投稿日:2017年05月15日

調査事例紹介2017-63 福井県小浜市


小浜市発心寺 詳細調査
報告:戎野朗生(エムズ建築設計事務所)
物件概要
■所在地: 福井県小浜市伏原
■調査日時:2017年4月10日(月)、11日(火)
■構造規模:木造2階建て
■延床面積:約1800㎡(調査範囲は内、約360㎡)
■築年数:不明(江戸時代後期と推定)
福井県小浜市で詳細調査を行いました。
今回の調査依頼は福井で活動されている住宅医の山田健太郎さんが受けているお仕事(お寺の保存・改修)への参加協力でした。500年ほど前に創建された歴史あるお寺の本堂や庫裏を修繕するために必要な現況調査です。

(上)庫裏外観

(左)本堂外観

(右)方丈外観

 

 

(上)庫裏内観

 

今回調査範囲が約360㎡と広範囲に及ぶことから作業量も多く見込まれましたが、一泊二日で少人数による調査とすることで、内容の把握がしやすく、庫裏と方丈それぞれの棟を一貫して調査することができる方法をとりました。

 

(左)開始前の挨拶   (右)調査準備

お寺が運営されている平時に調査を行いますので、調査を始めるに当たり、お寺の方に調査の概略や作業時間についてご説明し、お邪魔にならないよう確認をとることから始まります。
調査内容の確認などのミーティングを迅速に行い調査開始。事前に調査道具を班ごとに分けておくことで、すぐさま調査にかかれます。
今回は①劣化、②設備、③仕上、④採寸・バリアフリー、⑤床下、⑥二階床・小屋裏、⑦ヒアリング・矩計の7班、合計13名となりました。
住宅医の山田さんと一緒にお仕事をされているお二方、今回の改修の監修をされている大学の先生にも入って頂きました。

(左)庫裏:床下の様子  (右)方丈:床下の様子

 

(上)方丈:基礎のひび割れ
床下調査:庫裏と方丈で建築年が異なるため、床下の形式はそれぞれ異なっていました。庫裏は玉石によるもので、床組の多くは修繕されていましたが、修繕されていない古い部材が残る箇所には蟻害の痕跡が多く確認されました。
対して方丈は無筋の布基礎で出来ており、換気口周辺にクラックが散見されたほか、高低差のある敷地で、低い地盤側へ傾くことで生じたと思われる大きなクラックも見つかりました。

(左)庫裏 外部:木部の雨染み    (右)方丈 外部:外壁のサビ

劣化調査:建物の劣化状況を目視にて確認します。風雨に晒されおこる経年劣化が全体的に見られました。また、土壁の剥離や板金のサビなど、雨水が内部に侵入し躯体の腐朽要因となる劣化も見られました。

(上)庫裏:食堂の小屋組

 

 

 

(左)方丈: 2階小屋組   (右)方丈: 2階床調査の様子

 

小屋裏調査:庫裏の小屋組みは30㎝前後の丸太梁が掛けられており、小屋裏空間も広く、架構の確認が容易に行えました。ススで黒くなった梁には腐朽は確認されず、含水率も10%前後で安定していました。方丈の小屋組みや2階床梁は角材を用いた架構で、天井板を外した場所からの目視となりました。水染みなどが確認されたものの腐朽は確認されませんでした。

 

最後には全員で掃除をし、調査で生じたゴミや埃を残さないようにします。
二日にわたる調査も無事に終え、成果物(野帳)を住宅医山田さんへお渡し終了しました。
今回の調査では報告書の作成は行わず、野帳を基に実務でそのまま活用いただきます。
調査にご協力いただきました皆様ありがとうございました。
Ms 戎野

投稿日:2017年05月09日

事例報告(改修事例)2017-68


花小金井の家改修事例報告
報告者:設計事務所サイク 佐藤裕希子

設計監理:設計事務所サイク 佐藤裕希子
工事期間:2015.9-2015.12
所在地:東京都花小金井市
構造:木造軸組2階建て
建築時期:平成元年
延床面積:89.84m2(増築9.93m2)
補助:長期優良住宅リフォーム推進事業採択


■概要および改修に至った経緯
もともとは都心の賃貸住宅に居住していたものの、子供の成長を機に長く住み続けられる住居の相談に来られました。当初は新築での相談でしたが、自分たちの予算で手に入れられる住居は限られてくるため、より良い立地・住居を求め中古住宅の改修も選択肢のなかに組み込むことで実現しました。
敷地が小金井公園の南東に面しており、一年を通して四季を感じられる場所であることを施主が大変に気に入られておりましたが、施主の奥様が戸建てに居住したことがないことで冬の寒さや中古木造住宅の耐震性能を心配されておりました。

<01_改修前平面図>

<02_改修後平面図>
 

■改修内容
まずは施主が抱いている不安(耐震性能・温熱性能)を取り除くこと、既存プランの使い勝手の改善を改修の主目的として設計を進めていきました。打ち合わせを重ねるなかで、施主の表情に物足りなさを感じとりました。そこで将来的な改修案という形でリビングの増築を提案したところ、施主の強い希望により本工事で増築が可能となりました。リビングを敷地形状に合わせた形で台形とし、サッシ幅も広くすることで公園を内部へと取り込みました。また、施主夫婦は自宅で別々の仕事をしています。奥様の仕事場をダイニングとリビングを見渡す箇所に配置することで、家事や育児をしながらの仕事が可能となり、ご主人も希望であった個室の仕事場を得ることが出来ました。
他、住宅医の調査をもとにした性能向上は下記の通りです。
 
<耐震性能>
一般耐震診断の評価0.75→1.0以上を確保。
基礎は一部にクラックがあったものの、鉄筋探査によると有金で状態も良好。図面通り筋交い(金物有)も入っており、柱頭柱脚金物も設置してありました。耐震診断の評価をもとに筋交いの追加と柱頭柱脚金物の追加。1階床全てと2階床オーバーハング部に24厚の下地合板を設置。
 
<温熱性能>
断熱等性能等級4確保。断熱材は全てやり替え、外部開口部のアルミサッシ全てを複層ガラスに取替え、玄関戸も木製断熱戸に取替え。
 
<バリアフリー>
1階床は下地合板からやり替え、2階床はフローリング張替えにより全ての部屋にあった段差を解消した上、階段は段数を増やすことで、勾配を軽減。
<劣化対策>
屋根は費用に見合わなかったため、洗浄後塗装をするのみになったものの、外壁は補助金を得ることで全て通気工法でやり替え。

 


<03_住宅医調査01>
<03_住宅医調査02>
調査人員は6名の少数精鋭で1日の調査。調査後は診断レポート作成時と解体工事後、竣工後の3回に渡り調査を行った者による報告会を開催しました。

 

 


<04_改修前外観>
 
 


<05_改修後外観>
 


<06_改修前ダイニング>

<07_改修前リビング>

 

 


<08_改修後ダイニング>

 

 


<09_改修後リビングダイニング>
 
 


<10_改修前和室>
 

 


<11_改修後和室>
 

当初予算をはるかに超える提案であるにもかかわらず、設計趣旨を理解し、高い価値を見出し実現したことがこの敷地でしか得られなかった改修へと繋がりました。今回設計には含まれなかった2階への便所の設置など将来を見据えた話を施主と出来たことも、住宅医としての今後のかかわり方を考えるきっかけとなり感謝しています。

投稿日:2017年05月08日

住宅医コラム 意見交換2017-78


高齢者のトイレには、適切な広さ、手すりや、手洗い台、大きめの手洗い器などなど十分な配慮が必要です。・・・今年は、健康にも直結する「トイレ」に注目して、住宅設計のポイントを抑えていきたいと思います。今月の「トイレコラム」は高齢者のためのトイレ、その2です。

 

「トイレコラム」
高齢者のトイレ② ~ 手すりや手洗台の配慮
三澤文子(MSD)

 

先日、10年メンテナンスで、奈良市のK邸に伺いました。事前のお電話で、K邸のご主人が、この3月に足の手術をされ入院されていることを知っていましたので、まずご主人が玄関にお出迎えくださったのには、驚きました。リハビリをしっかり行っていて、見違えるように歩けるようになった。と言われていました。もともと1階にご主人の寝室があり、トイレも、近くにあります。「退院した当時でも伝い歩きでトイレまでは一人で行っていました。」とのお話。トイレを見せていただくと、手すりがありません。タオルバーを握ったのか、タオルバーがとれてしまっていました。

 

 

「何とか、手洗い台に手をのせながら、歩いたので、問題なかった。」とのことですが、今回のメンテナンスでしっかり手すりを設けることになりました。
今回は、市販の金物の手すりを設ける予定ですが、最近は、大工さんに木材でつくってもらう手すりを、トイレには設けています。トイレは、外部や浴室内のような、水の心配はありませんので、木でも問題ありません。

 

 

この写真は、ある福祉施設のトイレです。広く見えますが、長辺が2000㎜ 短辺が1350㎜で、住宅でもよくつくる広さです。
トイレットペーパーの上に、木の小棚と、小棚に垂直に、栗材で造った八角の手すりバーです。丸棒でなく八角にするのは、「握った感覚がいい。」と、住まい手さんから好評のためです。小棚は、携帯やハンカチなどを置く棚として便利です。

住宅医スクールで「高齢者対応」についての講義を担当して頂いている溝口千恵子先生はトイレ内に手洗台は必ずつくってほしいと言います。手洗い台の手洗い器は、小さなものではなく、ある程度大きなものを。と言われます。「いずれ尿瓶の掃除の必要も出てくるから。」とのことです。私は使ったことはあまりないのですが、「ロータンクの上に水が流れて手洗いになるタイプは、便器越しに手を伸ばし、体勢を保つことが難しくなり、高齢者には不向きです。」とのこと。確かに健康な私たちにとっても言えることです。
下の写真の手洗い台は、改修工事で不要になった、座敷の床の間の違い棚を転用していて、磁器製の手洗鉢も、大き目のものを取りつけました。

 

 

このトイレの広さは、壁芯で、短辺1770㎜ 長辺1990㎜。おおよそ畳2畳分です。このように広さが十分とれるときはいいのですが、畳1帖の広さしか取れない場合は、入口を引違にして、いざとなったら、建具をはずして使えることの準備も必要です。

 

 

その場合は、この図のようにトイレの長辺側に入口を設けることが必要であり、そのあたりはプランニング力が頼りになります。

下の写真は、車いす利用をされる女性のトイレです。設計は三澤康彦さん。今から20年前の1997年に改修されました。
正面のテーブルは、化粧台になっていて、大きな洗面器がついています。このトイレはいわばその女性のためのトイレなので、部屋の中に便器がある。といった雰囲気です。写真左手はクローゼットにつながり、ちらりと見える便器の横には紙巻き器や手すり。その手前には、廊下を介して洗面・浴室につながる引き戸があります。

 

ホテルの水廻りのようなつくりで、さらに木の仕上げで温かい印象。常々こんなトイレをつくるように考えたいものです。