の基本サービスを組み合わせ、トータライズして提供します。

  • 住宅履歴情報サービス
  • 住まいの健康管理相談
  • 設備の延長保証
  • 修繕積立金
  • 点検・診断
  • 補修・改修・工事費概算システム
  • 戸建住宅の価格査定
  • 瑕疵担保保険
  • 不動産仲介
  • リフォーム一体ローン
  • 住宅の認定

 

 

(3)構成員によるサポートとアウトソーシング

地域型住宅リノベーション推進協議会は、武蔵野地域(埼玉県及び東京都西部)をベースに事業を展開する企業が構成員になっています。先の11の基本サービスは、構成員が展開可能な事業内容(新商品開発を含む)をふまえ、構成員が提供するサービスとアウトソーシング(外部連携)によるサービスに分けれますが、この組み合わせは地域の事情によりもちろん変わります。

今回、特徴的な取り組みは西川材の産地に本店をかまえる飯能信用金庫が「リフォーム一体ローン」及び「リバースモーゲージ」の開発に取り組んでいる点です。

 

表1.1 武蔵野地域(埼玉県及び東京都西部)におけるサービスの提供主体とアウトソーシング(試案)

基本サービス サービス提供者
 

構成員によるサービスの提供

住宅履歴情報サービス NPO木の家だいすきの会
住まいの健康管理相談 設計者、工務店、木の家だいすきの会
点検・診断 住宅医協会(点検・診断方法)

設計者・工務店

補修・改修・工事費概算システム 住宅医協会
不動産仲介 ㈱町田エステート
リフォーム一体ローン

リバースモーゲージ

飯能信用金庫
 

アウトソーシング

戸建住宅の価格査定 公益財団法人不動産流通推進センター
設備の延長保証 民間企業
修繕積立金 民間企業または損保会社
瑕疵担保保険 瑕疵担保責任法人

 

3.今後の取組

平成30年度は、事業モデルを精査し、実際にサービス可能な体制を整え、国土交通省にシステム開発の完了報告を提出する予定です。事業モデルとしては、工務店向け事業モデルを基本に、設計者向け事業モデル、NPO木の家だいすきの会のようなグループ事業モデルを想定しています。システム開発完了報告が承認されれば、このトータルサポートシステムにのっとった住宅の改修等に上限100万円の補助が認められる予定で、平成31年度は実際の改修事業を募集したいと考えています。