投稿日:2017年01月06日

住宅医コラム 意見交換2017-74


古い家の改修をしていると、トイレの位置の時代的変遷を感じます。現代生活では考えられないほど不便なトイレの位置も、その時代の設備においては必然的なことでした。ただ、設備技術の進歩を見る現代の住宅であっても、住宅プランニングにおいてトイレの位置はとても大切だと思っています。

今年は、健康にも直結する「トイレ」に注目して、住宅設計のポイントを抑えていきたいと思います。今月の、「トイレコラム」は、トイレの位置についてのお話です。

 

 

「トイレコラム01」

よく考えたいトイレの位置 ~ 遠からず近からずのベストポジション

三澤文子(MSD

 

 

古い家の改修をしていると、トイレの位置の時代的変遷を感じます。現代生活では考えられないほど不便なトイレの位置も、その時代の設備においては必然的なことでした。ただ、設備技術の進歩を見る現代の住宅であっても、住宅プランニングにおいてトイレの位置はとても大切だと思っています。

トイレの位置について長い時間考え続けている理由の一つは、我が家のトイレの位置がとても悪くて、長年苦労しているからかもしれません。31年前に新築した当時、トイレはコンパクトな台所と背中合わせの位置にありました。

 

1985建設時の自邸(クリック;拡大表示)

 

台所で家事をこなす時間の多かったことから、家族、もしくはお客様のトイレ使用時に台所にいなければならないこともあり、大変苦労した記憶があります。当時、脱臭の機能も無い便器であったことなどから想像は難くないと思います。夫(三澤康彦)の設計だから。という言い訳はできません。このプランを容認して実現したのですから、すなわち私の認識の無さだったからでしょう。若く生活体験が乏しかったからだと思います。

我が家は新築後数年してから、トイレの位置を改善したいがために、リフォームをするのですが、その後のトイレの位置やそれにまつわるお話は次の機会に譲り、トイレの位置に関するお話を、最近完成した古い家の改修住宅を事例に進めたいと思います。

 

北秋津のいえ 改修前(クリック;拡大表示)

 

築340年以上のこの住宅は時代ごとに造り変えられていき、その変遷は定かではありません。図面左上にある北トイレは、建物本体から渡り廊下風に取り付いた1坪のトイレ。かつては汲み取り便所だったためか、開口部だらけの寒いトイレでした。

もうひとつは、右手中央部にある東トイレ。ここは後から設置されたようで、畳1帖の大きさに、洋便器と小便器があるというものでした。

 

北秋津のいえ 改修後(クリック;拡大表示)

 

改修後のそれぞれの部屋の位置は、改修前とほとんど変わらず、トイレの位置もほぼ変わりません。

メインで使用する図面右手中ほどの東トイレは、今回の改修で、広さを確保し、お客様も使用できるメイントイレのしつらえをしています。

 

リビングダイニングからつながっていて、薪ストーブの暖も得られる、比較的暖かい位置にあります。つなげることで、急激な温度差を無くそうとのことですが、この場合、音のことに注意が必要です。匂いは最近の便器の脱臭機能によって苦労が無くなりましたが、音だけは個人住宅で乙姫さんをつけるのもおかしなことです。ここではTV収納の後ろに廻りこむ形で、奥まった気兼ねの無い位置にトイレができました。この住宅は広さもあることから、手洗い室を設けてその奥に洋便器と小便器のある1坪のトイレ。という益々気兼ねの無いトイレです。

 

一方、図面左上の北トイレは、トイレ部分だけ耐震補強エリアから外し、さらに内外装の趣きを残したいという思いから、断熱強化も本体部分より劣るトイレになってしまいました。85歳のお父さんの専用のトイレになっているのに。です。

 

 

真冬は渡り廊下も寒く、トイレが寒い部屋で心配ですが、寒さの要因の一つでもある窓の多いこのトイレをお父さんは大好きで「明るいのがいい。」と言っています。

 

 

写真では便器の上に既存の窓があり、寒さ対策のために障子を入れていますが、ちょうど便器正面にも同じ大きさの窓があります。以前は、さらに床からの地窓もありました。汲み取り便所の名残です。この位置こそ匂いも音も気兼ねなく、ゆっくり使用できるベストポジションなのです。今回寝室に併設した理想的なトイレになりましたが、ただ温熱環境は今後の改善が必要です。

お父さんは「冬以外は最高のトイレだ。気にいっています。」と満面の笑顔でしたが。