投稿日:2017年04月05日

事例報告(改修事例)2017-67


I様邸改修工事 事例報告

設計者    :㈱山弘 中村 将之
現場管理・報告:㈱山弘 角 和樹
所在地:兵庫県姫路市
築年数:築45年(S46年築)
用途:戸建住宅
規模:木造2階建て
述床面積:176.29㎡(54.4坪)→減築後 198.42㎡(47.0坪)
2階面積: 46.13㎡(14.2坪)
1階面積:130.16㎡(40.2坪)→減築後 152.29㎡(32.8坪)
補助:長期優良住宅化リフォーム推進事業採択
I様邸は、兵庫県姫路市の北東部の、近くを市川が流れる、山々に囲まれた閑静な住宅地にあります。住宅地は50年以上前からあり、近隣周辺も築40~50年の家が多く、建て替えや改修工事が行われつつあります。


【写真】①市川

 


【写真】②外観

 

I様は、6年ほど前にこの住宅を中古で購入され、水廻りのリフォームをして、ご夫婦で暮らしておられました。しかし、このたび「二世帯で同居されること」「自然素材の家に住みたい」という生活スタイルの変化があり、弊社モデルハウスへご来場されたことをきっかけに、改修工事のお話がスタートしました。


【写真】③弊社モデルハウス

 

断熱性や耐震性も向上させたいというご要望もあり、弊社社員によるインスペクション(建物事前調査)を行い、長期優良住宅化リフォーム推進事業の採択を目標に改修プランの検討を行いました。

 


【写真】④調査の様子

 


【写真】⑤調査の様子2

 


【写真】⑥現況平面図

 


【写真】⑦インスペクション結果
改修プランの大きな特徴としては、駐車スペース確保のための減築です。約24㎡(7.4坪)のダイニングキッチン平屋部分を減築し、屋根の葺き替えと共に耐震性の向上となるプランとしました。耐震性向上のため、さらに2階直下の壁量の増設、耐力壁の増設、水平構面の補強を行い、耐震診断「1.0」となるプランになっています。

 


【写真】⑧1階耐震計画

 


【写真】⑨2階耐震計画

 


【写真】⑩減築の様子

 

 


【写真】⑪減築の様子2

 


【写真】⑫防湿土間打ちの様子

 


【写真】⑬基礎増設の様子

 


【写真】⑭屋根葺き替えの様子

 

施主様の強いご要望により、ダイニング、リビングには巾1間の引き込み木製建具を採用させて頂いたため、断熱性の数値的な向上は期待できませんが、障子を閉めることで断熱性を確保する建具としました。

 


【写真】⑮温熱計画

 


【写真】⑯木製引込戸

 

屋根掛け替え部分の天井、ダイニング、リビング部分には、セルロースファイバー(デコス工法)にて断熱を、壁内結露の可能性のある壁の外壁部分には、ハイベストウッドを張り、通気層を設けました。

 


【写真】⑰断熱工事中の様子

 


【写真】⑱外壁下地の様子

 

減築を行ったため、大きく外観が変化したI様邸。
見違えるように変わったと 施主様にも喜んで頂けました。

 


【写真】⑲完成外観1

 

 


【写真】⑳完成外観2

 

耐震性、断熱性の向上はもちろん、弊社の特徴でもある「しそう杉」を使った自然素材の家が完成しました。「しそう杉」の床は、非常に柔らかく傷がつきやすいデメリットはありますが、踏み心地がよく、お子さんが転んでも痛くありません。蓄熱効果もあり、冬は暖かく、夏はさらっとした肌触りが気持ちいい床材です。

 


【写真】21完成内観

 


【写真】22完成内観2

 


【写真】23完成内観3

 

投稿日:2017年03月07日

事例報告(改修事例)2017-66


埼玉県「北秋津のいえ」改修事例報告

設計者:MSD/三澤文子
報 告:仕立建築舎/平賀基香

所在地:埼玉県所沢市
地 域:第一種低層住居専用地域・第一種住居地域

主用途:一戸建ての住宅
築年数:築342年(寛文12)
規 模:木造2階建て

敷地面積:742.96㎡ (224.75坪)
建築面積:211.87㎡ (64.09坪)
延床面積:266.52㎡ (80.62坪)

着  工:2016年1月
竣  工:2016年12月
(工事期間12ヶ月)

長期優良住宅化リフォーム推進事業採択

 

「北秋津のいえ」の特徴は何といっても築340年超という履歴です。改修前は茅葺きに鉄板で覆うという佇まいでしたが、家への愛着を持っておられる住まい手さんが大切に住み継がれてきた歴史を感じるお住まいの改修工事となりました。

 

実は、今回の改修のお話しがある数年前に水廻りのリフォーム(下図 改修前平面図の水色部分)をされていた「北秋津のいえ」

 

改修前平面図

 

 

あるきっかけで住宅医による詳細調査を行い、報告内容(300年以上の住宅のため、点数をつけるといい数字が並ぶ訳がありません
)を目の当たりにされた住まい手さんは「是非、全面的に改修して今後何百年も住み継いでいける家にしてほしい!」と強いご要望があり今回の改修工事のスタートとなりました。

 

 

計画当初は改修前の平屋を踏襲し、耐震性や断熱性の強化を図りながらプランを計画していましたが、住まい手さんの強いご要望から二階建ての計画となりました。

 

改修後1階平面図(赤点線が2階部分)

 

改修後2階平面図

 

【解体工事】

解体作業の様子

 

 

解体中

 

 

曳家や揚屋をすることなく、基礎を新設する工事を行いました。

住宅医スクールの講義内容でも挙げられていた手法です。

まずは既存柱にホゾ加工を施し、土台を下から

差し入れる前にホゾの下端で切断する方法です。

 

その後、コンクリート基礎の打設と進めます。新築の工程の巻き戻しする形で工事を進めました。

 

 

 

【耐震改修】

既存建物の耐震要素は土壁で、壁も少なく低い耐震性能でした。改修に即して耐震性能の検討を進めていたものの、2階建てにすることになり新築同様の検討を行い、耐震等級3を確保(雑壁を考慮)する内容となりました。

耐震性能(雑壁考慮し等級3確保)

 

【断熱改修】

耐震改修と同時に断熱改修も進めました。耐震改修で壁(特に外壁が多い)を工事する時に断熱改修も合わせて行うのは鉄則。効率よく工事を進めることも大切なことだと感じます。

今回は新築同様の内容で進め、UA値1.70W/㎡K⇒0.58W/㎡K(Q値6.37W/㎡K⇒2.14W/㎡K)性能を確保しています。

 

 

【竣工写真】(左が改修前、右が改修後)

  

  

[南側の外観]
改修前は茅葺きに瓦風鉄板葺き。2階を新設しましたが、高さを抑えています。玄関の右手に張り出した土間は自転車を置いたり農機具のメンテナンスできるスペースを確保しました。このスぺースからも土間空間へアクセス可能です。

 

 

 

[玄関・応接スペース]
来客の多いお住まいでしたが、1坪ほどのスペースに玄関と応接スペースが兼用されて少し窮屈な印象がありました。数年前のリフォームで洋室となっていたスペースを思い切って土間空間に。南側からもアクセスでき、ゆったりとした応接スペースが確保できました。

 

 

  

[南側の濡れ縁]

 

((ここから下は改修後写真のみ))

[トイレ]今後介護が必要になった時にも十分対応できるスペースを確保。

 

[ダイニング]改修前と間取りはほぼ変わっていませんが、勾配天井がのびやかな印象。

 

[茶の間]既存構造体や建具を残しつつ、新たな要素も入れて一新。漆塗りを施した建具や照明器具、柱も。

 

 

解体工事がほぼ終わりかけた頃、軸組みになった我が家をご覧になった住まい手さんは「とても貧弱に感じる。いっそ建て直しした方がよかったかも」と弱気になれる一面もありましたが、構造補強から温熱補強工事、仕上げと進むにつれ「改修をお願いして良かった」と力強いお言葉を頂きました。

 

“平成の大改修”ということで見学会も開催し、非常に沢山の方にご覧頂く機会がありました。技術的な質問も多く、改修の熱い波を感じた機会となりました。

 

遠方の現場で、現場との連携がとても重要な現場でしたが、皆さんのご協力で、住まい手さんにも大変ご満足頂けたことに感謝致します。

 

 

平賀基香

投稿日:2017年01月26日

事例報告(改修事例)2017-65


 

千葉県「平久里中の古民家再生」改修事例報告

報告:松井郁夫建築設計事務所/松井郁夫氏

 

 

設計主旨

房総半島の山中に建つ、木造平屋建ての古民家の耐震エコ改修である。オーナーの要求は、自然が満喫できる現代的で快適な空間を実現するとともに、母上の保養を兼ねた住まいとしてのやすらぎのある室内環境も必要とされた。

 

改修前外観

 

建物は、この地域の典型的な形態である寄棟の屋根に式台玄関が付く珍しいつくりであった。実測調査の結果、棟木の墨書から明治40年築(110年前)の古民家であることが分かった。土台は敷設されているが、足固め併用の石場置きである。床に多少の不陸は見られたが、小屋組の構造は健全であった。

 

実測野帳はその場で清書する

 

床下に潜って伏図を採る

 

改修前の床下・足固め土台併用

 

 

そこで、屋根瓦を乗せたままのスケルトン改修とした。床をはがしてみると、土台は意外に健全であったためそのまま使用することとしたが、足固めは、松材8寸の挟み材で太いボルトで締めてあって、裏山の湿気で鉄が結露した痕跡があり、松材のため虫食いが激しかった。そのため120角の桧の足固めを輪内でクサビ打ち、込栓止めとして取り換えた。足元とはいえ、できるだけ金物を使わない木組仕様である。

 

床下で結露していたボルト穴

 

問題は、石場置きのまま耐震改修できるのかということであった。通常、古民家は100年以上もの長寿命にもかかわらず、通常の許容応力計算では正しく評価することができないため、耐震改修時には現代工法と同じようにコンクリート基礎にホールダウン金物を設置されてきた流れがある。

わたしは、これまでに経験してきた古民家調査や2007年から実施されている伝統的木造住宅の実大実験に参加してきた経緯から、日本の木造住宅は、木の特性である「めり込み」と「摩擦」によって力を「減衰」することで、粘り強く地震や風に耐えるのであり、土壁や貫、足固めは、改修時にやめてはならない大事な部材であると考えている。

今回、滋賀の川端氏の協力を得て、「限界耐力設計法」によって構造解析を行い、地盤が良いこともあって、土壁を残し足固め貫をそのままに、石場置きのままに耐震改修が可能となった。

 

改修した足固め

 

復元力特性と応答値の関係

 

 

繰り返しになるが、古民家改修は在来工法の建物と違い、木の「めり込み特性」を理解した上で、足固めを重要視し、「貫をやめてはいけない」。つまり復元力特性のある木組みの家には、金物は使うべきではない。金物は復元力がなく、木という母材を壊すからだ。

今回、住宅医ネットワーク事務局滝口氏の協力を得て、実測調査を進め、大切な架構を残しながら、現代的な室内をデザインすることができた。性能面では岐阜森林アカデミーの辻氏の計算ソフトを使ったエコ改修の数値を明らかにし、燃費計算まで算出できたことも、大きな成果であった。

ちなみに、既存のままでは熱損失係数Q値10.54W/㎡Kであった建物が断熱改修によってQ値2.39W/㎡Kまで達成できることが計算上ではあるが確認できた。また、計算には乗らないが湿気対策として、吸放湿性能に優れたゾノトライト系ケイ酸カルシュウム板を全室の天井裏に使用し、断熱、耐火、脱臭の効果も得られた。

古民家改修が、耐震とエコの両面から、さらに長い時間を生きる「社会的資産」となり、これからの日本の木造住宅を考えるうえで、未来の指針となる事を願っている。

「むかしといまをみらいにつなぐ」知恵と工夫は古民家にあると思う。

松井郁夫

 

 

改修後の外観

 

納戸を改修した浴室

 

抜けない柱を残して改修