投稿日:2017年12月11日

住宅医コラム 意見交換2017-85


「トイレコラム」
トイレ設計手法 ~ 事例から見るトイレ空間④
三澤文子(Ms建築設計事務所)

 

ついに、トイレコラムの最終回。
今月は、今年1年出先で使ったトイレの中で最も「気になるトイレ」をご紹介したいと思います。

「気になる」とは、刺激になる。という意味で、トイレ空間づくりにあたって、
「何か、取り入れる要素がありそうな予感する。」といったことでしょうか。
そんなトイレに出会うと、本当に嬉しく幸せな気持ちになります。
そのトイレは、信州伊那市にあります。
古い倉庫を改修して古道具や器、お花などを売る素敵なお店「草の音」のトイレです。

http://kusano-ne.com/

店舗に使われている古い倉庫は、かつて繭蔵だったそうです。
養蚕が盛んだったころ、この地には、このような繭蔵がたくさんあったのだそうですが、
最後の繭蔵だったこの蔵も、持ち主さんは借り手がいなかったら近い将来壊すことを考えていたそうです。
そんな繭蔵を改修してつくった店舗。トイレは3階にありました。

 

 

およそ4帖くらいの広さのトイレ。
梁が見えていて、それ以外は白く塗られています。床も板張りですが、古い木材をあえて白く塗っています。
そして、奥に洋便器がぽつんとあります。

 

 

洋便器に座るとこのような風景。
洗面にも使える手洗い器の横には、アンティークの鏡台が置いてあります。
鏡台の大きな鏡はトイレから出るときに身だしなみがチェックできます。

 

 

入口は引き戸で、ガラス框戸ですが、実はガラスではなく樹脂ガラスでした。
それがいかにもレトロっぽく感じさせます。シンプルなサインも良く練られているデザインだと思います。
残念ながら向かって右の男子トイレには入る勇気が無かったことが悔やまれます。

 

 

実は、女子トイレは2部屋ありました。出入口の引き戸のサインが少し異なることでお解りと思います。
このトイレはさらに広く、幅の広い洗面台があるなど少し構成が異なります。

 

洗面台はモダンな白。
ただ、鏡は古い木の框付きのもので、白に古色のメリハリある組み合わせがとても素敵です。

 

便器周りには個性的な紙巻き器が立っています。
紙を切りにくいのは難点ですが、こんな考え方もありか。と考えさせます。
こちらは鏡台でなく、これもアンティークのキャビネットが置かれています。

2つの女子トイレ。どちらも少女のお部屋のような空間で、大げさに言えば異次元に旅したような気分になります。
短い時間の滞在、そして一人きりの空間。素敵なトイレをつくるのに、とても参考になりました。

 

トイレコラムを書いていたせいか、年末にトイレのリフォーム設計を頼まれました。
早速ただいま施工中ですが、年内には気持ちのいいトイレに仕上がって、
お正月、家族の皆さまが集まった際には喜んで使って頂きたいと思っています。