投稿日:2017年04月01日

住宅医コラム 意見交換2017-77


「ためしてガッテン・トイレ事件」ってご存知ですか? 2015年9月2日放映のNHKのTV番組「ためしてガッテン」のタイトルが「家族が涙!トイレ問題大解決スペシャル」。トイレ問題となれば、みないわけにはいきません。さすが、ためしてガッテン。実験をもとにした検証により、洋便器を使って男性が立小便をした際の尿ハネの実態を明らかにしていたのです・・・今年は、健康にも直結する「トイレ」に注目して、住宅設計のポイントを抑えていきたいと思います。今月の「トイレコラム」は尿ハネ対策の仕上げ事例のご紹介から。

 

「トイレコラム」

 

トイレの仕上げ ~ 実用面と豊かさと。

 

三澤文子(MSD)

 

「ためしてガッテン・トイレ事件」ってご存知ですか? 2015年9月2日放映のNHKのTV番組「ためしてガッテン」のタイトルが「家族が涙!トイレ問題大解決スペシャル」。トイレ問題となれば、みないわけにはいきません。さすが、ためしてガッテン。実験をもとにした検証により、洋便器を使って男性が立小便をした際の尿ハネの実態を明らかにしていたのです。
さて、その数日後、設計の打合せの際、住まい手さんから「ためしてガッテンをみたんですが、尿ハネが凄くてビックリ。小便器をつけることはできませんか?」とのお話でした。小便器をつけるとなると、それなりの広さが必要なので、プランに影響します。その数日後、他の住宅の設計打合せでは、「うちは座ってしてもらうので、大丈夫。それにしても・・・」と「ためしてガッテン」の話題が続きます。そんなことで、この騒動を「ためしてガッテン・トイレ事件」と私が呼んでいるのです。
トイレの尿ハネについては、それまで住まい手さんとの打ち合わせで、それほど話題にならなかったものの、便器周りの仕上げには、それなりの配慮をしてきました。私の住宅設計において、トイレの壁の仕上げは、木材と珪藻土の2種類のみですが、便器周りは、必ず板張りの仕上げにしています。ただこの番組が話題になって尿ハネを意識してから、便器周りのみ台所の壁に使うキッチンパネルを使ってみました。トイレの幅が狭い(内法790㎜)場合です。

 

 腰は杉板張り。便器の周りのみチリ無しでキッチンパネル貼。

 

白いキッチンパネルは、艶消しを使えば、嫌み無く、木材や珪藻土にも馴染むと考えてのことです。また、機能的に水拭き掃除が容易だということが一番の理由ですが。
また、床は他の部屋と同じ板張りですが、便器周りに大判のタイルを貼ることがよくあります。実際、このような狭い範囲で効果はどうなのか?そもそも床だけでいいのか?と考えてしまいます。

 

 

拭きやすい材料を使っても、床や壁の拭き掃除が必要。ということになりますので、掃除を頻繁にするのか、しないのかという問題になってきます。掃除をマメにする家では、板張りでもいい味に変化していくだろうし、しない家では、仕上げで配慮するほか、小便器をつけるか、男性にも座って使用して頂くことをお願いたいものです。

さて、仕上げについては機能的なことも大切ですが、その他にも大切な要素があります。というのは、トイレは一人きりになる大切な空間。家族が使うのは基本ですが、お客様も使います。

トイレというと、ある大工さんの発言が忘れられません。「リビングなどでは、家族と話をしたりテレビをみたり、日々暮らしていて、部屋の隅々をじっと見る機会は意外に少ないものだが、トイレでは、じっと隅を見たりする。だからトイレの仕上げや造作は気合をいれて入念につくるようにしているよ。」
全く同感です。私も、どこに行ってもトイレ内の観察をしてしまいますし、良いトイレの店舗や旅館は評価が高くなるものです。

そこで、お仕事柄、来客が多いお宅のメイントイレの壁に、漆塗りの板を張りました。

土間サロンにある玄関。その近くにあるメイントイレ。天井は大きくアールになっていて、柿渋紙貼り
床は桧板張り。便器下には大判のタイル。

 

 

漆は殺菌効果があると言われています。具体的にそのような利点があるのか今のところ追求していませんが、漆に殺菌効果があると聞いただけで、何か清らかな気がするものです。床は桧板ですが、便器の下には大判のタイルを貼っています。

 

 

天井は柿渋紙貼です。私にとって、この柿渋紙がトイレの天井仕上げで定番になっているのは、経年変化とともに、より一層色が濃くなり、深みが増すといった魅力ある材料だからです。
じっとしている空間こそ、他にはない仕上げ材料を。ということで、機能面ではあまり追及されない天井に、いち押しの素材を使っているというわけです。

そもそも、柿渋紙を、最初に使ったのが、我が家のトイレ。すでに25年ほど前になりますが、その時に貼った柿渋紙が、年を経ることに良い味わいになっていて、訪れる人たちに自慢しています。

 

トイレの巾(内法)955㎜。床は厚30の桧板。良い色に経年変化している。

 

トイレでは、一人でじっと眺めているせいで、素材の特性や、おさまりのことなど、気づきが多いというわけです。

投稿日:2017年03月10日

住宅医コラム 意見交換2017-76


ご病気になる前にトイレを改修できたケースのご紹介。また、すでにご病気にかかり、不自由な生活をされているご主人のために、トイレをなんとかしたい。という動機から、改修の相談を受けたケースのご紹介・・・今年は、健康にも直結する「トイレ」に注目して、住宅設計のポイントを抑えていきたいと思います。今月の、トイレコラム」は、高齢者のトイレについてお話です。

 

 

 

「トイレコラム」

高齢者のトイレ ~ ビフォア―・アフター

三澤文子(MSD)

 

1964年、東京オリンピックの前の年、新しい家ができました。私の実家です。当時、まだ珍しい水洗トイレがつきました。それまでは、主屋から30mほど離れた汲み取り便所に行かなければならなかったのですから、家の中にあるトイレ、それも水洗ともなれば、天にも上がる気分だったのです。個室のある2階にはなんと洋式トイレ。ところが1階のお客様も使うメイントイレが階段の下の、俗に言う汽車便(段差のある和式便所)だったのです。当時は、家族のだれもが、そのバランスの悪さに気付くことも無く、狭いトイレを有り難く使っていましたが、さすがに高齢の祖母のために、25年ほど経ち、父が洋式トイレに替えた時は、膝が悪い祖母は涙したものでした。ただし相変わらず階段の下です。その後、住宅の設計をしている私が、とうとう改修することになりました。

 

改修前の階段下トイレ

 

柿渋紙を貼ったトイレの引き戸

 

既存の窓が見える、奥行きのあるトイレに。

 

床、壁は桧板張

 

トイレの前の1坪ほどの無駄に広いホールも含めてトイレにしたことで、かなりゆったりしたトイレになりました。当時80歳前だった母は「寝れるほど広いね。」と大喜びでした。そんな母も新しいトイレを2年間、使うことなく亡くなってしまいました。母を介護した義姉から、「トイレが広くて助かった。」と言われたことも忘れられません。

 

そんな経験もあり、過酷なトイレを使って過ごされている高齢者に出会うと、いたたまれなくなります。とにかく、1日でも早く、トイレをつくり変えてあげたい。そんな、焦った気持ちにさえなるのです。

 

 

改修のご相談で出会ったこの家のトイレは、庭にある、いわば離れのトイレ。昔の汲み取りトイレの名残です。80歳を越したおばあ様は、毎晩ご自分の寝床からこのトイレまで、長い道のりを往復するのです。冬の寒さを想像すると、身が縮む思いです。

 

小便器の右手がトイレの扉。

 

築150年を超えたこの家は、性能向上の改修がされました。もちろんトイレは家の中、茶の間の前の、玄関室につくりました。おばあ様が寝室にしている座敷からは、茶の間を経てトイレに行くことになったのですが、今までのことを思えば、「手が届くほどの距離よ。」と言われ、とても喜ばれました。

 

ゆとりの広さのトイレ。

 

トイレットペーパーホルダーとリモコンを取り付ける腰壁は手摺にもなる造り。

 

改修して3年後くらいたった頃メンテナンスで訪問して、相変わらずお元気そうなおばあ様に再会することができました。でも、聞けば、1年前、ご病気なり半年ほど床に伏していたとのこと。「母が病気の時は、茶の間にベッドを設けて介護していましたが、暖かい家になったことや、トイレが近くになったことが、本当に有り難かった。」と言われ、胸をなでおろす気持ちになりました。

 

 

このように、ご病気になる前にトイレを改修できたケースばかりでなく、すでにご病気にかかり、不自由な生活をされているご主人のために、トイレをなんとかしたい。という動機から、改修の相談を受けたことがあります。不便なトイレとは、やはりあの汽車便です。

 

これが汽車便。出入口の幅は600mmほど。床には段差があります。

 

白い壁と板張りの壁で明るく清潔感がある。

 

畳1帖の広さだったトイレの巾を広げ、ゆとりの広さに。また、出入口は800㎜ほどの引き戸。そして手すりもしっかり設けました。

改修して、数年後に、ご主人はお亡くなりになったのですが、おそらく、機嫌よく使って頂けていたのではないかと思っています。

 

 

投稿日:2017年02月08日

住宅医コラム 意見交換2017-75


最近の家は2階にトイレを設けることは当たり前になって、小さな家でもトイレが2つあることは標準のように思いますが、既存の住宅では、寝室のある2階にトイレの無いことが良くあります。60歳代のご夫妻で寝室が2階の場合、「2階にトイレを設けましょうか。」とお尋ねしますが、「まだまだ大丈夫です。」とのお返事があることも・・・今年は、健康にも直結する「トイレ」に注目して、住宅設計のポイントを抑えていきたいと思います。今月の、「トイレコラム」は、トイレの位置についてお話です。

 

 

 

「トイレコラム02」

トイレと寝室の関係 ~ 1階メイントイレの充実を。

三澤文子(MSD

 

 

最近の家は2階にトイレを設けることは当たり前になって、小さな家でもトイレが2つあることは標準のように思いますが、既存の住宅では、寝室のある2階にトイレの無いことが良くあります。60歳代のご夫妻のすまいで、2階に寝室がある場合、「2階にトイレを設けましょうか。」とお尋ねしますが、「費用もかかりますし、まだまだ大丈夫です。」とのお返事があることも。逆に50歳代でも、今まで何かしらの病気をされた方は、寝室の中にトイレを望まれることもあります。

 

 

(クリックで拡大表示)

上の図は北東の寝室に併設するクローゼット周りにトイレを設けた事例です。「ホテルの客室のようなトイレを・・・」と言われてもスペース的に大きいトイレはつくりにくものの、いずれ高齢になってきて寝室にいる時間が長くなるようなことがあれば、介護のしやすいトイレが寝室の中に内にあることは、大変便利なことになるでしょう。

 

  

そこで、かなりコンパクトなトイレになりましたが、観音開きのドアのつくりにして、通常は片方のみを使い、いざとなったら観音開きに、というアイデアです。今のところは、掃除がしやすい。と喜んで頂いています。

 

 

 

さて、2階に寝室のある60歳代前半のご夫妻のお宅を改修させて頂きました。

2階にはトイレが無く、1階の玄関正面にトイレがあります。

 

改修前平面図(クリックで拡大表示)

 

玄関正面のトイレ。ドアの開口内法は565㎜、広さも畳1帖以下。

 

階段は急で、夜中にこの階段を下りて1階のトイレに行くのはなかなか辛いものがあると思い、2階にトイレの設置についてご希望をお聞きしましたが、「慣れているので、無くても大丈夫。」とのこと。「いずれ1階の客間を寝室にする時が来るだろうから。」とのお話でした。

確かに、この家に住み慣れているお二人で、夜中に頻繁にトイレに行くことが無ければ、2階にトイレがどうしても必要とは感じないのでしょう。このケースのように、いずれ1階に寝室として使えるお部屋があれば、あえて費用をかけて2階にトイレをつくる必要はないかもしれません。

しかしながら 1階の玄関正面のメイントイレは寒そうですし、トイレ自体が狭い。また、玄関を入って最初に目にするのがトイレの扉というのも、豊かさがありません。

 

改修後平面図(クリックで拡大表示)

 

開口幅も860㎜に。トイレの広さ(内法)1290㎜×1830㎜

 

そこで、玄関の位置をかえ、トイレも玄関ホールから廻りこんだ位置にして、将来寝室になるだろう、客間に近づけました。和室の客間は、南のリビングにもつながっていて、当分は茶の間のように使うことができます。

高齢になった場合、平屋で暮らすのがベストであることは間違いありません。2階建ての家に暮らす場合、10年以上先のことを想像して、1階のつくり方、つまり寝室に使える部屋とトイレとの関係も考える必要があります。

高齢に向かう方のお住まいでは、1階メイントイレの充実を目指したほうが良いかと思います。