投稿日:2018年02月09日

住宅医コラム 意見交換2018-77


住宅医リレーコラム 2018年2月号
リレーコラムでは毎月住宅医協会の理事等による月替りコラムです。
2月号はWOOD・AC理事で構造設計事務所のTE-DOKを主宰されている河本和義さんのコラムです。

 

「フロッキン狭小壁のご紹介」
河本和義/TE-DOK主宰

 

私どもNPO法人WOODACでは、岐阜県立森林文化アカデミーの小原先生と共同でアカデミーの試験施設オープンラボを利用して、毎年、数多くの木造に関する構造実験を行っています。その一方で、岐阜市の川原町にある江戸末期に建てられた建物で、明治には銀行出張所、それから事務所を経て、今回店舗への改修とのことで、それのお手伝いもさせて頂いております(写真1、2)。
今回は、この改修案件に用いる表題フロッキン狭小壁のご紹介をさせて頂きます。
このフロッキン狭小壁は、株式会社ダイドーハントさんと株式会社栗山百造さんという金物メーカーさんが共同開発された工法になります(図1)。

WOODACとダイドーハントさんの関係ですが、ホールダウン金物や筋かい金物など、色々な金物の構造試験を御依頼頂いています。その縁で、今回の改修にこの工法を用いることとなりました。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、川原町は古い町並みで、間口が狭く奥に長いといった典型的な町屋ですので、狭小壁での補強工法はのどから手がでるほどほしい方法です。この工法、柱芯々間距離350mmで、壁の総幅は455mmで、耐力は、壁倍率換算で7倍となり、これを用いることにより間口に大きな開口をとることができることから利用するに至りました(図2)。

この工法ですが、一般的に使われている合板や筋かい壁のように建築基準法第46条に規定される耐力壁ではありません。また、例えばJパネルのような大臣認定を取得している耐力壁でもありません。一般的に言われている柱芯々間距離が600mm未満の工法のためです。よって、残念ながら、通常、2階建て木造在来軸組住宅を建てるときに行うような壁量計算で用いることはできないため、許容応力度計算を行い運用します。

ある程度の試験データなどがあれば、許容応力度計算で運用することができますが、本工法の場合は、ハウスプラス確認検査株式会社の評定を取得し、適用範囲や運用方法も示されており、運用しやすい形になっています。
今回コラムにご紹介させて頂いたのは、本工法、現時点では、新築が対象となっており、改修にはなかなか使いにくい状態にあるのですが、現在、日本建築防災協会の評価を受ける方向で進められており、弊社の方にコンサルの依頼を頂いております。よって、とんとん拍子でいけば、防災協会の評価を受け、改修に特化した運用方法が示されれば、設計者や工務店さんにとって、改修に使える大きな武器となれるであろうと思いご紹介させて頂きました。

写真1 内観

写真2 外観

図2 フロッキン狭小壁


図1 フロッキン狭小壁工法

※株式会社ダイドーハントは当協会の賛助会員です。
※本商品について詳しく知りたい方は当協会事務局までメールにてご連絡下さい。

投稿日:2018年01月09日

住宅医コラム 意見交換2018-76


住宅医コラム 2018年1月号

建物の耐震性について

山辺豊彦(山辺構造設計事務所)

明けましておめでとうございます。
新しい年を迎え、全国の住宅医協会会員ならびに協力関係者の皆様に、謹んでご挨拶を申し上げます。

昨年末に発表された太平洋岸における巨大地震の発生確率のニュースは、
我が国が地震国である、ということを改めて考えさせられるものでした。
過去の多くの地震被害から、建築基準法は度々改正されてきました。
このうち耐震設計法の変遷から分類すると、
1971年以前は「旧耐震設計法」
1971年以後1981年までを「移行期の設計法」
1981年以降を「新耐震設計法」
と呼んでいます。
現行基準における耐震設計の基本理念は以下のようになっています。

 

表1 耐震設計の基本理念

 

いわゆる「新耐震の建物」とは、1981年以降の新耐震設計法によって設計された建物のことを意味します。
一般的に1981年以降であれば、概ね耐震性に問題はない、と言われています。
問題はない、というのは、震度6強の地震に対して建物が倒壊・崩壊しない、
つまり、下表の損傷ランクⅤは最低限防ぐ、ということです。

 

表2 大地震時における木造建物の損傷イメージ

 

新耐震以降も各地で大きな地震はありましたが、構造設計者である私が特に大きな衝撃を受けたのは、
1995年の阪神・淡路大震災です。都市部での大地震で、木造だけでなく鉄筋コンクリート造(RC造)や
鉄骨造(S造)の建築物・土木構造物も大被害を受け、建築物の倒壊により多くの犠牲者が出たことは残念でなりません。

 

写真1 1階が倒壊した木造住宅

 

写真2 層崩壊した鉄筋コンクリート造の建物

 

このような被害の反省から、2000年に法改正が行われ、また旧基準で設計された古い建物の耐震診断・耐震補強を早急に行う必要性がある、
ということで、公共建築物の耐震化が進められてきました。東京都では緊急輸送道路に面する建築物の耐震診断・耐震補強を進めています。
しかし阪神・淡路大震災から23年経った今でも、耐震化率は思うように上がっていないのが現状です。

木造においては壁量規定の変更はなかったものの、耐力壁に関連する規定がいくつか加わりました。
そのため、1981年以降に建築された”新耐震”であっても、2000年以降でなければ現行基準を満足しているとはいえません。

 

表3 年代別にみる木造建築物の構造的特徴

 

 

また木造住宅の耐震診断・補強は地域差が大きく、特に都市部の木造住宅密集地における耐震化の遅れが問題になっています。
耐震化を進めるには、行政・設計・施工の3者の協力体制づくりが重要であることは言うまでもありません。

住宅医協会は今年も住宅医スクールを各地で開講します。建築に関わる会員ならびにスクール生のみなさんには、
講義だけではなく実測調査や検定会などにも参加され、技術の研鑽を積んで信頼される住宅医として活躍してほしいと思います。

投稿日:2017年12月11日

住宅医コラム 意見交換2017-85


「トイレコラム」
トイレ設計手法 ~ 事例から見るトイレ空間④
三澤文子(Ms建築設計事務所)

 

ついに、トイレコラムの最終回。
今月は、今年1年出先で使ったトイレの中で最も「気になるトイレ」をご紹介したいと思います。

「気になる」とは、刺激になる。という意味で、トイレ空間づくりにあたって、
「何か、取り入れる要素がありそうな予感する。」といったことでしょうか。
そんなトイレに出会うと、本当に嬉しく幸せな気持ちになります。
そのトイレは、信州伊那市にあります。
古い倉庫を改修して古道具や器、お花などを売る素敵なお店「草の音」のトイレです。

http://kusano-ne.com/

店舗に使われている古い倉庫は、かつて繭蔵だったそうです。
養蚕が盛んだったころ、この地には、このような繭蔵がたくさんあったのだそうですが、
最後の繭蔵だったこの蔵も、持ち主さんは借り手がいなかったら近い将来壊すことを考えていたそうです。
そんな繭蔵を改修してつくった店舗。トイレは3階にありました。

 

 

およそ4帖くらいの広さのトイレ。
梁が見えていて、それ以外は白く塗られています。床も板張りですが、古い木材をあえて白く塗っています。
そして、奥に洋便器がぽつんとあります。

 

 

洋便器に座るとこのような風景。
洗面にも使える手洗い器の横には、アンティークの鏡台が置いてあります。
鏡台の大きな鏡はトイレから出るときに身だしなみがチェックできます。

 

 

入口は引き戸で、ガラス框戸ですが、実はガラスではなく樹脂ガラスでした。
それがいかにもレトロっぽく感じさせます。シンプルなサインも良く練られているデザインだと思います。
残念ながら向かって右の男子トイレには入る勇気が無かったことが悔やまれます。

 

 

実は、女子トイレは2部屋ありました。出入口の引き戸のサインが少し異なることでお解りと思います。
このトイレはさらに広く、幅の広い洗面台があるなど少し構成が異なります。

 

洗面台はモダンな白。
ただ、鏡は古い木の框付きのもので、白に古色のメリハリある組み合わせがとても素敵です。

 

便器周りには個性的な紙巻き器が立っています。
紙を切りにくいのは難点ですが、こんな考え方もありか。と考えさせます。
こちらは鏡台でなく、これもアンティークのキャビネットが置かれています。

2つの女子トイレ。どちらも少女のお部屋のような空間で、大げさに言えば異次元に旅したような気分になります。
短い時間の滞在、そして一人きりの空間。素敵なトイレをつくるのに、とても参考になりました。

 

トイレコラムを書いていたせいか、年末にトイレのリフォーム設計を頼まれました。
早速ただいま施工中ですが、年内には気持ちのいいトイレに仕上がって、
お正月、家族の皆さまが集まった際には喜んで使って頂きたいと思っています。