投稿日:2018年05月07日

事例報告(改修事例)2018-79


■改修事例報告
熊本県益城町 震災復旧工事
■改修概要
施工:新産住拓株式会社
設計者:蓑崎寛規
築年数:平成9年 築19年(調査時)
主用途: 専用住宅
構造・階数: 木造2階建て
敷地面積: 464.88㎡
建築面積: 135.44㎡
延床面積: 199.97㎡ (1階125.97㎡2階74.00㎡)
現地調査:2016年6月23日
着  工:2016年8月
竣  工:2016年11月 (工事期間3か月)
改修内容:基礎傾斜修正、耐震性能向上、断熱性能向上、設備機器の更新など
補助金 :益城町宅地復旧支援事業
■現況状況
基礎 :鉄筋コンクリートべた基礎
外壁 :サイディング70~80mm+吹付タイル
断熱材:床ポリスチレンフォーム90mm、壁・天井ロックウール75mm
内壁 :石膏ボード12mm+ビニルクロス
床材 :1階 15mm桧フロア仕上+12mm合板捨貼 根太転ばし@303
2階 12mm合板フロア仕上+12mm合板捨貼 根太転ばし@303

■熊本地震 被害状況
2016年4月14日21時26分に前震、4月16日1時25分に本震と、熊本は立て続けに2度という、今までに経験したことのない大地震に見舞われました。
次の日から弊社は全社員と施工パートナー総出で震災対応チームを編成し、被災地へ応急修理に向かいました。
そういった震災対応をを行う中、私たちは益城町の馬水地区へ向かいました。
この馬水地区も震災被害の多い地域で、道路は波打ち、道の両側の家も倒壊して通行できず、通れる道を探しながら何とか辿り着きました。
今回ご紹介する物件は、敷地の土留めブロックが崩壊し、地割れが発生して建物は東側に125mm下がり、設備配管も破損していました。
近隣の建物が多数倒壊するなか、傾きはしたものの自立して立っていたため、応急修理にお伺いしたのを切っ掛けに、
お施主様より復旧のご依頼がありました。

■改修要望
はやく水平に戻して、震災前の生活を送れるようにしたい。
耐震性・断熱性を上げたい。
給排水設備機器を一新したい。
2階の子供部屋を和室から洋室に作り替えたい。

・改修前 1階平面図                                          ・改修後 1階平面図
 

・改修前 2階平面図                                      ・改修後 2階平面図

■床レベル補正
SWD法による地盤調査で地盤深さ15mまで貫入試験を行ったが、N値は6程度までしか出ませんでした。

 

支持層が見つからない事と 、コスト面から土台から上のジャッキアップを採用することといたしました。

目的: 不同沈下の矯正の為、油圧ジャッキにて揚げ家を行い、
木構造部分の安定性を確保する。
仕様: 大引きまたは柱下に油圧ジャッキをセットして建物を揚げる。
使用機械: 5・10・15ton 手動油圧ジャッキ
連動ジャッキ 油圧バルブ
電動ピック 他
ライナー鉄板 1.2mm、2.3mm、4.5mm、9mm

施工手順:
①基礎開口および斫り解体工事:
床下から現状の基礎形状及び土台の継ぎ手及び仕口を把握した上で、
ジャッキセット位置を決定し基礎部分をジャッキが入る最低限ハツリ取る。
②ジャッキセット:
ジャッキを所定位置へ設置して、高さ調整または土台保護のため
土台下へ鉄板を入れる。
③ジャッキアップ:
ジャッキアップ量5mm程度を1サイクルとし、壁の変形等を観察しながら
所定量までジャッキアップを行う。
④受け方:
原則としてジャッキの両側受けとし 1.2~9mm の鉄板や鋼製束を用いて、
土台と基礎の間に叩き込む。
⑤基礎充填:
ジャッキアップに伴い発生した土台と基礎の空隙にモルタルを詰め込む。
⑥基礎復旧:
ジャッキを取り外した部分はコンクリート表面の粉化物等を除去し、
モルタルで隙間なく充填を行う。
揚げ幅の大きい部分、斫り出したアンカーボルトの補修として、
横方向の鉄筋配筋を実施し固定する。
⑦床受け:
生活に支障をきたさない様、床束高さの調整を行う。

①アンカー斫り出し

②油圧ジャッキセット

③ジャッキアップ

④受け方

⑤基礎充填

⑥基礎復旧


約1ヵ月かけて床をほぼ水平に戻し、一部の床を解体して微調整を行いました。
床レベル補正前                                                               床レベル補正後

  

 

 

■劣化対策
外壁の破損はサイディングの土台付近や窓周りのクラックや欠けなど、比較的軽微でしたので補修のみとしました。
内壁は石膏ボードのクラックや剥がれが多数ありましたので全て剥がしました。
また、敷地が崩落したために給排水配管類が破損したので新たに配管を行いました。

■耐震性
基礎は地盤の崩落により東側に大きく傾いたが、大きなひび割れは発生していませんでした。
土台や柱等の構造躯体も破損は無かったが、内壁を全て解体するのに伴い、さらなる耐震性能の向上の計画を立てました。

                          

■断熱性
壁断熱材の新築当時の施工法は柱の内側に留めつけてあり、また包装も劣化していたため下にずり落ちて断熱の連続性が失われていました。

 

高性能グラスウール16k厚み100mmへと入れ替え、現在の施工基準に則って隙間なく施工しました。

■統括

耐震性以外の性能はあまり上がっていませんが、そもそもの目的はお施主様に震災前の平穏な生活を送っていただくことでした。
震災直後ということもあり、施工パートナーや建材の手配に苦労しましたが、外構工事まで年内に完了し、
お施主様も仮設住宅から戻ってくることが出来て喜んでいました。

熊本では震災から2年以上たちました。
解体工事は随分と進みましたが、まだまだ屋根にはブルーシートで覆われた屋根や、外壁が大きく崩れ、修理を待っている家が見られます。
また、人手不足や資金面から、未だに仮設住宅から自宅へ戻れない方もいらっしゃいます。
先日、私の大好きな熊本城の天守閣の屋根瓦にシャチホコが戻りましたが、周りの石垣の復旧はまだまだです。

今回の震災の経験を通じて、私たち住宅医の使命は人々の生活や命を守るモノを作ることだと実感しました。
今後も住宅医スクールで学んだことを実践して、一日でも早く熊本の皆さんに笑顔が戻るように
住宅医として様々な改修工事を行っていきます。

熊本県 新産住拓株式会社 リフォーム事業部 蓑崎寛規

投稿日:2018年04月06日

事例報告(改修事例)2018-78


■改修事例報告
熊本県菊池市 築60年の長期優良住宅化リフォーム

■改修概要
施工:新産住拓株式会社
設計者:松野 洋二郎
築年数:昭和28年 築60年(調査時)
主用途: 専用住宅
構造・階数: 木造2階建て
敷地面積: 920.99㎡
建築面積: 164.85㎡
延床面積: 207.19㎡ (1階164.85㎡2階42.34㎡)
現地調査:2014年12月
着  工:2015年9月
竣  工:2015年12月 (工事期間4か月)
改修内容:耐震性能向上、断熱性能向上、間取り変更、設備機器の更新など
補助金 :長期優良住宅化リフォーム推進事業を使用

■現況状況
基礎 :玉石基礎+延べ石基礎+一部土間コン
外壁 :真壁造り 土壁厚約70~80mm+漆喰壁
断熱材:床、壁、天井 全て無断熱
内壁 :和室  土壁+聚楽塗
その他 :大壁 胴縁+プリント合板4mm
床材 :1階「21mm厚板仕上 火打なし 根太転ばし@333」
2階 :根太天井+フローリング張り 火打なし
接合部:接合部Ⅳ:3kN未満(ほぞ差し・釘)

■ご相談から竣工まで
初めてご相談を受けたときは築60年になった古い建物が本当に良い建物になるのか?
壊して新築したほうが良いのではないか?ということでリフォームするか非常に心配され悩まれておりました。
物件を調査した結果、一部白蟻被害はありましたが部材の取り換えすることで十分良い建物になると判断して改修工事を進めていきました。
長期優良住宅化リフォーム事業の補助金が使えましたので、省エネ性能向上、断熱改修や耐震改修につながるように提案をしていきました。

■改修希望内容

古い材など生かした間取り
収納が多くて明るい部屋
古くなった水回り設備の一新
断熱性能を上げたい
家の中の段差を無くしたい

 

改修前 1階平面図

 

改修前 2階平面図

 

改修後 1階平面図

 

改修後 2階平面図

 

 

 

■劣化対策

ユニットバス工事、床下白蟻防蟻処理、床下一部土間コンを打ちました。
外壁は真壁仕様だったので柱、梁など風雨による劣化が見られたので、
構造躯体を保護する意味も兼ねてバス板モルタルの大壁仕様(付け柱@一間)としました。

■耐震改修提案

耐震性能:構造評点0.43から1.0へ
1階の東側は既存を残す模様替えであったため西側壁の強度を上げすぎると配置バランスが悪くなり剛芯がずれていきました。
剛芯がずれてしまうと低減係数で減点されてしまうので耐力の小さい壁をバランスよく配置していくようにしました。
耐震構造評点も1.0をやっとクリアする程度であったため今後は1.5以上を目標値として提案していきます。

耐震診断一般診断

 

壁補強計画

 

■断熱改修対策

床・壁・天井と無断熱状態でした。

改修前Q値7.43 UA値 2.53
改修後Q値3.67 UA値 1.24(改修していない箇所含む)

・床は充填断熱:押出法ポリスチレフォーム保温板50㎜
・外壁は既存土壁+グラスウール10K100mm。寒さ対策をとるため一部壁面は
押出法ポリスチレフォーム保温板50㎜を内壁に貼って断熱対策をとりました。
・天井はグラスウール10k200mm敷き込み。
・アルミサッシはアルミ樹脂複合サッシ+LOWEガラスとしました。
・断熱対策は未改修部もあるため、現行基準の断熱性能には至りませんでした。
改修部と未改修部との断熱をどう考えていったが良いのか?壁が土壁の断熱の取り方をどうしたら?
など今後の断熱改修の提案課題が見えたところとなりました。

■省エネ、バリアフリー・火災計画

省エネ効率を高めるため給湯器は高効率のガス給湯器に取替。水栓は節水型、
照明はすべてLEDにして省エネ設備を積極的に取り入れました。
バリアフリー計画は家の中の段差を無くしました。昔の土間部分は梁が低い位置にきているため
間取りの計画も梁の高さを考慮しながら邪魔にならないように計画しました。
居室の出入口の幅は75センチメートル以上、浴室の出入口の幅は60センチメートル以上を確保しました。
廊下幅は780mm以上を確保。玄関上がり口、トイレ、浴室・階段には手すりを設置しました。
火災時の安全対策として2方向避難できるような間取り計画しました。
火災発生時の避難を容易にするための対策として、早く火災を察知して迅速に避難を開始するために重要な連動式の
「火災報知器」を各居室・寝室・台所・階段上部に設置しました。それに加えて消火器を設置しました。
軒裏の防火性能確保は化粧垂木のままでしたので軒裏部のみ防火性能の確保はできませんでした。

 

■統括

ご相談から現地調査プラン提案設計見積もり契約詳細打ち合わせ工事管理完了検査引き渡しまで担当させていただきました。
改修工事相談から工事完了引き渡しまで約1年がかりでした。
祖父の代から受け継がれた家を守っていきたい。自分の代で無くしたくない。と言った家主の想いを形にすることができ大変喜んでいただけました。
段差も無くなった。家の使い勝手も大変よくなった、冬はとても暖かくなった。暖房一つで十分になったと言っていただけました。
そして、お引渡しから約4か月後、熊本県上益城郡益城町を震源とした熊本地震が起こりました。
2016年4月14日(前震)16日(本震)2度に渡る震度7、過去に例のない大地震。この建物も最大震度6強の大地震に被災しました。
ただ幸いにも被害はほぼゼロの状態でした。耐震改修工事まで意識して提案計画していなかったらもっと被害が多く出ていた可能性もありました。
改めて耐震設計の重要性と耐震工事を担う建築士の必要性、それに耐震工事を担う責任感を感じました。
その年の2016年、住宅医スクールの講習を受講いたしました。その時初めて住宅医と言う言葉を聞きました。
住宅医スクールは治す力を持った設計者を育成するところ、改修のスペシャリストを育成するところです。
住宅医スクールでは劣化対策、耐震対策、断熱対策、省エネ対策、バリアフリー対策、火災の安全性や予防対策といった様々な角度から
建物の性能を数値化して点数をつけ改修設計をしていく手法を学ぶことができました。
改修工事をすると面白さや難しさを常に感じますが、住宅医スクールで学んだことを実践できるように、今後も改修工事に携わってまいります。

熊本県 新産住拓株式会社 リフォーム事業部 松野 洋二郎

投稿日:2018年02月06日

事例報告(改修事例)2018-77


■改修事例報告
熊本県「2016熊本地震被災の家」 最小限の改修工事への挑戦

■改修概要
設計者:有限会社井上工業 井上恭子
施工:有限会社井上工業
報告:有限会社井上工業 井上恭子
所在地:熊本県上益城郡御船町 (地震係数:0.9 /軟弱地盤割増:1.0)
地域:都市計画区域内 指定なし
主用途:一戸建ての専用住宅
築年数:昭和55年(築37年)
規模:在来軸組 木造2階建て
敷地面積:432.88㎡
建築面積:101.85㎡
延床面積:132.48㎡ (1階 101.85㎡ ・ 2階 30.63㎡)
着工:2016年11月
竣工:2016年12月
(工事期間 1ヶ月)
家族構成:世帯主(71歳)おひとり暮らし
改修内容:①地震で被災した家を「住める」家に戻す
②耐震性能と劣化対策を講じる
③断熱性能向上

■改修の経緯と目標到達点
目標到達点 「現状の問題点を把握した上で、住める家に戻し可能な限りの耐震と断熱改修を施す」
1.2016年4月の熊本地震、震源地から数キロのこちらのご自宅は甚大な被害を受けられました。


2.ご自宅が「大規模半壊(罹災証明書)」の判定を受けられ、当時は「2016年12月までの被災家屋修理には、
市区町村の応急修理補助金が支給される」とのことで、お施主様から大至急の工事依頼を受けたのが2016年11月でした。
(実際は後に応急修理補助金も期間延長を繰り返しましたが、当時は町から2016年12月中の完工要請がありました)
(↓最初に伺った時のご自宅の様子 ボランティアにより外壁と玄関の崩落部にシートがかけてありました)

3.ご高齢のおひとり住まいで、限られた時間と予算(応急修理補助金を利用し手出し250万円のご要望)の中
生前ご主人様が建てた思い出の家を 壊さず・変えず・住み続けたい という3点がお施主様のご希望でした。

4.ご予算と工期から、改修部分は被害の甚大であった下記の青色部分に絞り、工事を行うことになりました。

1階平面図

上部構造評点(一般診断法)

偏心率X 0.50 偏心率Y 0.12

評点X  0.17

評点Y  0.55

2階平面図

上部構造評点(一般診断法)

偏心率X 0.01  偏心率Y 0.00

評点X  0.68

評点Y  0.75

 

■調査状況と改修前の写真
地震の被害が大きかったことから、現況調査の上では否が応でも被災部の損傷ばかりが目に付いてしまいました。
基本的には非破壊の調査としましたが、経年劣化と下記の点が見受けられました。
・地震により剥落した内外壁から、筋かいの位置や金物の確認・床下の確認が出来る箇所があり。
・既存図面は一応存在したが、図面上と実際に露出している筋かいとでは向きが違うものがあった。
・配管の損傷、雨漏り、確認できる蟻害はなし。
・建物の損傷に比べて基礎は健全であり、地盤は液状化も見受けられなかったのが幸いであると感じた。
・耐震診断(一般診断)上部構造評点の最小値0.17(1階X方向)

 

 

 

・小屋裏の状況(サーモカメラでも撮影) 雨漏り、雨染みなし 無断熱

 

基礎    :無筋コンクリート布基礎(軽度なひび割れあり)

外壁    :建築当初 「木ずりモルタル塗り+リシン吹付」

→ 8年前の改修時サイディングを既存外壁の上から張付けし塗装

通気層なし

断熱材   :なし

内壁     :和室    「真壁 ラスボード+聚楽塗」

その他   「大壁 胴縁+化粧ベニヤ4mm」

一部     「大壁 胴縁+石膏ボード9.5mm」

床材    :1階 「12mm荒板 火打なし 根太転ばし@303」

2階 「12mm合板 火打なし 根太転ばし@303」

接合部  :耐震診断においてⅣ(ほぞ差し・釘)

・破断した筋かいと崩落した壁(家の南東出隅部)

 

 

・土台から抜けた上、破断している柱(家の東面 玄関横和室)

 

 

 

・釘が浮き、柱から離れてしまった筋かい(家の南側)

 

■熊本地震と地形の情報
こちらのご自宅は、
・地形区分はローム層で標高30mほど
・地盤増幅率(Vs=400~地表)は推定で1.37とされる(J-SHIS mapより引用)
・2016年中に於いて最寄りの観測点(御船町御船)では
「震度6弱×1回」「震度5強×2回」「震度4×10回」「震度3×33回」震度2以下略 を記録

■改修計画(改修部床面積 37.26㎡)
・1階と2階の柱・壁の直下率が悪い部分を中心に、顕著に地震の被害が大きく出ている
→ 直下率を上げるため2階柱下と、梁下にも柱を増設。2階出隅の下に柱がなかった為新設。

・開口部の大きい南面の損傷が激しい
→ 掃き出し窓を小さく(2間を1間に)し、柱・耐力壁を新設。

・筋かいの破断、金物の不備が多くみられる
→ 今回触る外壁には構造用合板による面材耐力壁を使用。場所によっては筋かいシングルと併用。
引抜力が上がりすぎないよう配慮。引抜耐力に応じた金物を設置。

・外観も内観も、極力変えることなく改修してほしい
→ 間取りは変えず、直下率の妨げになっていた付け書院のみ無くし、
広縁と和室の境にある2間の開口部(障子)を1間にし、1間分は雑壁として耐力を取ることとした。

・無断熱でALLシングルガラスの為、開口部の大きい和室は寒いとの事(そのため冬場は基本的に和室を利用していない)
→ 結露計算の上、防湿フィルムとグラスウールを和室に施工。改修部のガラスは半樹脂ペアに変更。

 

 

■バリアフリー
今回は大規模な改修に至らず、通路幅や室内の開口部などで改善が必要な部位はまだ多くあります。
(住まい手が高齢者であるため、引戸の開閉がスムーズになるよう最低限の配慮と今回解消できる段差の解消を行ったのみ)

↓(一部例)敷居にレール埋め込み  開閉しづらい建具に戸車を設置

 

■断熱
UA値は元が2.34、今回は部分的な断熱だったために改修後も2.20と僅かな向上に留まりました。
(熱損失の大部分が天井と開口部)
施工完了の2016年12月に、断熱施工した現在非暖房室の和室表面温度は玄関外壁部と比べて5.5℃高く、縁側の壁面は外気温より10℃以上高くなっていました。

 

■火災時の安全性・省エネルギー性
今回はこれといった対策を講じるに至っておりません。
「工事が終わったら和室を寝室にしようかな」とお施主様が仰っていましたので、
和室に火災報知器をプレゼント致しました。
火災時の安全性については防火地域等でなかったことと、8年前にキッチンリフォームをされていたことから、
性能診断結果で得点が他より高く出ています。

■性能診断結果と改修後の写真
250万円という譲れない予算、震災後の職人不足の中の1ヶ月の工期、という高い壁を前にした上で、
「原状復帰+α」というお施主様と当初の目標に対し当時のベストは尽くしたと思っております。
お施主様には、今回の工事を大変に喜んでいただけました。
「見た目が変わらなかったのが何より嬉しい。色や雰囲気も変わってしまうかと心配した。
和室は以前より寒くなくなったし、丈夫になったのなら、今度からこの部屋で主人の位牌と寝る事にするわ」と、
にこやかにご冗談も頂きました。
今回のスタートが元々「性能向上を第一に」した改修工事ではなかった為、出来る提案は少なかったものの、その中で
「如何にお施主様の要望と性能向上を両立し 出来る限りを尽くすかを考える」学びの多い改修工事になりました。

 

左:BEFORE 右:AFTER

 

■総括
今回の事例は、正に住宅医スクールを受講している最中 住宅医を取得する前の改修工事であったため、
振り返れば下記のような反省点もありつつも、当時の精一杯(工期・費用も含め)が詰まった設計・施工となりました。

・・・上部構造評点が最小値で0.17→0.61への向上は図れたものの、せめて1.0以上に出来たなら
・・・もう少し熱境界を考慮するだけ工事の余裕があれば、もっと断熱性能の向上が図れていたかも
・・・今思えば(当時住宅医検定会で三澤先生にご指摘いただいたのですが)雑壁を天井まで伸ばした方が良かった

これからも、住宅医で学ばせて頂いた数多くの(本当に多くの、けれどもまだ知るべきことも多くて終わりのない)
知識を反芻したり、新たに学んだり、全国の住宅医の方々の素晴らしい事例を参考にしながら、
「この家を残したい」「建て替えではない方法でより良く住みたい」と言ったニーズへの最善を尽くしていく所存です。

そうして、「本当に質の良い中古住宅」と「本当に質の良い新築住宅」が仲良く共存できる世の中であるように祈りつつ、
今後とも熊本でそんな家に携わっていきたいと願っております。

(熊本県 有限会社井上工業) 井上恭子