投稿日:2016年06月08日

調査事例紹介2016-59 熊本被災住宅調査速報


報告:滝口泰弘(住宅医協会理事)

 

ボランティア調査員を募集させて頂きました熊本の被災住宅調査ですが、関東、関西、九州から12名の住宅医関係者にお集まり頂き、無事調査を完了することができました。

調査は、5/31~6/2にかけて、住宅医スクール2016熊本開催にご協力頂いております新産住拓(株)さんの方へ調査依頼が来ている3件の住宅の視察・相談、4件の住宅の調査、2件の寺院について行いました。

一日も早い復旧や耐震補強工事ができるよう補強提案をまとめるために、主に「被災度区分判定」と「耐震調査」を行い、提案に必要な情報を得ることが今回の調査の目的です。

お集まり頂いた皆様、調整や当日の先導を引き受けて頂きました新産住拓(株)の方々、誠に有難うございました。

以下に調査の概要(速報)を、ご報告させて頂きます。

 

5月31日(火)「被災住宅の視察・相談」(西原村)

熊本空港周辺の阿蘇郡西原村地区にて、3件の被災住宅の視察、及び相談を行いました。

西原村は山麓部に位置する地域で、瓦屋根が崩れブルーシートがかけられている住宅も多いですが、路地に入ると、よう壁が崩れ、被害が大きい場所が点在していました。

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1件目は築5年の新しい住宅で、大きな被害は無いように見えますが、地盤沈下により建物全体が傾いていました。応急危険度判定は赤色の「危険」。特に外構に大きな地割れが幾つも見られました。

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2件目は、すぐ近所の、こちらも築5年の新しい住宅で、1件目同様に、地割れや地盤沈下により建物が大きく傾いていました。応急危険度判定は赤色の「危険」。隣の住宅も貯湯槽が転倒し、外構が崩れていました。

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3件目は、地割れや地盤沈下は見られず、外装の隅部の割れや部分的な屋根瓦の崩れが見られました。応急危険度判定は黄色の「要注意」。内部の吹き抜け廻りの壁(石膏ボード)は広範囲に割れが見られました。

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地割れやよう壁の崩壊など、地盤の影響の有無によって、同じ地区でも被害に大きな差がありました。

初日は以上で終了し、夜、新産住拓に集まり、翌日からの調査のミーティングを行いました。

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6月1日(水)「被災住宅の調査」(益城町、東区)

震源地である益城町地区にて、4件の被災住宅の調査を行いました。

益城町は激震地であり、街並みの建物は軒並み倒壊している状態でした。

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1件目は築30年の住宅で、応急危険度判定は黄色の「要注意」。全体的に基礎や外壁の欠け・ひび割れ、内壁の欠けやひび割れが見られました。

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2件目も築30年の住宅で、応急危険度判定は赤色の「危険」。1件目同様に、全体的に基礎や外壁の欠け・ひび割れ、内壁の欠けやひび割れが見られました。一部、2階床梁の割れも見られました。また、隣家に大きな被害が見られ、築年代や構法、地形や地盤など、複合的な要因によって、すぐ隣りでも被害の大きさが極端に異なっている状況でした。

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3件目は、調査2件目のお隣の築15年の住宅で、応急危険度判定は黄色の「要注意」。外壁や内壁には部分的に大きなひび割れが入っており、また、地盤沈下による建物の傾きが大きく、基礎にもひび割れが入っている状況でした。

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4件目は、益城町からは少し離れた地区の住宅で、応急危険度判定は黄色の「要注意」。外壁は全体的にひび割れが、内壁は部分的に欠けやひび割れが見られ、外構にもひび割れが多くみられましたが、周囲に倒壊している住宅は見られませんでした。

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6月2日(木)「寺院の調査」(西区、中央区)

調査最終日は、熊本駅近くの西区、中央区の2件の寺院の調査を行いました。

1件目は築360年の寺院で、全体的に大きく傾いており、垂れ壁に欠落やひび割れが見られました。床下には蟻害も見られ、小屋裏には1か所だけ小屋束のズレが見られました。

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2件目は築150年の寺院で、全体的な大きな傾きは見られず、部分的に垂れ壁などに欠落やひび割れが見られました。床下には蟻害も見られましたが、小屋裏は健全な状態でした。

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以上で3日間の調査は終了しました。

現在、参加者で手分けして、被災度区分判定結果、および耐震診断結果をまとめ、復旧・補強案を検討しています。

今後も、住宅医による支援活動を続けていき、一日も早い熊本の復興に少しでも寄与できればと思っております。

引き続き、ご支援、ご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

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投稿日:2016年06月08日

調査事例紹介2016-58 京都市宇治


報告:日野弘一(関西住宅医ネットワーク)

物件概要

■所在地:京都府宇治市
■調査日時:2016年5月10日(火)
■構造規模:木造二階建て
■延床面積:約330平米
■築年数:築83年(昭和8年建築)

京都府の宇治市で既存建物の詳細調査を行いました。
平等院のすぐ近くの街道沿いの酒屋さんの建物の調査です。

 

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(左)建物外観            (右)開始のミーティング
建物は一階の約半分が酒屋となっています。その他は住居として使われています。
延べ床面積が約100坪となる大きな建物です。
調査員は合計14名+地盤調査員2名による調査となりました。
住まい手さんへの挨拶と、調査のミーティングを行ってから調査を始めます。

 

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(左)床下調査の様子          (右)地盤調査の様子
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(下)床下全景
床下調査:延石の上に土台が敷かれています。地盤面は土です。土台が地面の水気を吸い上げ、
水しみができていますが、特に目立った蟻害や腐朽の様子は見受けられませんでした。
地盤調査:建物の外周に加え、建物中心部分の調査もしていただくようにしています。
床下侵入口から機械を入れて作業をしていただきました。

 

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(左)内壁のひび割れ調査の様子     (右)外壁のひび割れ
劣化調査:建物内外部の劣化状況の確認をしています。同じひび割れでも、構造的な要因が
考えらえるもの、経年劣化と思われるものなど、種類は様々です。報告書作成の際に状況の
判断ができるよう、全ての劣化事象を確認していきます。

 

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(左)お昼休みの様子         (右)整理された調査の野帳
お昼休みの様子です。
二間続きの和室をお借りして、お弁当をみんなで食べました。自己紹介をした後、午前の調査の
状況を報告し合い、情報を共有します。また、調査の野帳の整理や午後の作業の方針の調整など
もこの時間に行います。

 

 

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(上)小屋裏の全景
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(左)建築当時の棟札         (右)調査の様子
小屋裏調査:母屋の小屋裏は棟が高く、立派な小屋組みでした。30年程前に一度葺き替えられ
たということですが、現場で雨漏りもなく(この日は雨だったのでよくわかりました)
状態が良さそうです。

 

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(左)仕上材の調査          (右)内部の建具の採寸
仕上調査:建物の構造計算や断熱性能の計算を行うための情報として、壁や屋根、天井や床の
仕上や下地の構成を確認しています。また、建具の種類や大きさも調査しています。

 

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(上)集合写真
この日は雨天であったこともありましたが無事に調査を終えることができました。
今後、報告書をまとめて住まい手さんに報告をさせていただくことになります。

調査に参加していただきました皆様、ありがとうございました。

関西住宅医ネットワーク 日野

投稿日:2016年06月03日

調査事例紹介2016-57 大阪府堺市


報告:北聖志(THNK一級建築士事務所)/久保亜弓(MSD)

物件概要

■所在地:大阪府堺市
■調査日時:2016年4月29日(土)
■構造規模:木造平屋建て
■延床面積:約150平米
■築年数:約築70年

大阪府堺市で詳細調査を行いました。場所は泉北ニュータウンに隣接した集落にあります。改修設計は水本亮建築設計事務所・水本亮氏が行います。水本氏から伝統的工法の民家を改修すると聞き、ぜひ詳細調査をしましょう、ということで今回の調査が実現しました。設計者や住まい手にとっては着工するまでに正確に現状を把握して、改修内容を決定できることがメリットになると思います。現在の住まい手は新築した代から3代目となりますが、当たり前の様に過ごしてきた家に関心を持って来られなかったそうです。調査当日は一日お付き合いいただき、息子さんと小屋裏に上がったりしながら、興味を持っていただけたと思います。(北)

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調査建物は約築70年の立派な建物です。調査員が揃い、住まい手さんに御挨拶をします。
そのあと、調査内容の確認等ミーティングを行いました。
今回は①劣化、②設備、③仕上、④採寸・バリアフリー、⑤床下、⑥二階床・下屋、⑦ヒアリング・矩計の7班、合計13名+地盤調査員2名による調査となりました。

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(左)ヒアリング:住まい手さんから建物の基本情報・メンテナンスの履歴・各性能に関係する住まい心地などを確かめます。
建物を見るだけではわからない情報がわかることもある大切な調査です。
(右)バリアフリー調査:床や階段の段差、また開口部や廊下の幅など、建物のバリアフリー性能を調べます。既存部分と増築部分の間の段差が多く注意が必要です。

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劣化調査(内部):内部の劣化状況も確認をします。写真は建物の柱の傾斜を計測している様子です。

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お昼休みの様子です。
今回はお庭のスペースをお借りして、住まい手さんに用意して頂いたカレーとお弁当をみんなで食べました。自己紹介をした後、調査の進捗具合を報告し合い午後の調査に臨みます。

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床下調査:玉石基礎と延石で増築部は布基礎でした。地盤面は土です。含水率が30%を超える箇所が少しあり、湿度も70%程度でしたが、石灰がしかれているためか土はさらさらしていました。一部蟻害の跡が見受けられました。

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(左)二階床調査:今回は二階床の調査可能範囲が狭くなっていました。可能な範囲で小屋裏の床をはがしたり、一階の天井の隙間などから調査を行っています。
(右)小屋裏調査:小屋裏に上がると床に土がひかれており、歩いて小屋組の部材確認を行うことができました。棟木は一本物の丸太で立派な小屋組みでした。

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最後に依頼者のYさん、調査参加者揃っての集合写真です。

一日お天気も良く、調査員の方のご協力により無事に調査を終了しました。

住まいの診断レポートを北聖志さん(住宅医)とMSD共同で取りまとめ、これからレビューを行い、調査参加者の方から意見を出し合って報告書の精度をあげていきます。レビューでの意見を踏まえて報告書を修正し、近日中に住まい手へ調査結果を報告する予定です。

ご協力頂いた皆様ありがとうございました。レビューにも是非ご参加下さい。

MSD 久保